『地域格差の正体』
(栗岡完爾、近藤宙時/著)

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  • 目次
 新型コロナウィルスで大きな打撃を受けた産業の一つ、観光産業。海外からのインバウンド市場の本格的な復活にはまだ時間がかかりそうだが、国内旅行は徐々に回復しつつある。本書では、コロナ後の経済再活性の起爆剤としての「観光産業」、それも経済波及効果や即効性が高い「日本人による国内旅行での消費」を論じる。

 その際にボトルネックとなるのが遠くに行けば行くほど高くなる「高速道路料金」であり、その代替案としての「定額制料金制度」の導入を提唱。本書で精緻に検証されている通り、高速道路の定額化は、リスクやコストなく実現可能なうえ、その経済効果は観光産業にとどまらず、渋滞の解消や物流効率化、地域格差是正にもつながるという。

 著者はトヨタ自動車代表取締役副社長、千代田火災海上保険(現あいおいニッセイ同和損害保険)取締役会長、名古屋商工会議所副会頭などを歴任した栗岡完爾氏、岐阜県庁情報企画課長、新産業振興課長、企業誘致監等を歴任し、現在、中小企業団体中央会専門員、中小企業庁認定経営革新等支援機関、特定行政書士の近藤宙時氏の共著。

著者:栗岡完爾(Kurioka Kanji)
 1959年慶應義塾大学経済学部を卒業し、トヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)入社。生産管理や購買、営業など幅広い業務を経験したのち、1996年トヨタ自動車代表取締役副社長。1999年千代田火災海上保険(現あいおいニッセイ同和損害保険)取締役会長、2000年TFS(トヨタ金融会社)取締役会長、2004年よりトヨタ自動車相談役。同年に名古屋商工会議所副会頭に就任し、地元経済界の代表として愛知万博を成功に導く。現在、同会議所顧問を務める。

近藤宙時(Kondo Chuji)
 1981年中央大学法学部を卒業し、岐阜県庁に上級職採用。主に企画・経済振興を担当し、2001年には情報システム戦略的アウトソーシング事業の計画立案により日経電子自治体大賞を受賞。観光課総括管理監、岐阜市商工労働部次長、情報企画課長、新産業振興課長、企業誘致監等を歴任。現在、中小企業団体中央会専門員、中小企業庁認定経営革新等支援機関、特定行政書士。

序 章 日本は今も先進国なのか?
第1章 経済活性化の最大の起爆剤は観光である
第2章 日本の高速道路料金はなぜおかしいのか?
第3章 定額制料金制度は今すぐにでも実現可能だ
第4章 定額制料金制度は経済と地域活性化の切り札になる
終 章 日本をひとつにした定額制の元祖

要約ダイジェスト

即効性がある観光産業

 明治以来の悲願と言っていい中央と地方の格差は、縮まる様子がない。限界集落となってしまってから工場誘致しようにも、工場で働く人にも事欠き、工場が進出してくれるのは夢のまた夢。

 しかし、観光はほかの産業に比して、多大な時間と投資を必要とせずに、活性化し得る分野だ。実際、古くは赤レンガ倉庫の活用で賑わいを取り戻した函館から、黒壁スクエアによって旧来以上の活気を取り戻した滋賀県の長浜市など、そうした実例はいくつもある。

 特に国内旅行は比較的早くに活性化させることができる産業分野である。なぜなら、ほかの消費材は大量生産時代を経て国民すべてに行き渡り、消費してもらうには買い替え時期を待つしかない状態にあるが、国内旅行はまだ日本人すべてが「もういらない」と言えるほどには充足していないからだ。

「もしお金があったら何をするか。何を買うか」という各種の調査でも、国内旅行がたいてい一番に挙がる。つまり、国民の多くは観光に飽きてはいないし、充足もしていない。何かのきっかけさえ作れれば、国内旅行産業は一気に拡大できる可能性を秘めている。

 コロナ禍でどん底にまで落ち込んだ日本経済をすぐに立て直すには、まずは国内旅行を促進させるのが一番だ。その意味では、コロナ禍で時の政府が行った「GoTo」キャンペーンは、方向性だけは間違っていなかった(時期と方法論は大いに間違っていたが)。

 その 1.7兆円という前代未聞の補助金規模に対する効果の少なさ、逆にその 18%、3000億円にも及ぶ巨額の事務委託費、コロナウイルスの感染者数が連日うなぎ上りの時期に始められたというタイミングの悪さから、批判にさらされ続けた。

 だが、本当に批判されるべきは、国内旅行を増やすために、

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