- 本書の概要
- 著者プロフィール
遺伝的要因はその最たるものだが、幼児期の経験や仕事のストレスといった環境要因も、大きな影響を及ぼしているという。本書では、これまで見過ごされがちだった、心と体の両面から肥満問題に向き合い、リバウンドしてしまう背景や、ジャンクフードに依存するメカニズムなど、減量の科学的な「正解」を説く。
子どもの生育環境と肥満リスクの関連性にも言及しており、子育て世代にも大いに参考になる内容となっている。体重管理に悩まれている方はもちろん、子育てに関わる方にもぜひご一読いただきたい。著者はスウェーデンを代表する肥満研究者で、世界各地でストレスや体重管理についての講演を行う人物。
1973年生まれ。スウェーデンを代表する肥満研究者のひとり。ブリストル大学(イギリス)にて運動健康科学の博士号、カロリンスカ研究所(スウェーデン)での肥満研究で医学博士号をそれぞれ取得。2010年から2015年まで、カロリンスカ研究所附属大学病院の肥満センターにて研究グループ代表と代謝分野に関する講師(イギリスの准教授相当)を務めた。世界各地の学術会議に招かれ、肥満原因の社会的・心理的要因や、ストレス、精神疾患、体重管理について講演を行っている。現在は、ストックホルム体育大学(GIH)の研究員。
訳者:下倉亮一(Shitakura Ryoichi)
千葉大学法経学部卒、信州大学大学院修了(経済学修士)。専門はスウェーデン経済史。共訳書に『スティーグ・ラーソン最後の事件』(ハーパーコリンズ・ジャパン)、『つけ狙う者』(扶桑社)がある。
1章 なぜダイエットは「失敗」する?
2章 肥満には「種類」がある
3章 体重は「セットポイント」に戻る
4章 「根本」を解決する
5章 「サイン」をしっかりつかむ
6章 「重圧」をはね返す
7章 「スーパージャンクフード」はものすごく悪い
8章 「リバウンド」をなくす
要約ダイジェスト
減量は「意思の強さ」と無関係
ダイエットの失敗は意思の弱さに原因があると言われがちだが、大きな誤解だ。体重の増減にはさまざまな要因が重なっていて、その多くは意思とは無関係である。そこには個人差もあり、それが長期間の減量維持をはばんでいる。
水分バランスや呼吸、体温を調節するように、人の体は体重をコントロールする。しかし、これは必ずしも遺伝学的・生物学的のみの問題ではなく、ほかの要因も遺伝子と一緒になって体重に影響を及ぼす。
こうした要因には、食事の内容や運動習慣のように、自分の意思でコントロールできるものもあれば、意思の及ばないものもある。例えば、穏やかで愛情に恵まれた家庭で育ったか、騒々しい環境で愛情に恵まれず育ったかといったことは、肥満に大きくかかわる。
このように、体重の問題を総合的にとらえた情報はきわめて少ない現状がある。だが理想の体重を手に入れるには、体の仕組みと、体重を維持するのに必要な知識を理解しなければならない。
私たち人間には、特殊な能力が備わっている。事実、生まれたばかりの人間の脂肪量は、哺乳動物のなかでトップクラスだ。つまり、脂肪を蓄えることにおいては、人間は生理学的に優等生なのである。
脂肪は大きなエネルギー源になり、とくに乳幼児にとっては生命維持の手段としてたいへんすぐれている。体温を維持し、重要な内臓器官を外部の衝撃から守り、脳に大量のエネルギーを供給する。脂肪があまりに少ないと、繁殖力の低下やホルモンバランスの悪化を引き起こす可能性もある。つまり、体が減量に抵抗するのは当然のことなのだ。
一般的に「ダイエット」といえば、食欲に抵抗して食事を制限することを意味する。しかし、残念ながら、減らした体重をその後も維持できる人は非常に少ない。食事制限によるダイエットは、楽しくもなければ、効果も見込めない方法なのだ。
食事制限に比べて、「本当に効果のあるダイエット」には重要なポイントがある。十分な満腹感を得ることができれば、