- 本書の概要
- 著者プロフィール
メタバースはまだ新しい概念のため実はまだ定義が定まっていない。本書では「自分にとって都合がいい快適な仮想世界」をメタバースと定義し、現実空間を模した疑似現実であるデジタルツインやミラーワールドと一線を画している。これらの世界の覇権をめぐり GAFAMなどのテック企業が開発競争を繰り広げているのだ。
著者は富士総合研究所勤務、関東学院大学経済学部准教授・情報科学センター所長を経て、現在、中央大学国際情報学部教授。ITのわかりやすい解説には定評がある。SNSのように人々の生活や行動を大きく変える可能性があるメタバースの決定版入門書として、テクノロジーや IT業界に携わる方以外も、ぜひご一読いただきたい。
1972年東京都生まれ。中央大学大学院総合政策研究科博士後期課程修了。博士(総合政策)。富士総合研究所勤務、関東学院大学経済学部准教授・情報科学センター所長を経て、現在、中央大学国際情報学部教授。『ジオン軍の失敗』『ジオン軍の遺産』(以上、角川コミック・エース)、『ポスト・モバイル』(新潮新書)、『ハッカーの手口』(PHP新書)、『思考からの逃走』(日本経済新聞出版)、『ブロックチェーン』『5G』(以上、講談社ブルーバックス)、『数式を使わないデータマイニング入門』『アップル、グーグル、マイクロソフト』『個人情報ダダ漏れです!』『プログラミング教育はいらない』『大学教授、発達障害の子を育てる』(以上、光文社新書)など著書多数。
第1章 フォートナイトの衝撃
第2章 仮想現実の歴史
第3章 なぜ今メタバースなのか?
第4章 GAFAMのメタバースへの取り組み
エピローグ
要約ダイジェスト
メタバースとは何か
メタバースは、まだ辞書には載っていない言葉だが、辞書的な定義を書けば「サイバー空間における仮想世界」になるだろう。「サイバー空間」がわかりにくければ、「インターネット」と読み替えてもいい。
ここで言う「仮想世界」をどう捉えるかで、メタバースの印象は 180度違ったものになる。まっとうな人の場合この仮想世界を、仮想現実(Virtual Reality:VR)と脳内変換することが多い。
一般的には Virtual Realityは現実そっくりを志向する。だから、欧米の VR研究者・技術者たちは、VRで何かコンテンツを作ろうとするとき、まずは現実を模すことを考えてきた。そのため、日本語訳としては、疑似現実がいいかもしれない。
現在、VR体験は視覚と聴覚に偏っているが、視覚情報の大幅な進歩に加えて、触覚や嗅覚、味覚まで加えた体験が研究されている。5年後、10年後に VRでの体験の価値が、現実でのそれを上回る可能性は十分にある。
であれば、VRの次は AR(Augmented Reality:拡張現実)だと話が広がっていくのも理解できる。ARを身近に感じている人は少ないかもしれないが、実はかなり日常生活に入ってきている。例えば「ポケモン GO」などは、すぐに始めることができる ARだ。日常の風景の上に、ゲームのキャラクタが上書きされる形で、現実と仮想が融合している。
しかし、体験をデジタル化する技術には、もう一つの別の潮流がある。現実に似せる(疑似現実)のではなく、現実とは違うもう一つの別の世界を作ろうという方向性だ。「現実とは少し異なる理(ことわり)で作られ、自分にとって都合がいい快適な世界」――本書ではこれをメタバースと呼ぶ。
似た言葉にデジタルツインがあるが、これは疑似現実のほうだ。デジタルツインがリアルに対してフィードバックを返してくるようになると、それはミラーワールドと呼ばれる。メタバースは仮想現実なので、