- 本書の概要
- 著者プロフィール
本書では、防衛大学校で「経営学」や「マーケティング」を長年教えてきた著者が、短時間で理解でき、しかもすぐに役に立つマーケティングの基本を解説。マーケティングの全体像、マーケティングに役立つ心理学、4P(Product〈商品〉、Price〈価格〉、Place〈流通・立地〉、Promotion〈販売促進〉)という構成で講義のように進んでいく。
各トピックスごとに身近な事例や印象的なエピソードを多数用いながら、見開き・図解でわかりやすく解説されており、初学者でも興味深く読み進められるはずだ。著者は防衛大学校 公共政策学科 准教授で、経営学にあまり興味がない学生でもわかりやすい授業にこだわり、20年以上にわたり防衛大で教鞭をとる人物。
防衛大学校 公共政策学科 准教授。1968年生まれ、北海道旭川市出身。旭川東高校を卒業後、学部、大学院ともに北海道大学(経営学博士)。防衛大学校で20年以上にわたり教鞭をとる。経営学にあまり興味がない学生を相手に、なんとか話を聞いてもらう努力を重ね、とにかくわかりやすく伝える授業にこだわっている。就職、結婚、子育て、といった人生のイベントをひととおり終え、生活者としての経験をふまえて、仕事にも人生にも役立つ経営学を探求している。趣味はクラシック音楽と海外旅行。前著『今さらだけど、ちゃんと知っておきたい「経営学」』(同文舘出版)のほか、経営・マーケティングの共著が6冊ある。
第2章 お客のココロを理解する「マーケティングの心理学」
第3章 Product(商品)どんな商品が売れる?
第4章 Price(価格)価格戦略のしくみ
第5章 Place(流通・立地)どうやってお客へ届ける?
第6章 Promotion(販売促進)どうすれば売れる?
要約ダイジェスト
「星野リゾート」が最初にやること
簡単にいえば、マーケティングとは「商品を売るための活動」だ。しかし現代のマーケティングは、単に「売る」ことだけではない。有名な経営学者のドラッカーが「マーケティングの目標は、販売を不要にすることである」と書いたように、あまり考えずに商品をつくって、それをなんとか売りさばこうとするのは、マーケティングではないのだ。
マーケティングは、商品を企画・開発するところから始まる。「商品コンセプト」(商品の基本的な特徴)を考える最初のステップとして、「SWOT分析」がある。「SWOT」は Strengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威)の頭文字をとったものだ。
「自分の『強み』を活かし、『弱み』を見せないようにする」「外部の『機会』を活用し、『脅威』を避ける」ことを念頭に、商品コンセプトを考えるのだ。
商品コンセプトを考える次のステップは「STP」。これはSegmentation(セグメンテーション、市場を細分化する)、Targeting(ターゲティング、ターゲットを選ぶ)、Positioning(ボジショニング、ライバル商品のなかで、自社商品の位置づけを考える)の頭文字をとったものだ。
例えば、ホテル運営会社の星野リゾートは、「リゾナーレ八ケ岳」というホテルを立て直すとき、最初に SWOT分析をした。ホテルの人気が下がったといっても、変わらずホテルに来てくれる「支持してくれるお客」「満足度の高いお客」が何を求めているのかを考えることで「SWOT」が浮かび上がる。
「リゾナーレ八ケ岳」では、宿泊客にアンケートをとって「なぜ選んでくれたのか」「どれくらい満足しているのか」「どこに問題があるのか」を調べた。満足度が高かったのは、来訪の多い「カップル」ではなく、来客数としては少ない「子ども連れファミリー」だった。
ファミリー層が高く評価していたのは「部屋の広さ」と「プール」で、これが「リゾナーレ八ケ岳jの「強み」だと考えられた。そこで「子ども連れファミリー」をターゲットとする「大人のためのファミリー・リゾート」というコンセプトが決まった。
このコンセプトに合わせて、「ゲームセンター」だった場所を「託児所」や「授乳室」に、「カウンターパー」だったところを「ブックス&カフェ」に変えた。レストランでは、