- 本書の概要
- 著者プロフィール
そこで本書では、世界中の行動科学や社会心理学の研究成果から、なるべく新しく、実生活に応用可能な「伝え方の法則」を 50にわたり紹介。それぞれ「面倒なお願いをしなければならにとき」「ガンコな相手を説得したいとき」「お金の交渉を有利にしたいとき」など、シチュエーション別にわかりやすく解説されている。
著者はコピーライター、湘南ストーリーブランディング研究所 代表。広告代理店を経て、現在は多数の企業や団体のマーケティング・アドバイザーとして活躍する人物。コミュニケーション力アップを目指す方はもちろん、マーケティングやブランディング、コピーライティングに興味関心がある方もぜひご一読いただきたい。
湘南ストーリーブランディング研究所 代表/コピーライター。大学時代、霊長類学や社会心理学の研究に没頭。世界中の論文との出会いを求めて図書館に通いつめ、狭いアパートの部屋を学術論文のコピーでいっぱいにして暮らす。
「人の心を動かす」仕事に興味を持って、広告代理店に入社。大阪支社で暗黒の営業局時代を経て、29歳で転局しCMプランナーに。しかしそこでも芽が出ず、会社を辞め何のあてもなく上京。フリーランスという名のフリーターをしながら通った広告学校の講師から、コピーライターとしての才能を見いだされ、TCC新人賞を受賞。その後、フジサンケイグループ広告大賞制作者賞、広告電通賞、ACC賞などを多数受賞する。
現在は、ブランドの魅力を物語にして伝える「ストーリーブランディング」という手法を確立し、企業や団体のマーケティング・アドバイザーとして活動。ジャンルの垣根を超えて、様々なものの魅力を伝え続けている。『物を売るバカ』『1行バカ売れ』 (角川新書)、『ザ・殺し文句』(新潮新書)など著書多数。海外へも広く翻訳されている。
第2章 説明する
第3章 説得したい
第4章 わかってほしい
第5章 選んでほしい
第6章 提案したい、交渉したい
第7章 協力してほしい
要約ダイジェスト
面倒なお願いをしなければいけないとき
サム・ヒューストン州立大学のランディ・ガーナーは、誰かに何かを依頼するとき、付箋(ポストイット)に手書きで感謝のメッセージを書くだけで大きな効果があることを実験で証明した。
この実験では、学内の教授たちに対し、退屈で煩雑なアンケートを次の3つのパターンでお願いした。グループ①:印刷された依頼文とアンケート用紙のみで依頼、グループ②:印刷の依頼文の右上に、「少しお時間をいただきますが、アンケートにご協力ください。感謝します!」と手書きで書いて依頼、グループ③:印刷の依頼文+アンケート用紙にボストイットを貼り、②と同じ文章を手書きで書いて依頼。
結果、回収率は、①36%、②48%、③76%となった。ポストイットに手書きでお願いや感謝のメッセージを書くだけで、倍以上の回収率になったのだ。依頼文に手書きで同じ文章を書いても、約 10%しか回収率が増えなかったことと比べると、驚くべき効果である。なお③は、回収率が高いだけでなく、より早く、詳しく丁寧な回答がなされたという。
これは、付箋が目立ったこと、そしてそこに個人的なメッセージが書かれていたことにより、「自分への特別な依頼である」という印象を受けたからだ。送り主の手間や心遣いを感じることで心が動いたのである。
締め切りが迫って催促したいとき
2008年、イギリスでは税金の未納者が多く困っていた。国税庁は督促状を送っていたが効果は限定的で、回収できた未納金は 57%にすぎなかった。そこで国税庁は社会心理学者たちと相談し、督促状にある一言を添えた。
すると、回収率が 86%に上がった。その文言とは、「大多数のイギリス国民は税金を支払っています」だった。人間は、大多数の人がやることを「規範」と考える傾向にあり、この規範に従わないと、居心地の悪さを感じるのだ。
こうした「多くの人間がとる傾向」を利用した誘導を「社会比較ナッジ(強く主張せずよりよい選択に気づかせ誘導する手法)」と呼ぶ。その後、督促状の文面をさらに細かく変える調査が続けられ、ほとんどの国民が税金を払っていることに加え、「あなたは非常に少数派である」という強調文を加えると、より効果が高くなることが証明された。
文章で相手の心をつかみたいとき
文章で相手の感情を揺さぶりたいなら、「ストーリー」で伝えることほど効果的なやり方はない。人間はストーリーが大好きな生き物で、プリンストン大学の神経学者ウリ・ハッソンらの調査によれば、「音」「単語」「文章」「ストーリー」などのなかで、ストーリーが語られたときが一番、脳の全分野での活動が活発になることがわかっている。
なかでも、人の感情を大きく揺さぶるストーリーには、法則がある。この法則を私は「ストーリーの黄金律」と名づけた。それは、①何かが欠落した、もしくは欠落させられた主人公が、②なんとしてもやりとげようと遠く険しい目標・ゴールを目指して、③数多くの障害・葛藤・敵対するものに立ち向かっていく、というものだ。
この法則は、多くの小説、映画、ドラマ、