『社会心理学講義 』
(小坂井 敏晶/著)

 

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
本書は、社会心理学の考え方について批判的に検討し、生物や社会を支える根本原理である「同一性と変化」という考え方をもとに、同一性を維持しながら変化する社会システムは、どのように可能なのかを検討する骨太の書である。

人は自分の自由意思で行動している―多くの人はこの命題に同意するであろう。しかし、本当にそうだろうか?普通の人は裸で町を歩くことはせず、泥棒もしないし、人も殺さない。しかしながら、それは人間の行動が社会によって規定されているからではないだろうか。

本書は、人間の行動原理はもっと複雑でやっかいな問題ではないかと問いかける。行動が先に来て意思が後付けで形成されると主張したフェスティンガーや、少数派意見が社会に与える影響の強さを実証したモスコヴィッシ等、先達たちの実験と理論を追いながら社会と人間心理の相互作用について突き詰める、知的探求の一冊である。


著者:小坂井敏晶(こざかい・としあき)
1956年愛知県生まれ。1994年フランス国立社会科学高等研究院修了。現在、パリ第八大学心理学部准教授。著書に『異文化受容のパラドックス』(朝日選書)、『増補民族という虚構』(ちくま学芸文庫)、『責任という虚構』(東京大学出版会)、『異邦人のまなざし』(現代書館)、『人が人を裁くということ』(岩波新書)など。

出版:筑摩書房


・第1部 社会心理学の認識論
科学の考え方
人格論の誤謬
主体再考
心理現象の社会性

・第2部 社会システム維持のパラドクス
心理学のジレンマ
認知不協和理論の人間像
認知不協和理論の射程
自由と支配

・第3部 変化の謎
影響理論の歴史
少数派の力
変化の認識論

・第4部 社会心理学と時間
同一性と変化の矛盾
日本の西洋化
時間と社会

推薦者コメント
haruaki deguchi出口治明< ライフネット生命保険 代表取締役会長兼CEO>
日本生命保険相互会社にてロンドン現地法人社長、国際業務部長等を歴任後、ライフネット生命保険株式会社を設立。2012年に東証マザーズへ上場。2013年より、同社代表取締役会長兼CEOに就任。(>>推薦書籍一覧

すべてのビジネスは、人間と人間がつくる社会を対象としている。従って、何よりも先ず、人間とはどういう生き物で、人間がつくる社会とはどういうものか、ということをリアルに認識しなければならない。その意味で本書は最適な1冊である。すべてのビジネスリーダー、あるいはリーダーを志すすべての人に読んで貰いたい。昨年出版された本の中では、ベストのビジネス書の1冊だと考える。

要約ダイジェスト
著者は、社会心理学は「人間は自由意志に応じた行動をとる」という「常識的」な人間像に真っ向から反対すると語る。各人の行動を理解する上で、人格などの個人的要因はあまり関係ない、というのが社会心理学の基本的な立場なのだという。このダイジェストではその実例を本書からいくつかご紹介したい。

「アイヒマン実験」の衝撃

自律的なイメージとは裏腹に、人間は他者や外部の情報によって簡単に影響される。それを実証した名高い実験が、1960年代にスタンレー・ミルグラムが行った「アイヒマン実験」である。実験の名は、ナチスドイツのユダヤ人虐殺の責任者にちなむ。

実験では、被験者には学習の実験であると偽り、ミルグラムの助手の立ち会いのもと、被験者には先生役、被験者の見知らぬ人に生徒役を割り振る。生徒が問題を間違えるたび、先生は罰として電気ショックを与える。被験者は、

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