『名門再生 太平洋クラブ物語』
(野地秩嘉/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 コロナ下でも密にならないスポーツとして注目を集めるゴルフだが、日本のゴルフ場は2002年をピークに減り続けている。その中で、1971年設立の「太平洋クラブ」は 2012年に1276億円の負債を抱えて破綻。その後、パチンコ業界大手のマルハンが経営に参画し、2014年から2021年現在まで増収を続けるという「復活」を遂げた。

 本書は、名門クラブ「太平洋クラブ」を破綻から再生へと導いた経営者、韓俊(ハン・シュン)氏の挑戦の軌跡を、スタッフや韓俊氏本人への綿密な取材から紐解いたノンフィクション。韓俊氏は畑違いの業界ではあったが、次々と手を打ち成功させた。イズムの浸透、施設や設備の改修、高級路線への転換など、経営面で学べる点は多い。

 著者は人物ルポルタージュをはじめ、ビジネス、食や美術、海外文化などの分野で活躍するノンフィクション作家。技術解説以外のゴルフ企画は本になりにくいというが、綿密な取材でそれを可能にした1冊。ゴルフに興味関心がある方だけでなく、経営や事業再生に関わる方などもぜひご一読いただきたい。

著者:野地秩嘉(Noji Tsuneyoshi)
 1957年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業後、出版社勤務を経てノンフィクション作家に。人物ルポルタージュをはじめ、ビジネス、食や美術、海外文化などの分野で活躍中。『TOKYO オリンピック物語』でミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。『キャンティ物語』『サービスの達人たち』『なぜ、人は「餃子の王将」の行列に並ぶのか?』『高倉健インタヴューズ』『トヨタ物語』『スバル ヒコーキ野郎が作ったクルマ』『日本人とインド人』『京味物語』『警察庁長官 知られざる警察トップの仕事と素顔』『新TOKYOオリンピック・パラリンピック物語』ほか著書多数。
プロローグ 2021年 三井住友VISA太平洋マスターズ最終日
第1章 太平洋クラブとその歴史
第2章 韓俊の挑戦
第3章 イズムとクリンリネスから始まったこと
第4章 改革は続く
第5章 改革の仕上げと町なかのコース銀座
第6章 達人たちの改革体験
第7章 改修の話 御殿場、八千代と金乃台
第8章 ゴルフ場の経済学
エピローグ 富士山とゴルフと林のなかの男

要約ダイジェスト

太平洋クラブの民事再生

 1971年、「日本全国に25のゴルフ場をつくる」「環太平洋100コース構想」という壮大な目標を掲げて、共通会員制を謳う太平洋クラブが設立された。しかし、目標は果たされることなく、2012年に破綻。民事再生となった時の負債総額は1276億円だった。

 そのもっとも大きな理由は利用者の減少だが、東日本大震災による消費マインドの冷え込みだけではなく、当時の経営者がコースやクラブハウスのメンテナンス経費を抑制したため、コースが荒れ、クラブハウスも汚れが目立っていた。来場者の減少は施設の老朽化、サービスの低下にあったのだ。

 そうして利用者が減ると収入は少なくなり、経営者はまた経費抑制に走る。民事再生に至る前の経営は貧すれば鈍するといった状態だったのである。看板ともいえる御殿場コースだけは整備されていたが、他のコースのメンテナンスは行き届いていない状態だった。

 太平洋クラブは民事再生から会社更生法の適用へと進み、当時の経営陣は全員、退陣。翌2013年5月、太平洋クラブは遊技業界大手、マルハンとスポンサー契約を締結した。マルハンが買収にかけた金額は約270億円である。

 買収を終えた後、マルハン創業者でオーナーの韓昌祐は太平洋クラブの社長に指名した俊を呼んだ。「グリーンを整備して、従業員教育をやってほしい。コース管理のグリーンキーパーの給料を上げて、支配人と同じくらいにすればいい。その代わり、グリーンキーパーにはコースメンテナンスの責任を持たせること。それから従業員教育のなかでも力を入れるのはキャディ教育だ。マルハン流に教育して、そして、給料を上げてほしい」

 2014年4月1日、マルハングループの太平洋クラブグループが、新しいスタートを切った。俊は父親の指名で、

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