『難題解決の達人たち – 即効策はなぜ効かないのか』
(カール・オノレイ/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 難しい課題に直面したとき、業績不振の企業がリストラを敢行するように、人はえてして「即効策」に助けを求めがちである。しかし、そうした即効策はかえって失敗に終わってしまうことが多いと著者は指摘する。

 難題を本当に解決するには、根本的な原因をじっくりと考え、恒久的な解決策を取らなければならない。本書で紹介されるのは、そうした「スロー・フィックス」という課題解決手法である。ビジネス・医療・犯罪捜査・スポーツと、膨大な具体例をもとに、スピードを求めがちな現代社会に警鐘を鳴らし、難題に立ち向かうすべての人のための、叡智の書といえる一冊。

著者:カール・オノレイ(Carl Honor’e)
 1967年、スコットランド生まれ。ジャーナリスト。ロンドン在住。「エコノミスト」「オブザーバー」「ガーディアン」「タイム」「ナショナル・ポスト」等に寄稿。邦訳書に「スローライフ入門」(ソニーマガジンズ)がある。

翻訳:松本 剛史(マツモト ツヨシ)
 1959年生まれ。翻訳家。訳書に「暗闇の蝶」(マーティン・ブース、新潮文庫)「アメリカを占拠せよ!」(ノーム・チョムスキー、ちくま新書)、「人生に必要な心理50」(エイドリアン・ファーナム、近代科学社)など多数。

なぜ即効策を求めるのか?
告白する―ミスの魔法と「おのれの過失」
じっくり考える―明日できることを今日しない
全体論的に考える―点と点を繋ぎ合わせる
長い目で考える―明日のことに今日取り組む
小さく考える―悪魔は細部に…
準備をする―何があってもあわてない
コラボレーションする―ひとつの頭より二つの頭
クラウドソーシングする―大衆の知恵
触媒となる―同輩のなかのリーダー
委譲する―自己責任でやる(ただし良い意味で)
感じる―感情の起伏を調節する
プレイする―問題解決は一度に一ゲームずつ
進化する―まだ先があるの?

Check Point

  • 複雑で切迫した問題に対して、「即効策」では解決にならず、事態を悪化させることすらある。根本的な解決には、時間と忍耐を要する「スロー・フィックス」が必要である。
  • 自分が間違った時にそれを認め、そこから学ぶということが、スロー・フィックスの第一の要素となる。第二の要素は、問題をスローモーションで見て全体像を把握し、理解し直すことだ。
  • 迅速なトラブル対処もスロー・フィックスの一要素である。全体のシナリオを把握し、ベストな行動指針を短時間で導き出すことを「シン・スライシング(Thin slicing)」(蓄積された経験を薄くスライスし、必要な情報を全て引き出す)と呼ぶ。

要約ダイジェスト

なぜ即効策を求めてしまうのか?

 健康面での悩み解消やダイエット、人間関係、ビジネス、政治…現代社会には即効策があふれている。スピード重視の社会において、すぐに効果が出ると約束する方が商売になるからである。しかし著者は、即効策はなんの解決にもならないし、よけいに事態を悪化させることすらあると指摘する。

 例えば、企業が不安定な状態に陥ると、反射的にリストラという手段に頼るが、リストラが及ぼす財政的効果は、全体ではネガティブなものになるという研究結果が出ている。

 また、トヨタの組立ラインでは、問題が起これば作業員が「アンドン」のひもを引いて知らせる。そして「なぜ、どうして?」と問い続けることで、

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