- 本書の概要
- 著者プロフィール
本書では、彼らを「対立屋」と定義し、そのパーソナリティに迫っている。彼らがどのように対立を煽り、人々を分断させるのか。ヒトラーやスターリン、毛沢東といった独裁者やドナルド・トランプなどを例として、その権力掌握の方法を解説。そのメカニズムと対策を知ることで、「危険人物をリーダーに選ばない」という選択が可能になる。
著者は、弁護士、臨床ソーシャルワーカーの資格を持ちながら、個人や組織が「対立屋」に対処することを支援する会社を創設、アメリカ国立紛争解決センターのシニアファミリーメディエーターも務める人物。煽動的なメディアや人物、陰謀論やフェイクニュースなどに冷静に対処したいと考える方にはぜひご一読いただきたい。
個人や組織が「対立屋」に対処することを支援する会社、High Conflict Instituteの共同創設者兼トレーニングディレクター。アメリカ、サンディエゴにある国立紛争解決センター ( National Conflict Resolution Center)のシニアファミリーメディエーター。弁護士、臨床ソーシャルワーカーの資格を持ち、ペパーダイン大学ロースクールのストラウス紛争解決研究所( Straus Institute)およびモナーシュ大学法科大学院の非常勤講師を務める。200万人以上の読者を持つPsychology Today のウェブサイトに連載を持つ。本書を含めて14冊(共著含む)の著書がある。
第1章 対立を煽る政治家たち
第2章 対立を煽る感情戦
第3章 有権者の四分割
第4章 感情を煽るメディア
第5章 架空の危機の三段論法
2 「いかさま王」の本性を知る
第6章 ヒトラー、スターリン、毛沢東はいかにして権力を掌握したか
第7章 危険な世界──ロシア、ハンガリー、フィリピン、ベネズエラ、イタリア
第8章 アメリカ──マッカーシーからニクソン、トランプ、そして次は?
第9章 対立を煽る政治家に対する10のあやまち
3 対立を煽る政治家を止める方法
第10章 大切なのは人間関係
第11章 ナルシストやソシオパスをふるい落とす
第12章 架空の危機の三段論法の正体を明かす
第13章 対立屋の攻撃に負けない振る舞い方
第14章 メディアやフェイクニュースにだまされない
おわりに 私たちの安全を守り続けるために
解説 「危険人物」の毒牙にかからないために(中野信子)
要約ダイジェスト
対立を煽る政治家たち
対立性の高い法的な争いは偶然起こるものではない。そのような争いは「対立を煽るパーソナリティ」を持つ人々(対立屋)が原因となっている。
ナルシスト(自己愛性)やソシオパス(反社会性)は、とんでもなく魅力的で、簡単に人をだます人たちだ。ほとんどの場合、彼らは身近な人を自分の思いどおりにすることに気を取られる。
だが、政治の道へ進む場合は、きわめて危険な人物になることがある。彼らの権力欲にはきりがないのだ。ただし、その言動のパターンは、最終的には避けられない劇的な失脚も含めて、きわめて予測しやすいものだ。
20世紀の戦争と大量殺人は、ある意味たった3人(ヒトラー、スターリン、毛沢東)のパーソナリティによるものだと考えられる。歴史家はこう述べる。「第二次世界大戦はアドルフ・ヒトラーのパーソナリティと彼が掲げた目標によるものだと考えている」。
スターリンが強制した集団農場化によって人為的な飢饉が生じ、400万人以上のウクライナ人と、それ以上のロシア人が死に至った。毛沢東も、中国で同じような集団農場化を強制し、それによって飢饉を引き起こして 2000万から3000万の人民を殺した。
対立を煽るパーソナリティの持ち主は、あらゆる関係は本質的に敵対的なものだと考える。その結果、彼らはほぼどんな場合でも、次から次へと不要な対立を生んでいく。さらに悪いことに、彼らは対立を解消することには興味がない。
対立を煽るパーソナリティのパターンは大きく4つの特徴が見られる。
1.標的とした相手を執拗に非難する
2.何にでも白黒をつけずにいられない
3.攻撃的な感情を抑制できない
4.極端に否定的な態度を取る
対立屋は、パーソナリティ障害の特性も一つならず持っており、①人づきあいに問題を抱えており、②自身の言動を反省することはなく、③自分を変えない。自分自身がなぜ対立を煽る言動を繰り返しているのか理解していないので、事態が悪化するとどんどん保身に走り、身の回りの人々を「非難の標的」として攻撃する。
対立屋のもう1つの驚くべき特徴は、きわめて魅力的で説得力のあるカリスマの持ち主にもなれることだ。少なくとも最初のうちはそのように振る舞うのだが、