- 本書の概要
- 著者プロフィール
本書では、日本有数の付加価値創造企業として知られるキーエンスを題材とし、その付加価値創造のメカニズムを解き明かす。新商品の 70%が世界初・業界初となっているキーエンスの、徹底したマーケットイン型ニーズ探索の方法、コストベースではなく付加価値ベースの価格決定による利益率向上のコツなどが詳しく述べられている。
著者はキーエンスでコンサルティングエンジニアとして年 30社に及ぶシステム制作サポートを手掛けた経験をもとに、現在は年商 10億円~ 2000億円規模の経営戦略コンサルティングなどを行う株式会社カクシンの代表取締役 CEO。生産性を高めたいと考えるビジネスパーソン、高収益企業を目指す経営者などにはぜひご一読いただきたい。
株式会社カクシン 代表取締役社長CEO。京都府京都市生まれ。大阪大学基礎工学部情報科学科にて、情報工学、プログラミング言語、統計学を学ぶ。2008年卒業後、株式会社キーエンスにてコンサルティングエンジニアとして、技術支援、重要顧客を担当。大手システム会社の業務システム構築支援をはじめ、年30社に及ぶシステム制作サポートを手掛けた経験が、「最小の人の命の時間と資本で、最大の付加価値を生み出す」という経営哲学、世界初のイノベーションを生む商品企画、ニーズの裏のニーズ(R)までを突き詰めるコンサルティングセールス、構造に特化した高収益化コンサルティングの基礎となっている。その後、企業向け研修会社の立ち上げに参画し、独立。年商10億円~2,000億円規模の経営戦略コンサルティングなどを行い、月1億、年10億円超の利益改善といった企業を次々と輩出。社会変化に適応した企業の中長期発展を仕組みを提供している。また、自身の人生経験を通じて、人が幸せに働き、生きる社会を追求し続けており、エネルギッシュでありながら親しみのある明るい人柄で、大手企業経営者からも慕われている。私生活では3人の子を持つ父親でもある。著書に『構造が成果を創る』(中央経済社)がある。
第2章 それは付加価値か、ムダか?
第3章 付加価値創造企業「キーエンス」
第4章 法人顧客を攻略するための6つの価値
第5章 ニーズの見つけ方と付加価値の伝え方
第6章 つくった付加価値をいかに広げていくか
要約ダイジェスト
それは付加価値か、ムダか?
付加価値をつくる人になるためには、まず「価値とは何か?」をきちんと理解している必要がある。本書においては、「価値とはお客様(相手)が感じる(決める)ものである」と定義する。
売り手側が勝手に考える価値と、お客様側が実現してほしいと思っている価値には、大きな隔たりがあり、その隔たりが、付加価値創出において重大な問題になってくる。隔たりがある状態、つまりそもそも価値が何たるかを理解できていないと、付加価値をつくり出せないからだ。
「付加価値」の源泉は「ニーズ」だ。例えば、高級レストランや料亭などで、料理の素材や調理法について、スタッフが丁寧に説明してくれることがある。こうした説明は、ゆったりとした雰囲気のお祝いの席であれば、品格も感じられて、なかなかいいなと思うだろう。
しかし、何か込み入った話をしている最中、例えば真剣に商談しているとき、親しい友達同士が面白い話で盛り上がっているときだったら「せっかくだけど、はっきり言ってちょっとうっとうしい」と感じるのではないだろうか。
どちらも「料理の詳しい説明」という同じ行為にもかかわらず、前者では「嬉しい」と思われ、後者では「邪魔だ」と思われる。前者では料理の説明がお客様のニーズに適っている行為なのに対し、後者はお客様のニーズに適っていないため付加価値のない、ムダなサービスになってしまっているのだ。
どんな場合でも、相手のニーズがある部分に対してきちんとサービスを提供したときに、初めてそこに付加価値が生まれる。何がお客様にとって付加価値があり、何が付加価値でないのか。その差をはっきり見分けなければならないのだ。
多くの人が、付加価値の提供=相手の期待を上回る、何かプラスアルファ的なものを提供することと考えているが、これは不正解だ。お客様のニーズを超えた上の部分は付加価値ではなく「ムダ」である。このラインより上の部分はすべてお客様が使わない、