『エフォートレス思考―努力を最小化して成果を最大化する』
(グレッグ・マキューン/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
「全力で仕事に取り組んでいるのに、なぜか時間がない…」、そんな風に感じることはないだろうか。多くの現代人は、日々のタスクに追われ、それをこなすために全力を投じている。特に日本では「頑張ること」や「我慢」を美徳とする文化が根強く、楽をすることや休むことに抵抗を示す人も多い。

 そこで本書では、仕事や生活の中で、努力や根性以外の方法で成果を出すための「エフォートレス」な考え方を解説。「我慢」を「楽しい」に変え、脳を休ませながら成果を出すためのやり方や、それを仕組み化する方法を、アスリートや研究者、作家など、一流の人々の事例を使いながら具体的にアドバイスしている。

 著者はアップル、グーグル、フェイスブックなどの巨大企業にコンサルティングを行い、世界経済フォーラムの「ヤング・グローバル・リーダーズ」に選出されている人物で、本書は全米ベストセラーとなった著書『エッセンシャル思考』の続編にあたる。ジャンルを問わず、今以上の成果を手にしたいと考える方はぜひご一読いただきたい。

著者:グレッグ・マキューン(Greg Mckeown)
 McKeown Inc. のCEO。アドビ、アップル、グーグル、フェイスブック、ピクサー、セールスフォース・ドットコム、シマンテック、ツイッター、VMWare、ヤフーなど名だたる企業のコンサルティングをおこなう。著書『エッセンシャル思考』は全米ベストセラーとなり、ニューヨーク・タイムズ紙やファスト・カンパニー誌、フォーチュン誌などで取り上げられたほか、NPRやNBCなどの有名メディアでインタビューを受けた。ハーバード・ビジネス・レビューやリンクトインに人気ブログを寄稿し、ポッドキャスターとしても人気が高い。世界経済フォーラムの「ヤング・グローバル・リーダーズ」に選出された。

訳者:高橋 璃子(Takahashi Riko)
 翻訳家。京都大学卒業。ラインワール応用科学大学修士課程修了(MSc)。訳書に『エッセンシャル思考』『スタンフォード大学で一番人気の経済学入門』『NYの人気セラピストが教える 自分で心を手当てする方法』(かんき出版)『アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?』(河出書房新社)、『GDP──〈小さくて大きな数字〉の歴史』(みすず書房)、『ブロックチェーン・レボリューション』(ダイヤモンド社)などがある。

Prologue エフォートレス思考とは
PART1 エフォートレスな精神
 第1章 INVERT 頑張れば成果が出るとはかぎらない
 第2章 ENJOY 「我慢」を「楽しい」に変える
 第3章 RELEASE 頭の中の不要品を手放す
 第4章 REST 「休み」で脳をリセットする
 第5章 NOTICE 今、この瞬間にフォーカスする
PART2 エフォートレスな行動
 第6章 DEFINE ゴールを明確にイメージする
 第7章 START はじめの一歩を身軽に踏みだす
 第8章 SIMPLIFY 手順を限界まで減らす
 第9章 PROGRESS よい失敗を積み重ねる
 第10章 PACE 早く着くために、ゆっくり進む
PART3 エフォートレスのしくみ化
 第11章 LEARN 一生モノの知識を身につける
 第12章 LIFT いちばんシンプルに伝える
 第13章 AUTOMATE 勝手に回る「しくみ」をつくる
 第14章 TRUST 不信のコストを削減する
 第15章 PREVENT 問題が起こる前に解決する
Epilogue エフォートレス思考を生きる

要約ダイジェスト

エフォートレスな精神

 私たちは大事な仕事に持てる時間とエネルギーのすべてを注ぎ込み、時には心の健康さえも犠牲にする。まるで自己犠牲にこそ価値があると言わんばかりだ。「大変だがやりがいのある」仕事に価値が置かれ、「楽して儲ける」のは悪いことのように扱われる。

 だが努力と根性でなんとかしようというのは、ひとつの考え方にすぎない。ところが多くの人は、それが唯一のやり方だと思い込んでいる。力ずくでやることに慣れてしまっているからだ。

 エフォートレス思考は、問題に対するアプローチを 180度逆転させる。それは「どうすればもっと楽になるだろう?」と考えるアプローチだ。そうすれば、より少ない努力で成果を出せる。我慢を美徳と考えることをやめれば、重要な仕事を、まるで遊びのように楽しむことが可能になるのだ。

 楽しくないことに私たちが取り組むのは、あとで結果が返ってくることを期待するからだ。ヘルシーな食事をして毎日欠かさず運動すれば、やがて痩せて健康になれる。読書を毎日すれば、知識が身について自分の強みになる。

 ただし、それらはすべて「遅行指標」だ。つまり行動した時点ではなく、何週間、時には何年もあとになって結果が返ってくる。だが、楽しみを後回しにする必要は必ずしもない。行動と結果のタイムラグを減らせば、行動自体が楽しくなる。そのためのコツは、大事な行動に、わかりやすい報酬を結びつけることだ。

 ある経営者は、ランニングマシンで走ることを日課にしていた。はじめのうちはサボってしまうことも多かったが、毎日つづけるために、大好きなポッドキャストを聴きながら走ることにした。これを習慣にしてから、彼はランニングの時間が楽しみで仕方ないという。運動の効果を辛抱強く待つのではなく、運動しながら楽しめる方法を見つけたのだ。

 習慣は「何を」やるかを問題にし、儀式は「どのように」やるかを問題にする。世界中で大人気の“こんまりメソッド”は、単に不用品を捨てる行動とは一線を画している。彼女の片づけは儀式だ。感性を駆使してときめきを感じ、家に挨拶をし、役目を終えた服に今までありがとうと感謝する。

 こんまりメソッドが「人生を変える」のは、部屋中に散らばっていた服が片づくからではない。片づけの儀式そのものが、あなたの人生の大事な一部になるからだ。儀式をうまく使えば、面倒なタスクは、ときめきに満ちた体験となる。

「休み」で脳をリセットする

 現代の忙しい生活のなかで、多くの人はリラックスする方法を忘れている。何もしないでいることを苦痛に感じるのだ。今日中に仕事を終わらせようと頑張りすぎて、次の日に起き上がれないほど疲れてしまうことはないだろうか。

 やりすぎを防ぐためには、シンプルなルールに従えばいい。1日の仕事は1日ですっかり疲れが取れる程度まで、1週間の仕事は、その週末ですっかり疲れが取れる程度までに制限するのだ。

 仕事が乗っているときは、エネルギー切れの兆候を無視してしまいがちだ。だが、そうやって疲れをごまかしているあいだにも、疲労は溜まっていく。心身の疲労を防ぐもっとも簡単な方法は、短い休憩を頻繁に取ることだ。例えば、次のようなルールが有効だ。

1.午前中に最優先の仕事をする
2.その仕事を、90分以内の3つのセッションに分割する
3.各セッションのあいだに短い休憩(10分~15分)を取り、頭と体を休ませる

 頑張ってもうまくいかないときは、さらに力を入れるのではなく、力を抜くとよい。ほんの1分間でも活動を中断して休息をとれば、心身は驚くほど回復するのだ。

 現代人は慢性的に寝不足だ。何日か睡眠不足がつづいても、1日しっかり眠ればもとに戻ると私たちは考えがちだが、研究によると、睡眠不足になるたびに「睡眠負債」は積み重なる。

 睡眠の質は、深い睡眠をどれだけ取れるかで決まる。睡眠の質を上げるためには、次のような戦略が有効だ。まず、ベッドに入る1時間前には電子機器をすべて切る。寝る前に熱いシャワーを浴びる。そしてベッドに入る時間は、疲れているかどうかにかかわらず毎晩一定にする。

 また、昼寝は睡眠負債を返すための秘密兵器だ。昼寝をすると脳の反応速度が上がり、論理的思考や記号認識のパフォーマンスが上がることがわかっている。気分も安定し、苛立ちや衝動性が減る。

 だが私たちは、昼寝に罪悪感を覚えるように条件づけられており、はじめは寝ようとしてもうまく眠れないかもしれない。それでも毎日一定の時間を昼寝に充ててみよう。練習すれば、エフォートレスに(そして罪悪感なく)昼寝ができるようになる。

エフォートレスな行動

 重要なプロジェクトが終わらない原因のひとつは、いつまでも手を加え続けることだ。あるポイントで完了させないと、手間ばかりかかって効果はほとんど得られない。修正にかかるコストが、それによって得られるリターンを上回ってしまうのだ。

 私はいつも、コストとリターンが逆転するちょうど手前を「完成」と定めている。時間と努力を無駄にしないためにも、「完成」のイメージを明確に定義し、そこにたどり着いたら潔く終わりにしよう。

 先延ばし癖のある人は、まず何をすべきかというゴールが明確に描けていないことが多い。最初の一歩を踏みだそうにも、どの方向に進んでいいかわからないのだ。心にゴールを思い描くだけで、進むべき道は驚くほどクリアになる。ゴールを描くことは、終わらせるためだけでなく、始めるためにも有効なのだ。

 これから重要なプロジェクトに取りかかるときには、1分間だけ目を閉じて、作業が終了したときのイメージを思い浮かべる。例えば「クライアントからの質問に対する返信を書いて、ざっと見直した」ときの自分を想像する。やるべきことが明確になれば、集中力が格段に上がる。そこに向けて進むための意欲とエネルギーが湧いてくる。

 重要なプロジェクトを始めるとき、その先に待ち構えるさまざまな困難を予想して、ひるんでしまう人は多い。それを避けるには、明確な「最初の一歩」を決めることだ。たとえ最終的なゴールは遠くても、最初の小さなゴールが見えれば、先に進むことは容易になる。エフォートレスな行動にエンジンがかかるからだ。

 デザイン思考の原則に、MVP(実用最小限の製品)というものがある。フィードバックを得るという目的に特化し、機能を最小限に抑えることで、無駄な労力を費やすことなく最初の一歩を踏みだし、最大限の正しい情報を得ることが可能になる。

 元トライアスロン選手のベン・バーガロンは、仕事でもプライベートでもすぐれたパフォーマンスを維持するために「午後5時 25分にオフィスを出る」というルールを守っている。暇な日も忙しい日も5時 25分にオフィスを出るのだ。

 たとえ会議中であっても、5時 25分になったら、すぐに立ち上がってドアに向かう。周囲の人たちも慣れたもので、話を打ち切られても気にしない。午後5時 25分が彼の限界だと知っているからだ。エフォートレスなペースで進める最善の方法は、上限をしっかりと決めることだ。

エフォートレスのしくみ化

 ひとつのインプットがひとつのアウトプットを生むとき、それは直線的な成果だ。毎朝ゼロから始まり、決まった量の努力をしなければ、今日の成果が出せない。つまり、努力した量と同じ量の成果しか得られないということだ。

 それよりもはるかにうまいやり方は、累積的な成果を利用することだ。累積的な成果の場合、一度努力するだけで、何度も成果が現れる。休んでいても、寝ていても、勝手に成果が積み重なる。

 本を1冊書いて、何年も印税を受けとっている作家は、累積的な収入を得ている。基礎をしっかり学んで、さまざまな問題に応用できる学生は、累積的な学習をしている。これが、エフォートレスのしくみ化だ。

 累積的な成果を得ようと思うなら、原理原則に目を向けなければならない。知識の累積的な成果を得るために、まずやるべきことは、他の人から学ぶことだ。だが最終的な目標は、自分だけの知識を見つけだし、伸ばしていくことである。

 他人にとっては難しいのに、自分にとって簡単なことはないだろうか?今ある知識を土台にして、誰よりもうまく学べそうな分野はないだろうか?そういうものを見つければ、自分だけのユニークな知識を創造することが可能になる。独自の知識を得るには、時間と努力が必要だが、一度投資すれば、一生にわたってチャンスを引き寄せることができる。

 極端に複雑な作業をしていると、認知的負荷が過大になり、ミスを起こしやすくなる。必要なのは知識を増やすことではなく、ワーキングメモリに負担をかけない新たなやり方を探すことだ。

 ひとつの戦略は、チェックリストだ。チェックリストを使えば、考える作業が事前に完了する。その場その場で判断しなくても、毎回正しく実行できる。重要なことを自動化するためには、こうしたローテクなやり方が意外と役に立つ。

 チェックリスト以外にも、タスク管理ソフトを使って、1日の仕事の優先順位を明確にする、週次ミーティングのアジェンダを書きだし、重要なトピックを忘れないようにするなど、いろいろ応用は可能だ。

 自動化とは、できるだけ人間の力を必要とせずに機能を実行することだ。洗濯機や食器洗浄機、冷蔵庫だって一種の自動化だ。自動化のツールはどんどんスマートになっている。日々の重要なタスクを自動化するために費やす努力は、後に大きな利益を繰り返しもたらしてくれる。

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