- 本書の概要
- 著者プロフィール
だが1985年、科学的論文でその存在が否定されたことで、大論争が巻き起こった。本書ではこの「ホットハンド」研究の歴史をたどりつつ、その真実を解き明かしてゆく。脳科学や心理学、統計学、データによって近年明らかになった事実などを駆使し、ホットハンドの実在に迫っていく内容は知的興奮を大いに刺激してくれるはずだ。
著者は、自身もバスケットボール選手としてホットハンドを経験し、現在は『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙の記者として、スポーツに関する記事を多数執筆するスポーツジャーナリスト。「ツキ」の正体を知りたい方、脳や統計のバイアスについて理解を深めたい方はぜひご一読いただきたい。
スポーツジャーナリスト。『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙の記者として、バスケットボールやオリンピックをはじめとするスポーツに関する記事を多数執筆。ニューヨーク在住。
訳者:丸山将也(Maruyama Masaya)
翻訳家。国際基督教大学教養学部卒業。
第2章 ホットハンドを生む環境とは
第3章 ホットハンドを研究する
第4章 ホットハンドを信じない人々
第5章 ギャンブラーの誤謬とホットハンド
第6章 データによって明らかになった事実
第7章 意外な真実
要約ダイジェスト
ホットハンドとは何か
ホットハンドとは、普段の能力をはるかに上回り、いっとき超人になったと感じる状態のことだ。これほどの快感はない。ホットハンドはあらゆる分野に存在し、どんな人にf も関係する現象だ。
バスケットボールにおけるホットハンドとは、連続でシュートを2、3本決め、ゴールリングがヘリポートのマーク並みに大きく見えて、「何本も連続で決めてきたのだから、次も入るはずだ」と確信している状態のことだ。ホットハンドの定義は1つに限らないが、絶好調の選手の活躍を見ただけで、このことかとすぐに気付くはずだ。
バスケットボールのホットハンドに関心を寄せた者の中には、天才的な学者やノーベル賞受賞者が何人もいたが、彼らは決してバスケットボールだけを研究しているわけではなかった。私のようにホットハンドを追求し始めると、至る所にそれを発見せずにはいられなくなる。
だが、1985年に発表された、ホットハンドを初めて研究した学術論文を読んだとき、私は我を忘れないように努めなければならなかった。この論文が心理学の古典にまでなったのは、「ホットハンドは存在しない」という結論が衝撃的だったからだ。
論文はあちこちで論争を巻き起こした。私たちは皆、一度はホットハンドを見た経験があり、それを感じた経験もある。脳裏に焼き付いているといっていい。読者の気を引くこの論文の魅力は、皆が正しいと思っている現象に挑んだ点あった。
世界中のとびきり優秀な学者たちが、ホットハンドは存在するという確たる証拠をつかもうと、研究を続けてきた。結果、時がたつにつれて、ホットハンドの存在を信じるのは愚かだというのが、明白になっていた。だが、本当にそうだろうか。
ホットハンドの法則
さまざまな職業に就く多くの人が、全く異なる理由でホットハンドを獲得する。どちらか一方ということもあるが、理想的には両方あるといい。なぜなら、ホットハンドは気まぐれに発生するわけではないからだ。才能や環境、