『無(最高の状態)』
(鈴木 祐/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 近年、生きづらさや不安を抱えて生活を送る人が急増している。日本における 10~39歳の死因の1位は「自殺」であり、世界的に見ても、一生の間に鬱病や不安症にかかる人が3割を超える国は珍しくない。このようなストレス社会に対応するための方法を説く記事や書籍は多い。だが、それらは根本的な解決につながっているとは言い難い。

 本書では、精神科学や脳科学による研究、仏教や哲学の知恵から人間の「苦しみ」が生まれるメカニズムを知り、「最高の状態」すなわち人間が生まれながらに持つ能力を最大限発揮できる状態への道筋を示す。最新の科学的知見から「自己」や「無我」の境地の正体に迫り、悩みや苦しみに対処する実践的なワークが数多く収録されているのが特長だ。

 著者は10万本の科学論文の読破や 600人以上の専門家インタビューをもとに、生産性向上やヘルスケアをテーマとした書籍や雑誌の執筆を手がける気鋭のサイエンスライター。ストレスの根本的解決法について知りたい方や、心身の健康やマインドフルネスに興味関心がある方はぜひご一読いただきたい。

著者:鈴木 祐(Suzuki Yu)
 サイエンスライター。1976年生まれ。慶應義塾大学SFC卒業後、出版社勤務を経て独立。10万本の科学論文の読破と600人を超える海外の学者や専門医へのインタビューを重ねながら、現在はヘルスケアや生産性向上をテーマとした書籍や雑誌の執筆を手がける。自身のブログ「パレオな男」で心理、健康、科学に関する最新の知見を紹介し続け、月間250万PVを達成。近年はヘルスケア企業などを中心に、科学的なエビデンスの見分け方などを伝える講演なども行っている。著書に『最高の体調』『科学的な適職』(クロスメディア・パブリッシング)、『不老長寿メソッド』(かんき出版)など。
序 章 苦
第1章 自己
第2章 虚構
第3章 結界
第4章 悪法
第5章 降伏
第6章 無我
終 章 智慧

要約ダイジェスト

自己

「苦しみ」は、“不足”を知らせるメッセンジャーだ。このような機能は、人類進化のプロセスで形作られてきた。「恐怖」は私たちに外敵から身を守る行動をうながし、「喜び」は食料や生殖の機会を逃さぬ気持ちを駆り立てる。集団生活を始めると、今度は「恥」「嫉妬」「愛情」といった「社会的感情」と呼ばれる新機能をインストールした。

 生物が生き抜く過程では、ある程度の苦しみは避けられない。捕食者の襲撃、天候不順による飢え、予期せぬ病気など、さまざまな苦境は誰にも等しく訪れる。これが“一の矢”だが、多くの人はここで“二の矢”を放ってしまう。

 最初の矢に反応した脳がさまざまな思考を生み、そこに付随して表れた新たな怒り、不安、悲しみが次々とあなたを貫き、いよいよ苦しみは深まっていくのだ。例えば、上司が理不尽な文句をつけてきたことに対し(一の矢)、「自分が悪かったのか、それともあの男がリーダー失格なのか」などと思い悩む(二の矢)。

 このように最初の悩みがまた別の悩みを呼び込み、同じ悩みが脳内で反復される「反芻思考」のダメージは計り知れない。反芻思考は、複数のメタ分析で鬱病や不安障害との強い相関が出ているほか、反芻思考が多い人ほど心臓病や脳卒中にかかるリスクが高い傾向も報告されている。

 これらの問題を煎じ詰めれば、「自己」に行き着く。苦しみが長引く場面には必ず自己が関わり、目の前に存在しない過去と未来の脳内イメージがあなたを“二の矢”で貫く。

 過去にも多くの哲学者や宗教家が「自己をどう考えるか?」との疑問と格闘してきたが、ここ数年の認知科学や脳科学で、自己とは、特定の機能の集合体にすぎないというアイデアが生まれた。

 例えば、「どの仕事から手をつけるべきか?」と考えた場合は、主に前頭前野皮質や海馬の神経ネットワークに「わたし」の感覚が生まれ、

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