- 本書の概要
- 著者プロフィール
取り上げられる国々は 48か国に及び、それぞれの国の存続時期、地理的状況、人口、滅亡原因、現在、印象的なエピソードが端的にまとめられている。人口数人の国家からクリミアなど現在まで紛争の火種が残る国家まで、そもそも国家とは何か、どうあるべきかなどを感じながら、一気に読み進めてしまうはずだ。
著者はオックスフォード大学で考古学と人類学を専攻、現在はロックスミス・アニメーションやスタジオカナルで映像作品の制作にたずさわる作家、アニメ脚本家。今後の日本の政治経済にも大きな影響を及ぼす国際政治への興味関心を呼び起こす一冊として、新たな視座や歴史観を身に付けたい方はぜひご一読いただきたい。
オックスフォード大学で考古学と人類学を専攻。作家、アニメ脚本家。『The Pirates!』シリーズの原作者。アカデミー賞にノミネートされた『The Pirates! In an Adventure with Scientists』の脚本を執筆。その他の著書に『How Animals Have Sex』『Elite Dangerous: Docking is Difficult』など。ロックスミス・アニメーションやスタジオカナルで映像作品の制作にたずさわる。
翻訳:杉田真(Sugita Makoto)
英語翻訳者。訳書に『ビジネスアイデア・テスト 事業化を確実に成功させる44の検証ツール』(翔泳社)、『データ駆動型企業「自律的意思決定」でビジネスを加速する5つのステージ』(日経BP)、『e-エストニア デジタル・ガバナンスの最前線』(共訳、日経BP)ほか。
第2部 誤りと自称・独立国
第3部 嘘と失われた王国
第4部 傀儡と駆け引きの道具
要約ダイジェスト
太平天国 ——「誤訳」から史上最悪の内乱が発生
1964年、ペプシはキャッチコピーを「よみがえれ、きみはペプシ世代!」(Come alive! You’re in the Pepsi generation!)に変更した。 この販売キャンペーンを中国に輸出したとき、広告代理店はこのコピーを「ペプシはあなたの先祖を墓から連れ戻す」(Pepsi brings your ancestors back from the grave)という表現に変えてしまった。
そんな馬鹿なと思うかもしれないが、歴史を見れば翻訳をめぐるもっとひどい事件が存在する。19世紀半ばには、誤訳から史上最悪の内乱に発展したことさえあるのだ。
洪秀全は、何が何でも役人になりたかった。だが、彼は科挙という官吏登用のための試験に2度落ちた。2度目の試験の帰り道、彼はキリスト教のパンフレットを受け取る。それは、聖書の名場面を少し歪曲した翻訳で、悪魔のエピソードまで盛り込まれていた。
洪は隅から隅まで読みはしなかったが、目次に「洪」という自分の名前があるのを見つけた。洪が「洪水」を意味するというのは、不幸なことだった。彼は、自分と同名の人物が「地上のあらゆる生き物を殺した」ことを知った。
3度目の試験に落ちたあと、洪は神経衰弱になった。熱にうかされながら、あごひげを生やした男から剣を授かる夢を見た。もうろうとした意識でパンフレットに目を通した彼は「自分はイエスの弟であり、世界から悪を排除することが使命である」と思い込んだ。
洪の噂はまたたく間に熱狂的なキリスト教信者たちの間に広まり、彼をトップとするカルト団体「拝上帝会」が作られた。洪が退治すべき「悪魔」は、圧政を敷いていた清王朝だった。洪と彼の軍隊は、