『イノベーションの再現性を高める 新規事業開発マネジメント―不確実性をコントロールする戦略・組織・実行』
(北嶋貴朗/著)

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  • 目次
 近年、経営環境の変化による本業消失やコロナ禍による危機など、企業規模を問わず新規事業やイノベーション創出が必要とされている。だが、そもそもすでに存在する企業内での新規事業開発においては、既存事業側からの反発や社内決裁の煩雑さ、調整事項の多さなど、スタートアップと異なる困難に直面することも多い。

 本書では、安定した収益を上げる既存事業が存在する企業における新規事業に主眼を置き、まず多くの企業内新規事業がうまくいかない理由を解き明かす。その上で、成功確率を高めるための戦略策定や実行、組織開発や人材育成などを詳細に解説し、不確実性をコントロールする新規事業開発プロセスとマネジメント手法を明らかにする。

 著者は業界トップクラスの新規事業開発支援の実績を持つ株式会社 Relic代表取締役 CEO/Founderで、これまで約 2,500社、12,000の新規事業のプロジェクトやプラン・アイデアに携わってきた人物。企業規模を問わず、経営層や新規事業開発に携わる方はぜひご一読いただきたい。

著者:北嶋 貴朗(Kitajima Takaaki)
 株式会社Relic代表取締役CEO|Founder。1986年、東京生まれ。父親の仕事の都合で全国を転々とする幼少期を過ごした後、埼玉県に定住。埼玉県立川越高等学校を経て、2008年に慶應義塾大学を卒業後、組織/人事系コンサルティングファーム、新規事業に特化した経営コンサルティングファームにて中小・ベンチャー企業から大企業まで幅広い企業の新規事業開発や組織変革を支援。その後2013年、ITメガベンチャーであるDeNAに入社。新規事業開発や事業戦略/事業企画の立案、大企業とのオープンイノベーションのマネジャーとして数々の事業の創出から成長までを担う責任者を歴任。2015年に株式会社Relicを創業し、現職。5年間で約2,500社・12,000の新規事業開発を支援するなど、業界トップクラスのシェアと実績を持つ企業への急成長を牽引する一方で、ITスタートアップ企業としても国内シェアNo.1のプロダクトを複数立ち上げる。企業の新規事業創出プログラムやアクセラレーションプログラム等でのアドバイザー・メンター・審査員としての活動や、有望なベンチャー・スタートアップ企業への出資・経営支援も行うなど多方面で活動。
第1章 なぜ今、新規事業やイノベーションが必要なのか?
第2章 新規事業開発は、なぜうまくいかないのか
第3章 いかにしてビジョンを描き、新規事業開発の方針や戦略を策定するか
第4章 良質な新規事業への挑戦を量産できる組織を作る
第5章 不確実性をコントロールする新規事業開発プロセスとマネジメントとは
第6章 新規事業を構造的にグロースさせるための理論と実行
第7章 先進的企業の「イノベーション・エコシステム」と「インキュベーションの民主化」が創る日本経済の未来

要約ダイジェスト

企業の新規事業開発がうまくいかない3つの理由

 ここ数年、日本ではこれまでにないほど企業における「新規事業」や「イノベーション」の必要性が声高に叫ばれている。しかし、実際のところ、「新規事業開発がうまくいっている」と断言できる企業は極めて少数派だ。

 特に企業内新規事業開発は、注目を集めて勢いに乗るスタートアップ・ベンチャー企業と比較して揶揄されることも多く、またさまざまな制約や条件から、表に出ている成功例は非常に稀であるといわざるを得ない。

 スタートアップとは異なる、大企業や一定の経営資源を保有する企業における企業内新規事業開発がうまくいかない構造的理由は、大きく次の3つに分類できる。

1.ビジョンや新規事業開発に関する方針・戦略がない
 多くの企業が中長期的なビジョンや、それを実現するために「なぜ新規事業に取り組む必要があるのか?」「自社にとって必要な新規事業の定義とは何か?」「新規事業開発にどのように取り組んでいくべきか?」という全社的な方針や戦略を定めていない。

 だが、それこそが新規事業開発の進捗を阻む大きな課題の1つだ。全社的な方針や戦略が定義されていなければ、自社に必要な新規事業の領域や要件を検討するための「判断軸」がなく、良い事業構想を練ることができないのだ。

2.良質な「多産多死」を実現するための組織になっていない
 仮に全社的なビジョンや新規事業開発の方針や戦略が策定されていたとしても、それを高いレベルで実行し続け、良質な「多産多死」を実現するための組織や人材がなければすべては絵に描いた餅で終わる。

 新規事業と既存事業では、組織に関する考え方も180度異なる。例えば、多くの企業は既存事業に最適化された人事や評価の制度、仕組みの中で新規事業活動を評価してしまうが、

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