『格差と分断の社会地図』
(石井光太/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 日本でも格差社会が広がっていると見聞きする機会が多くなった。特にコロナ禍であらゆる格差が顕在化し、社会が分断されたと感じることも少なくないだろう。だが、大半の人は自分が生きてきた世界以外は想像ができない。同じ年齢、同じ出身地でも、階層によって見える世界がまったく違っているのだが、そこに気づくことができないのだ。

 本書は、多くの人が見過ごしてしまう日本の貧困や格差、分断のリアルを、統計データと地道な取材に基づく現場の声によって描き出した一冊だ。所得、職業、男女、家庭、国籍、福祉、世代といった格差の背景にある日本の歴史と現状を明らかにし、格差を乗り越えるための方法を「Suggestion」の形で提案している。

 著者は国内外の貧困、児童問題、事件、歴史などをテーマに取材、執筆活動を行うノンフィクション作家。「16歳からの」というサブタイトルにあるように、10代の読者にもわかりやすく読みやすい文章と構成になっている。格差と分断、人口減少や地方衰退など、今後の日本の社会課題を案じる方はぜひご一読いただきたい。

著者:石井 光太(Ishii Kota)
 1977(昭和52)年、東京生まれ。国内外の貧困、児童問題、事件、歴史などをテーマに取材、執筆活動を行なっている。ノンフィクション作品に『絶対貧困』『遺体』『浮浪児1945-』『「鬼畜」の家』『43回の殺意』(以上、新潮社)、『物乞う仏陀』『神の棄てた裸体』『本当の貧困の話をしよう』(以上、文藝春秋社)、『人生の歩きかた図鑑』(日本実業出版社)など多数。また、小説や児童書も手掛けている。
はじめに―未来を担う君たちへ
講義1 日本の格差はいかにつくられるか―所得格差
講義2 弱者を食い物にする社会―職業格差
講義3 男と女の不平等史―男女格差
講義4 格差と分断の爆心地「夜の街」―家庭格差
講義5 移民はなぜギャングになるのか―国籍格差
講義6 障害者が支援をはずされるとき―福祉格差
最終講義 高齢者への「報復」は何を生み出すのか―世代格差
おわりに─どんな未来に生きたいのか

要約ダイジェスト

無理解の先にある衝突

 日本社会は、格差という地雷に埋めつくされている。教育格差、世代間格差、医療格差、国籍格差、地域格差、男女格差、職業格差…、だが日本のそれは、もはや格差という言葉では表しきれないほど深刻になりつつある。

 それが、分断だ。同じ社会に生きていても、人々は格差にもとづく階層ごとに断ち切られ、それぞれにとって見える世界がまったく別のものになっている。

 社会問題を取り扱うノンフィクションを数多く手がけ、いろんな現場に赴いてきた経験からつくづく感じるのは、大半の人たちは自分が生きてきた世界しか知らず、それ以外は想像さえできないということだ。

 近年は、同じ地域で生活していてもまとまりが細分化され、生活が切り離されてしまっている。富裕層の子供たちは、遅くても中学校から私立の一貫校に入り、共通のファッションや趣味や夢を持ち、似たような社会的地位につく。

 一方、低所得の家庭の子供は公立の小中学校へ進み、高卒など低学歴で社会に出る傾向にある。彼らは似たような学歴、収入、趣味の友達とくっつき、遊びから結婚までほとんどをそこで完結させる。

 両者は、同じ地域に住みながら乗っているレールがまったく違うので、接点がないに等しい。だから相手のことを理解することができず、何かあれば「貧しいのは努力していないからだ」とか「金持ちは不当に富を独占している」と自分の想像だけで相手のイメージをつくり上げるので、距離は開くばかりになる。

 無理解の先にあるのは、衝突だ。それは、すでに格差が“分断”へと行きついた諸外国を見れば一目瞭然だ。アメリカでの格差は「白人/マイノリティー」に留まらず、

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