- 本書の概要
- 著者プロフィール
本書は、SDGsの先にある多様性あるデータ社会やビジネスの未来像について、気鋭の論客3名が語りつくした鼎談集である。語られるテーマは「DX」「経済」「社会」「幸福」「国家」「価値」「つながり」など幅広く、抽象と具体的事例を行き来しながら本質に迫っている。一読すれば、自身の未来の生き方やビジネスのヒントが多数得られるはずだ。
著者の尾原和啓氏はマッキンゼー・アンド・カンパニー、NTTドコモ、リクルート、Google、楽天などを経て現在は IT批評家。宮田裕章氏は、慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室教授で、専門はデータサイエンス、科学方法論。山口周氏は電通、ボストン・コンサルティング・グループなどを経て、独立研究者、著作家、パブリックスピーカー。
1970 年生まれ。京都大学大学院工学研究科応用システム専攻人工知能論講座修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、NTT ドコモの i モード事業立ち上げ支援、リクルート(2回)、ケイ・ラボラトリー(現:KLab、取締役)、コーポレイトディレクション、サイバード、電子金券開発、オプト、 Google、楽天(執行役員)の事業企画、投資、新規事業に従事。経済産業省対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザー等を歴任。著書に『アフターデジタル』(共著、日経 BP)、『ITビジネスの原理』(NHK出版)、『モチベーション革命』(幻冬舎 NewsPicks book)、『プロセスエコノミー』(幻冬舎)など多数。山口周氏との共著に『仮想空間シフト』(MdN 新書)がある。
宮田裕章(Miyata Hiroaki)
1978 年生まれ。東京大学医学部健康科学科卒業。慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室教授。専門はデータサイエンス、科学方法論。2003年、東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻修士課程修了。同分野保健学博士(論文)。2015年より現職。専門医制度と連携した NCD、LINE×厚生労働省「新型コロナ対策のための全国調査」など、科学を駆使し社会変革を目指す研究を行う。 2025 年日本国際博覧会(大阪・関西万博)テーマ事業プロデューサーのほか、厚生労働省 保健医療2035 策定懇談会構成員、厚生労働省 データヘルス改革推進本部アドバイザリーボードメンバーなど。著書に『共鳴する未来』(河出新書)、『データ立国論』(PHP 新書)がある。
山口周(Yamaguchi Shu)
1970 年生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科、同大学院文学研究科修士課程修了。独立研究者、著作家、パブリックスピーカー。電通、ボストン・コンサルティング・グループ、コーン・フェリーヘイグループ等で企業戦略策定、文化政策立案、組織開発に従事。現在、株式会社ライプニッツ代表、株式会社中川政七商店、株式会社モバイルファクトリー社外取締役。『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 』(光文社新書)でビジネス書大賞 2018 準大賞、HRアワード2018 最優秀賞(書籍部門)を受賞。その他の著書に、『ニュータイプの時代』(ダイヤモンド社)、『ビジネスの未来』(プレジデント社)、『自由になるための技術』 リベラルアーツ(講談社)などがある。
Chapter1 DXは世界をどう変えたのか
Chapter2 私たちはネットの中でつながっている
Chapter3 「生きる」をリ・デザインする
Chapter4 世界はどこに向かうのか
Last Chapter 「進化するDX」後の世界
要約ダイジェスト
「一回性」にとらわれた社会からの転換
宮田 新型コロナウイルスの影響は「いかに経済と命のバランスをとるか」や「弱いところにしわ寄せがいく」という現代社会の構造的課題を浮き彫りにした。そこから、既存の資本主義が転換期を迎え、新たな社会システムが必要という示唆を受け取ることができる。
私はその新たな社会システムを、データの利活用によって多元的な価値への対応を可能にする「データ共鳴社会」と表現している。誰ひとり取り残さず、ひとりひとりに寄り添いながら、「個別化」や「包摂」を実現する社会のあり方だ。
そのことについて、日本のデジタル庁創設に向けた方針を検討するワーキンググループでは、「最大多数の最大幸福から最大“多様”の最大幸福へ」と提案している。
日本にはマスクや給付金、ワクチンなど、新型コロナウイルスが突きつけたデジタル化の課題が山積している。DXという言葉は主にビジネスの文脈で普及しつつあるが、その本質である「体験価値を問い直すこと」は未だ道半ばなのだ。
尾原 取りこぼす人を減らすというのは、公害を作ってでも一部を進化させた方が得を見るというこれまでの社会から、むしろ全部つながっているために、取りこぼされた人が機会をつかめるようにしてあげた方が社会全体も良くなる、という発想だ。
それについて、中国で広く普及しているタクシーの配車サービス「DiDi」の例がある。もともと中国のタクシーは乗車拒否や遠回りなどが当たり前だった。そこで、DiDiのような配車サービスが出てきて、いわゆる「ドライバースコア」が高ければさらにお金がもらえる仕組みに設計し直した。
スコアの測定には、スピードの適切さ、急ブレーキ・急発進など危険な運転の度合い、さらには