『今さらだけど、ちゃんと知っておきたい「意思決定」』
(佐藤耕紀/著)

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 人生は、思考を巡らせて「こうしよう」と決める意思決定の連続である。そして、意思決定においては、ただ決めればよいのではなく「賢い判断」「正しい選択」が求められる。とはいえ、意思決定には大変な労力を使うため、つい感覚的に判断してしまったり、先入観に引っ張られてしまったりすることも多い。

 そこで本書では、「意思決定」についての知識とスキルを、豊富な具体例を用いて解説。行動経済学や進化心理学などの理論を、「悲しみは喜びの2倍」「リーダーは背が高い」などわかりやすいトピックスを使いながら説明する。一読すれば、人間の意思決定の傾向を知るとともに、実生活の中で使えるノウハウが身に着くはずだ。

 著者は防衛大学校公共政策学科准教授。約25年にわたり教鞭をとる中で、経営学にあまり興味がない学生でも経営学をわかりやすく伝える授業にこだわってきた人物。ビジネスや日常の機会損失を減らし、賢い選択を重ねたい方、行動経済学や心理学の知識を実践に活かすためのヒントを得たい方などはぜひご一読いただきたい。

著者:佐藤耕紀(Sato Koki)
 防衛大学校公共政策学科准教授。1968年生まれ、北海道旭川市出身。旭川東高校を卒業後、学部、大学院ともに北海道大学(経営学博士)。防衛大学校で、約25年にわたり教鞭をとる。経営学に興味がない学生を相手に、なんとか話を聞いてもらう努力を重ね、とにかくわかりやすく伝える授業にこだわっている。就職、結婚、子育て、といった人生のイベントをひととおり終え、生活者としての経験をふまえて、仕事にも人生にも役立つ経営学を探求している。趣味はクラシック音楽と海外旅行。著書に『今さらだけど、ちゃんと知っておきたい「経営学」』『今さらだけど、ちゃんと知っておきたい「マーケティング」』(同文舘出版)のほか、経営・マーケティングの共著が6冊ある。
第1章 ようこそ「意思決定」の世界へ ――「知覚」のしくみを体感する
第2章 「神」と動物のはざまで ――「行動経済学」と「進化心理学」
第3章 動物の本能に根ざす「思考の錯覚」 ――「認知バイアス」
第4章 正確さより、スピードを優先する ――「ヒューリスティック」
第5章 比較に惑わされる ――「対比効果」
第6章 「想起」「連想」「記憶」にかかわる錯覚
第7章 「計算」「確率」「統計」にかかわる錯覚
第8章 費用対効果で考える ――「意思決定の実際」
第9章 波及効果を考えよう ――「システム思考」
第10章 これからの時代の「意思決定のヒント」

要約ダイジェスト

「意思決定」って、なに?

 ヒトの脳は、重さでいうと体重の約2%だが、代謝エネルギーの約20%を消費する。私たちの祖先が暮らした厳しい環境では、カロリーを無駄に使えば、餓死する恐れがある。だからヒトは、脳を効率よく使うように進化した。

 重要でないところにはエネルギーを使わず、ここぞというところで頑張るのだ。これを「認知の経済性」や「認知の節約」という。自然界であり得ないような変化や、気づく必要のない変化を見落とすのは、おそらく理にかなっているのだろう。

「意思決定」は要するに「決める」ということ。「どうしよう」と考えて、「こうしよう」と決める。これが意思決定だ。私たちの人生は、運や偶然もあるが、過去にどんな「決定」をしたかで決まっている。これからの人生は、今後どんな「決定」をするかで決まるのだ。

 私たちの「知覚」は外界の状況そのものではない。感覚器からのシグナルを脳が解釈し、補正したものだ。知覚は多かれ少なかれ、主観的、個性的なものとなる。目が悪くなったり耳が遠くなったり、加齢や病気で感覚器や脳に変化が起こると、知覚も変わる。

 私たちの脳内にあるのは「客観的な現実」ではなく、「主観的なイメージ」だ。「意思決定」は、「イメージ」にもとづいてなされ、イメージが「現実」とずれると誤った決定をまねく。同様に、人々のイメージを変えれば、判断や行動を変えることもできるのだ。

悲しみは喜びの2倍?

「行動経済学」の理論的なポイントのひとつに、「損失回避」という心理がある。損失の苦痛は利益を得たときの喜びの2倍強く感じられるということだ。例えば20万円をもらった喜びの大きさと、10万円をとられた苦痛の大きさは、主観的には同じくらいに感じられる。人間は「得る」ことよりも「失う」ことに敏感なのだ。

 野生動物の世界では保存技術もなく、お金に換えて貯めることもできないから、自分や家族で食べられる以上の餌をとっても意味がない。よくばって探しすぎると、捕食者に見つかるかもしれない。動物が「利得の追求」よりも「損失の回避」を優先するように進化したのは、厳しい自然を生きのびるうえで、そのほうが有利だったからだろう。

 確率的な損得を判断する基準に「期待値」があるが、これは「その賭けを無限に繰り返すと、平均ではいくらもらえるか」という、確率的な平均値を意味する。動物の世界では、得られる資源(食物など)の期待値が十分に生きられる量なら、

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