- 本書の概要
- 著者プロフィール
そこで本書では「ブランドカルチャライズ」の実践に必要なノウハウを、海外進出の企画段階から現地での実行までの一連の流れとして体系的に解説。中国市場での具体例を中心に、日本と海外との違いを学ぶことに加え、国内向けマーケティングでは当たり前であるため見落とされがちな消費者理解の重要性を、改めて提示してくれる一冊でもある。
著者は、互いに海外のブランディング・マーケティング、リサーチによる消費者理解等を経験した後、上海を拠点とするブランドコンサルティングファームで活動する人物。自社商品の海外展開を目指すマーケターはもちろん、国内マーケティングに携わる方にもぜひご一読いただきたい。
balconia Shanghai ltd. 総経理。IMJ(現アクセンチュア)の事業部長として、日本のデジタルマーケティングに従事。その後、米系ブランディングファームのアカウンティングディレクターとして、米国のブランディング・マーケティングを経験。2015年より上海在住。balconiaには2017年の創業メンバーとして参画し、東京法人の戦略チーム、クリエイティブチームの管掌、および香港・上海法人の代表を務める。
川崎 訓(Kawasaki Satoshi)
balconia Shanghai ltd. 副総経理。インテージ・ホールディングスの中国事業統括を経て現職。2012年より上海在住。一貫してグローバルリサーチに従事。日系企業を中心に、消費者理解を軸とした海外マーケティングのサポートを続けている。balconiaでは、消費者インサイトを起点にマーケティング戦略立案やクリエイティブへの提案を担う。
第2章 現地のバックグラウンドを理解する
第3章 市場とターゲットを理解する
第4章 ブランドの表現を調整する
第5章 コミュニケーション戦略のカルチャライズ
要約ダイジェスト
ブランドカルチャライズとは
コンテンツを海外に進出させる際、現地の言葉に翻訳をすることを「ローカライズ」と言うが、実際には翻訳で足りるケースはそう多くない。人種や宗教的な観点でその国ではタブー視されるような表現がある、文化差からキャラクターの心境やバックグラウンドがイメージしにくく面白さを感じられない、といったことが起こるのだ。
そこで、色彩、人種、宗教的な観点で NGはないか、登場人物は現地ではどのように受け止められるのかなど、文化的に現地で許容してもらえるように調整をしていく必要がある。この作業を「カルチャライズ」と呼ぶ。
ピクサー映画『インサイド・ヘッド』の主人公ライリーの嫌いな食べものはブロッコリーだが、日本ではブロッコリーだと共感を得られにくいことから、日本バージョンに限り、ブロッコリーが出てくるすべてのシーンをピーマンに変更している。
コンテンツに限らず、海外に進出するブランドにも同じような作業が必要だ。それが「ブランドカルチャライズ」である。進出先の国・地域の消費者の『知覚』に合わせてブランドの表現を調整することだ。知覚とは、「Perceive」という英単語に由来し、「視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚を使って、人やものに気がつくこと」という意味である。
五感を通していても、その人がきちんと気づけていなければ「知覚」したことにはならない。先ほど例として挙げたブロッコリーも、五感を通して認識はできるが、子どもが嫌いな食べものという意味は日本人には知覚されていない。ピーマンに差し替えてはじめて子どもが嫌いな食べものと知覚される。
つまりブランドカルチャライズの定義は、現地の消費者に伝えたいことを、はっきり認識してもらえるよう表現を調整していくこと、と読み替えることができる。
現地のバックグラウンドを理解する
海外で戦っていく前提となるのは、現地消費者の知覚を理解することだ。海外の消費者を理解するには「伝統・文化・宗教」「ライフコース」「世代論」の3つを押さえる必要がある。
「伝統・文化・宗教」は、その土地に長く根づくものだ。日本では普段宗教をあまり意識することはないが、海外では、