『新・ラグジュアリー 文化が生み出す経済 10の講義』
(安西洋之、中野香織/著)

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「ラグジュアリー」という言葉は、現在、贅沢感や高級感を感じさせるブランドやファッションアイテム形容するために使われることが多い。だが、近年先進的なブランドやスタートアップがそうした「旧来」のラグジュアリーと一線を画した「新しいラグジュアリー」を提示し、それらが各国で静かに拡大しているという。

「新しいラグジュアリー」はZ世代らの台頭や、環境問題や人権などの政治・社会的文脈とビジネスの接近などを背景に、各地域のローカル文化を起点に生まれつつある。本書では、そうした変化の詳細や国内外のラグジュアリースタートアップの動向、大学やビジネススクールで行われるラグジュアリーマネジメント教育などを 10の切り口から解説する。

 著者はモバイルクルーズ株式会社代表取締役/De-Tales Ltd.ディレクターで、東京とミラノを拠点とした「ビジネス+文化」のデザイナーである安西洋之氏と、著述家、株式会社 Kaori Nakano 代表取締役で、イギリス文化を起点にファッション史、モード事情、ラグジュアリー領域などを研究する中野香織氏。

著者:安西 洋之(Anzai Hiroyuki)
 モバイルクルーズ株式会社代表取締役/De-Tales Ltd.ディレクター。東京とミラノを拠点とした「ビジネス+文化」のデザイナー。欧州とアジアの企業間提携の提案、商品企画や販売戦略等に多数参画してきた。デザイン分野との関わりも深い。2017年、ロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』(日経BP)を監修して以降、「意味のイノベーション」のエヴァンジェリストとして活動する中で、現在はソーシャル・イノベーションの観点からラグジュアリーの新しい意味を探索中。またデザイン文化についてもリサーチ中である。著書に『メイド・イン・イタリーはなぜ強いのか』(晶文社)など。訳書にエツィオ・マンズィーニ『日々の政治』(BNN)がある。

中野 香織(Nakano Kaori)
 著述家/株式会社Kaori Nakano 代表取締役。イギリス文化を起点とし、ダンディズム史、ファッション史、モード事情、ラグジュアリー領域へと研究範囲を広げてきた。日本経済新聞など数媒体で連載を持つほか、企業のアドバイザーを務める。著書『「イノベーター」で読むアパレル全史』(日本実業出版社)、『ロイヤルスタイル 英国王室ファッション史』(吉川弘文館)、『モードとエロスと資本』(集英社新書)ほか多数。東京大学大学院博士課程単位取得満期退学。英ケンブリッジ大学客員研究員、明治大学特任教授、昭和女子大学客員教授などを務めた。

第1講 「新しいラグジュアリー」の時代は静かに始まっている
第2講 「旧型」のラグジュアリー
第3講 新しいラグジュアリーと「意味の創造」
第4講 ラグジュアリーとロマン主義
第5講 日本のラグジュアリー
鼎 談 最先端から見える「ラグジュアリー」の向かう場所
第6講 「ラグジュアリーマネジメント」が教えるもの
第7講 文化盗用 ??文化的な植民地からの解放
第8講 「アート」が持つ意味
第9講 サステナビリティをラグジュアリーから見る
第10講 もうひとつのあり方、もうひとつの視点

要約ダイジェスト

「新しいラグジュアリー」の時代は静かに始まっている

 できるだけ多くの人が、美しいものや美味しいものを同等に享受できる社会。私たちはそれが理想であり、目標だと信じてきた。最終消費財におけるイノベーションとは「大衆化」の実現であるとみられてきたが、実現してみると、やや索漠とした風景が目の前に広がっていた。

 ここで「大衆化」と括弧に入れたのは、実は社会が目指すべきは「民主化」であったのではないかとの反省があるからだ。大衆化は、上下のある中で上にあるものが下に降りてきて広く普及すること。民主化は、上下そのものをできるだけなくし、かつ公平な機会のもと、新しい価値を人々の創造意欲によってつくり出すことだ。

 そのために動いているのが「ラグジュアリースタートアップ」である。ラグジュアリー分野の対象は、アパレル、アクセサリー、自動車、アート、グルメ、ホスピタリティ、プライベートジェットなどさまざまだ。

 ラグジュアリーという言葉を聞くと、「古臭い」「排他的」「似非の品性」といったマイナスイメージを持つ人も多い。19世紀、産業革命が育んだ新興ブルジョワジーの需要によって生まれた英仏のラグジュアリーブランドを想像し、それらが20世紀後半以降、市場で肥大化したことへの嫌悪感があるのだと思われる。

 肥大化の象徴である、フランスの LVMHやケリングといったコングロマリットがラグジュアリーのすべてと認識していると、「ラグジュアリー」「スタートアップ」という2つの言葉がつながっていることに違和感を覚えるだろう。

 ラグジュアリーの歴史や領域を語るにあり、それらのコングロマリットの活動が重要なのは確かだが、実は「ラグジュアリー領域内の一時的な現象」にすぎない。従来のラグジュアリーモデルが「旧型」になり、ローカル文化に基づいた「新しいラグジュアリー」が各国で生まれつつあり、それがさらに拡大していく兆しがある。

 そして、巨大コングロマリットも座して衰退を待つのではなく、サブカルチャーやスポーツまでをも取り込みながら、今の世界をより新鮮に表現できる新しい才能や企業を探している。ラグジュアリーそのものが意味を変え、

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