『考えよ、問いかけよ―「出る杭人材」が日本を変える』
(黒川 清/著)

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 現在、日本が政治や経済、IT技術、産業、教育などの各分野で海外に差をつけられていることが明らかになりつつある。過去の大きな成功体験が障壁となり、欧米だけでなく、中国や台湾、韓国といったアジアの国々にも抜き去られているのが現状なのだ。そんな中で、今日本人や日本企業に求められる行動とは何なのか。

 本書は日本の教育や科学技術が世界から取り残されている現状と、その課題として、国家や企業の体制や枠組みの問題点を指摘。著者が関わってきた原発事故やコロナ禍への日本政府や日本企業の対応を引き合いに出し、現状に強く警鐘を鳴らしている。その上で、日本人の思考を変え、ヘルスケア領域など日本経済復活のための突破口を示す。

 著者は東京大学医学部卒業後渡米し、UCLAや東京大学などで教鞭をとり、内閣特別顧問や福島原発の事故調査委員会委員長、新型コロナウイルス対策の効果を検証する政府の「AIアドバイザリーボード」委員長などを歴任した人物。変革を担う若者世代はもちろん、次世代が活躍する場をつくるミドル・シニア層にもぜひご一読いただきたい。

著者:黒川清(Kurokawa Kiyoshi)
 1936年、東京都に生まれる。1962年、東京大学医学部卒業後、同大学院医学研究科修了(医学博士)。東京大学医学部附属病院などでの勤務を経て1969年、渡米。ペンシルベニア大学医学部生化学助手などを経て、1979年、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)医学部内科教授に就く。1983年に帰国し、東京大学医学部第一内科教授(1989年)、東海大学教授・医学部長(1996年)、総合医学研究所長(2002年)などを歴任。その間、多くの国内、国際科学者連合体の役員・委員を務め、国際腎臓学会理事長(1997年)、国際内科学会会長(2002年)に就任。その後も、日本学術会議会長(2003-2006年)、内閣特別顧問(2006-2008年)、WHOコミッショナー(2005-2008年)、沖縄科学技術大学院大学(OIST)学園理事(2011-2020年)、東京電力福島原子力発電所事故調査委員会委員長(2011年12月-2012年7月)、G8 World Dementia Council(世界認知症審議会)のメンバー(2014年-)、副議長(2021年-)、2020年7月には新型コロナウイルス対策の効果を検証する政府の「AIアドバイザリーボード」の委員長に就任するなど、いくつもの要職を務める。読売新聞連載「時代の証言者 [物言う科学者]」(2022年5-7月、全32回)が好評を博す。主な著書に『世界級キャリアのつくり方 20代、30代からの〈国際派〉プロフェッショナルのすすめ』(石倉洋子氏との共著、東洋経済新報社、2006年)、『大学病院革命』(日経BP社、2007年)、『イノベーション思考法』(PHP新書、2008年)、『規制の虜 グループシンクが日本を滅ぼす』(講談社、2016年)などがある。
第1章 時代に取り残された日本の教育現
第2章 停滞から凋落へ向かう日本の科学技術
第3章 「失われた 30年」を取り戻せるか
第4章 日本再生への道標を打ち立てる

要約ダイジェスト

時代に取り残された日本の教育現場

「THE世界大学ランキング 2022」によれば、世界 99の国と地域にある 1600校以上の大学のうち、ランキングの上位はオックスフォード大学を筆頭に 13位までをイギリスとアメリカの大学が独占した。

 アジアのトップは北京大学と清華大学が同位の 16位となっているが、日本の大学はトップ 200以内に 35位の東京大学と 61位の京都大学のみだ。日本の大学がこのような体たらくである原因としてまず考えられるのは、日本では「真の高等教育」が行われていないということだ。

 真の高等教育とは、単純な知識ではなく、本物の思考力を養うものである。欧米の名門大学の入試では、日本のような学力一発勝負の試験は行われない。各大学が定めた入学要件に従い、高校までの成績だけでなく、ハイスクールからの推薦状、課外活動や本人の興味について綴ったエッセイなどを通じて、個人の人間性を総合的に評価する。

 また、欧米の大学は日本の大学のような入学時の理系と文系の区分はなく、学部の学生は広く「リベラル・アーツ」を学ぶ。複数の領域や文化をヨコに行き来して、答えのない問題を解決したり、適切な問題を設定したりする能力を養成することを指す。

 さらにアメリカのトップ大学の多くでは、入学後猛烈に勉強しなくてはいけない。一方、全国大学生活協同組合連合会が 2018年に行った調査によれば、日本の大学生の読書時間の平均は1日 30分。48%が読書時間は「0分」と答えている。

 ちなみにこの調査の読書時間にはマンガや趣味の本なども含まれている。日々、大量の古典を読まされたうえで、その知識を用いて思考するという訓練を行っているアメリカのトップ大学の学生と比べるとひどい話だ。

 イシュー(課題)に対して、グローバル化した世界でのコンテクスト(文脈や背景)を感じ取る。自国の近代史の流れを思い浮かべる。自分の意見をどのような「枠組み」で考えるかすぐさま検討し、考えをまとめ、

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