- 本書の概要
- 著者プロフィール
そこで本書では、われわれがナンバーバイアス(数字の偏見)の罠に陥らず、正しく数字を読み解くための考え方と視点を提示。「因果と相関の混同」「平均」や「誤差」「サンプリング調査」「ビッグデータ」などの罠など、身近な問題を数字の歴史や身近なエピソードからわかりやすく解説する。
著者はオランダのニュースサイト・出版社「De Correspondent」の数字特派員で、エラスムス・スクール・オブ・エコノミクスなどで計量経済学の博士号を取得。初めての著作である本作はオランダでベストセラーになり、世界各国で話題の書となっている。数字が氾濫する現代社会の必読書としてぜひご一読いただきたい。
オランダのニュースサイト・出版社「De Correspondent」の数字特派員。エラスムス・スクール・オブ・エコノミクスとティンベルヘン・インスティテュートで計量経済学の博士号を取得。またオランダ高等研究所で、ジャーナリストが科学研究・教育現場に長期間滞在する「ジャーナリスト・イン・レジデンス」を経験した。初めての著作である本作はオランダでベストセラーになり、数週間にわたってベストセラーリストに掲載された。
訳者:桜田直美(Sakurada Naomi)
翻訳家。早稲田大学第一文学部卒。訳書に『こうして、思考は現実になる』『SUPER MTG スーパー・ミーティング』(ともに小社刊)、『アメリカの高校生が学んでいるお金の教科書』『フューチャリストの「自分の未来」を変える授業』(ともにSBクリエイティブ)、『THE CULTURE CODE 最強チームをつくる方法』『THE CATALYST 一瞬で人の心が変わる伝え方の技術』(ともにかんき出版)など多数。
2章 数字はご都合主義
3章 サンプリングの罠
4章 「コウノトリ」と「赤ちゃん」の不思議な関係
5章 「ビッグデータ」は疑わしい
6章 数字はときに感情的
要約ダイジェスト
すべてが「数字」で決まる世界
数字は本来、客観的であるはずだ。だが、多くの人が基準として活用している数字は、どこかの誰かが意味を与えたものである。例えば、学校の成績は、先生や教授が計算して決めている。適正な BMIという基準は医師が決めたものだ。
年金支給開始年齢、フェイスブックのクリック数、GDP、平均年収──そういった数字が、世界のあり方を決めてしまっている。そして、数字の力はますます強くなる一方だ。ビッグデータのアルゴリズムは、公共でも民間でも大きく勢力を広げ、もはや物事を決めるのは、人間ではなく数学モデルだ。
数字には特に興味がないという人であっても、数字に人生を支配されているのだ。だが私たち「数字の消費者」は、あまりにも簡単に数字に影響され、だまされる。私たちはそろそろ、数字を本来あるべき場所に戻さなければならない。必要以上に神聖視するべきではないが、ゴミと一緒に捨ててしまうのも間違っている。
歴史をふり返ればわかるように、政治家はつねに数字を悪用してきた。たとえばアルゼンチンでは、長年にわたってインフレ率が操作され、実際よりも低い数字になっていた。またイギリスでも、EU離脱派を牽引したボリス・ジョンソンは、数字の扱い方について統計学者から何度も叱りの言葉を受けている。
数字が人々の生活を向上させるのは事実だが、同時に破滅させる力もあるのだ。大量の数字を扱うときにもっとも大切な道具は「標準化」「収集」そして「分析」だ。しかしこの3つの道具も完全無欠ではなく、ときにはとんでもない事態を引き起こすこともある。
英語がわからない人に「英語」でテストが行われた
第1次世界大戦のさなか、175万人のアメリカ軍の新兵を対象に知能テストが実施された。ハーバード大学の心理学者ロバート・ヤーキーズの発案だ。
試験結果のデータを集めて分析を始めると、