『日本が先進国から脱落する日』
(野口悠紀雄/著)

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  • 目次
 近年、「安い日本」と言われる現象に見るような経済成長の停滞に加え、2022年に急速に進んだ円安の影響もあり、日本経済は危機的状況に陥っている。かつてアメリカに次ぐ世界第2位の経済大国だった日本が、今このような現実を突きつけられてしまっている理由や背景を正しく理解しているだろうか。

 本書では、現在の日本経済を取り巻く状況を直視し、その背後にあるメカニズムを解明。物価や賃金を上げるには何か必要なのか、停滞する日本と成長を続けるアメリカとの違いはどこにあるのか、人口減少局面にある日本の状況を変えるにはどうしたらいいのかなど、背景を踏まえた上で 2040年を予測する。

 著者 野口悠紀雄氏は、日本経済論を専門とし、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。日本の現状を正しく捉えたいビジネスパーソンや、投資やビジネスをするうえで「安い日本」や「悪い円安」の背景について知っておきたい方はぜひご一読いただきたい。

著者:野口悠紀雄(Noguchi Yukio)
 1940年、東京生まれ。1963年、東京大学工学部卒業。1964年、大蔵省入省。1972年、エール大学Ph.D. (経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。
著書に『情報の経済理論』(日経経済図書文化賞)、『1940年体制―さらば戦時経済』、『財政危機の構造』(サントリー学芸賞)(以上、東洋経済新報社)、『バブルの経済学』(日本経済新聞出版社、吉野作造賞)、『「超」整理法』(中公新書)、『仮想通貨革命』(ダイヤモンド社)、『ブロックチェーン革命』(日本経済新聞出版社、大川出版賞)など。近著に『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』(文春新書)、『「超」英語独学法』(NHK出版新書)、『「超」メモ革命』(中公新書ラクレ)、『良いデジタル化 悪いデジタル化』(日本経済新聞出版社)、『データエコノミー入門』(PHP新書)、『CBDC 中央銀行デジタル通貨の衝撃』(新潮社)、『入門 米中経済戦争』(ダイヤモンド社)、『リモート経済の衝撃』(ビジネス社)などがある。
第1章 信じられないほど貧しくなってしまった日本
第2章 円安という麻薬で改革を怠った
第3章 「安い日本」を理解するための経済指標
第4章 物価が上がらないのは、賃金が上がらないから
第5章 日本停滞の原因をアメリカに学ぶ
第6章 デジタル化に遅れた日本
第7章 亡国の円安 20年史
第8章 日本は1%成長できるか?
第9章 高齢化のピークに向かう―2040年問題の深刻さ
第10章 将来に向かっていま何をすべきか?

要約ダイジェスト

信じられないほど貧しくなってしまった日本

 市場為替レートでドルに換算すると、日本のビッグマックの価格はアメリカの6割程度でしかない。ユーロ圏やイギリス、韓国と比較してもビッグマック価格が日本より低い国は少ない。「安い日本」と言われるが、まさにそのとおりだ。

 価格が安いのは、それだけを見れば、悪いことではない。所得が決まっているとすれば、価格が安いほどたくさんのものを購入できるからだ。問題は、ビッグマックの価格が安い国では、賃金も安い場合が多いことだ。

 OECD(経済協力開発機構)が公表している賃金に関する 2020年のデータを見ると、日本は3万 8515ドルだ。他方でアメリカは6万 9392ドル。したがって、日本の賃金はアメリカの 55.5%でしかない。

 日本より賃金が低い国は、旧社会主義国と、ギリシャ、イタリア、スペイン、メキシコ、チリぐらいしかない。日本は賃金水準で、いまや OECDの中で最下位グループに入っているのだ。

 日本のビッグマック指数が先述のような低い位置になったのは、比較的最近のことである。2012年6月に、日本のビッグマック価格は 320円であった。このときの為替レートは1ドル=78.22円であった。これで換算すると 4.09ドルとなり、アメリカの 4.33ドルとあまり変わらなかった。

 過去 20年以上にわたリ、日本経済はほとんど成長しなかった。それに対して、世界の多くの国では経済が成長した。「このため、日本が取り残された」と言われる。この考えによれば、日本が貧しくなった原因は、日本の成長率の低さだということになる。

 確かにそうだが、それだけではない。日本は金融政策によって為替レートを円安に導いたため、国際的に見て日本の物価や賃金が安くなったのだ。現在の日本の低い賃金や「安い日本」を問題とするのであれば、その責任はアベノミクスにあるということになる。

政治は、円安による安易な利益増を求める

 為替レートの決定メカニズムは複雑だ。しかも、日本の政策だけで円安になるわけではない。しかし、日本の政治に円安を求めるバイアスがある。円高になると、「日本の危機だ」と言われ、円安を求める強い圧力が生じるのだ。

 そうした圧力が強まり、2013年からのアベノミクスでは、顕著な円安政策がとられた。円安になれば、輸出企業の利益が増え、株価が上がる。この相関関係は、統計的にも明らかである。したがって、経済政策は、

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