『人間愚痴大全』
(福田智弘/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
「愚痴」とは言っても仕方がないことを言って嘆くことであり、ネガティブかつ非生産的な印象がある。しかし、誰しも仕事やプライベート上の問題などで愚痴を言いたくなる時があり、実際にストレス発散効果のようなものが感じられるのもまた事実である。歴史に名を遺す偉人や武将、文豪などの著名人もそうであったようだ。

 本書では、夏目漱石、芥川龍之介といった作家からベートーヴェンなどの芸術家、豊臣秀吉などの武将、政治家、渋沢栄一などの実業家まで、著名人たちの愚痴を発言年代別に 150篇収録。愚痴が発せられた文脈やエピソード、人物像なども詳しく解説され、著名人たちがどん底の逆境に対してどう対処したのかを学ぶ処方箋にもなっている。

 他人の愚痴はなるべく聞きたくないという人も、彼らの逆境やどうしようもない愚痴を読み進めるうちに、人間臭さや親近感を感じ、なぜか勇気とやる気がわいてくる不思議な読後感を味わえるはずだ。モチベーション不足に悩んでいる人などはぜひご一読いただきたい。著者は歴史、文学関連を中心に執筆活動を行っている作家。

著者:福田 智弘(Fukuda Tomohiro)
 1965年埼玉県生まれ。東京都立大学卒。歴史、文学関連を中心に執筆活動を行っている。おもな著書に『ビジネスに使える「文学の言葉」』(ダイヤモンド社)、『世界が驚い たニッポンの芸術 浮世絵の謎』(実業之日本社)、『よくわかる! 江戸時代の暮らし』(辰巳出版)などがある。
第1章 20代までの愚痴
第2章 30代の愚痴
第3章 40代の愚痴
第4章 50代の愚痴
第5章 60代からの愚痴

要約ダイジェスト

「新聞小説を書くことが、しみじみ嫌になる」菊池寛(小説家)

「父帰る」などで有名な文学者・菊池寛には、『私の日常道徳』という小文がある。その中に「約束は必ず守りたい。人間が約束を守らなくなると社会生活は出来なくなるからだ。従って、私は人との約束は不可抗力の場合以外破ったことがない」という項目がある。

 一見、立派なことが綴ってあるのだが、この文章には続きがあって、彼にも「ただ、時々破る約束がある」というのだ。それは「原稿執筆の約束だ」と告げた後、「これだけは、どうも守り切れない」と、もはや開き直りともとれる愚痴を述べている。

 彼が最も手を焼いたのは新聞小説だったようだ。『新聞小説難』という別の小文では「新聞小説ほど骨の折れる仕事はない」「一日の働く時間は、全部その方に取られてしまい、他の仕事は何にも出来なくなる」「非難のハガキなどを貰うと、新聞小説を書くことが、しみじみ嫌になる」などと、愚痴のオンパレードなのである。

 しかし、菊池が、このような小説家の苦労を知っている人間であり、かつ原稿執筆以外の約束は守るような人間だからこそ、「文壇の大御所」となりえたのだろう。数々の小説や戯曲を発表しただけにととどまらず、「文藝春秋」の創刊や芥川賞、直木賞の創設、劇作家協会や小説家協会の設立など、彼が文壇に残した功績はあまりに大きいのだ。

「アレクサンドロスが世界を制覇した歳になったのに、自分は何もしていないじゃないか!」カエサル(政治家)

 人は30歳前後になると、これまでの人生を振り返り、自身の現状を嘆いたりするものであるようだ。ローマをつくった英雄、カエサルでさえそうであった。アレクサンドロス大王の像を前にしてカエサルが語ったとされるのが、上記の言葉である。

 ギリシャの北方にあるマケドニアの地に生まれたアレクサンドロスが、父王の死後、王の座に就いたのが 20歳の時。それから東方遠征をはじめ、大国ペルシアを破り、エジプトからインドに至るまでの大帝国を築いたのが、ちょうど 30歳の年だった。

 カエサルの愚痴は、単にアレクサンドロスと比較しただけではなかった。同時代のローマのポンペイウスは、シチリアやアフリカでの軍事行動で功績を挙げ、

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