- 本書の概要
- 著者プロフィール
そこで本書では、ストレス疾患やうつ・モチベーション低下、認知症、高血圧、高血糖など多くの疾患に効果があるだけでなく、集中力や想像力、記憶力なども向上させることができる「運動」の効能を、科学的なエビデンスを元に解説。20分程度のランニングを週に数回など、読後手軽に実践できる具体的な方法も公開されている。
著者はカロリンスカ医科大学で医学を、ストックホルム商科大学で企業経営を修めた精神科医。現在は上級医師として病院に勤務しながら、執筆や講演活動、メディア出演も行っており、著書に『スマホ脳』などがある。運動不足や不調の自覚がある方はもちろん、心身ともにより高いパフォーマンスを目指している方もぜひご一読いただきたい。
精神科医。スウェーデンのストックホルム出身。カロリンスカ研究所(カロリンスカ医科大学)にて医学を、ストックホルム商科大学にて企業経営を修めた。現在は上級医師として病院に勤務するかたわら、多数の記事の執筆を行っている。これまでに、『ダーゲンス・インドゥストリ』(スウェーデンの経済新聞)、『SvD』(スウェーデンを代表する朝刊紙の1つ)、『レーカレ・ティードニング』(スウェーデンの医療関係者向けの雑誌)、『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル』などに医学研究や医薬品に関する記事を2000件以上寄稿。ラジオやテレビでも情報を発信し、とくにテレビ番組『科学の世界』への出演で有名。自身のテレビ番組もスウェーデン国内で持っている。講演活動も精力的に行っている。
精神科医として活動するかたわら、テニス、サッカー、ランニングに励み、週に5日、少なくとも1回45分取り組むようにしている。主な著書に『スマホ脳』(新潮社)などがある。
訳者:御舩 由美子(Mifune Yumiko)
神奈川県生まれ。訳書に『島を救ったキッチン シェフの災害支援日記inハリケーン被災地・プエルトリコ』(双葉社)、『なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか:逃れられないバイアスとの「共存」のために』(原書房)、『ソマリランドからアメリカを超える 辺境の学校で爆発する才能』(共訳、KADOKAWA)などがある。
第2章 脳から「ストレス」を取り払う
第3章 「集中力」を取り戻せ
第4章 うつ・モチベーションの科学
第5章 「記憶力」を極限まで高める
第6章 頭のなかから「アイデア」を取り出す
第7章 「学力」を伸ばす
第8章 健康脳
第9章 最も動く祖先が生き残った
第10章 運動脳マニュアル
要約ダイジェスト
脳から「ストレス」を取り払う
ストレスによる疾患の治療と予防には、運動が目覚ましい効果をもたらすことが、研究によって立証されている。こんな場面を想像してみよう。あなたは大勢の同僚の前に立ち、プレゼンテーションを始めようとしている。動悸が速くなり、口のなかは渇いている。
このとき、あなたの体内では血中のコルチゾールの濃度が増加している。コルチゾールの血中濃度が上がると、脳も身体も厳戒態勢に入る。自分の命を守ろうと筋肉がたくさんの血液を必要とするため、心拍数が増加する。そして発表が終わると、やがてあなたのストレス反応は収束していく。
重要なのは、ストレスを生む状況が去るとすぐにコルチゾールの分泌量が減る点だ。海馬の細胞は過度のコルチゾールにさらされると死んでしまうからだ。そのため、慢性的にコルチゾールが分泌されると、海馬は萎縮してしまう。実際に重いストレスや不安を抱えている人の脳を調べると、海馬が平均よりわずかに小さいことがわかる。
ここで、いよいよ運動の出番だ。あなたがランニング、あるいはサイクリングなどの運動をすると、それを続けている間はコルチゾールの分泌量が増える。なぜなら肉体に負荷がかかる活動は一種のストレスだからだ。
しかし運動が終わればコルチゾールの分泌量はランニングを始める前のレベルにまで下がっていく。ランニングを習慣づけると、走っているときのコルチゾールの分泌量は次第に増えにくくなり、走り終えたときに下がる量は逆に増えていく。
そして定期的に運動を続けていると、運動以外のことが原因のストレスを抱えているときでも、コルチゾールの分泌量はわずかしか上がらなくなっていく。つまり運動が、ストレスに対して過剰に反応しないように身体をしつけるのである。
では具体的には何をすれば最も効果があるのか。科学的な研究にもとづいた目安としては、ランニングやスイミングなどの有酸素運動がお勧めだ。ストレスの緩和が目的なら、筋力トレーニングよりも効果がある。少なくとも20分は続けてみよう。それを習慣にして長く続ければ、