『プロセスエコノミー―あなたの物語が価値になる』
(尾原和啓/著)

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  • 著者プロフィール
  • 目次
 近年、経済のグローバル化やインターネットの発達で、ほとんどの製品やサービスの機能が発売後すぐに模倣され、差別化がしにくくなっている。その突破口となり得る概念が、本書で提唱される「プロセスエコノミー」だ。これは文字通り、アウトプット(最終製品)ではなく、プロセス(制作過程)自体が価値を生むという考え方である。

 例えば、クラウドファンディングやアイドルのオーディション番組などでは、製品の完成やデビューまでのプロセスを公開することで、顧客コミュニティを巻き込んでいく。そうすることで、完成品のコピーによる埋没や安売り競争に巻き込まれることが減り、結果的に差別化が図れるのだ。

 本書では、今まさに立ち上がりつつあるプロセスエコノミーの全体像や事例、ビジネスへの実装方法などを網羅的に解説。差別化に頭を悩ませる経営層や製品開発担当者などはぜひご一読いただきたい。著者は IT批評家で、リクルート、グーグル、楽天など多くの企業で新規事業に従事し、経済産業省対外通商政策委員などを歴任。

著者:尾原和啓(Obara Kazuhiro)
 IT批評家。1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科応用人工知能論講座修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーにてキャリアをスタートし、NTTドコモのi モード事業立ち上げ支援、リクルート、ケイ・ラボラトリー(現:KLab)、コーポレートディレクション、サイバード、電子金券開発、リクルート(2回目)、オプト、グーグル、楽天(執行役員)の事業企画、投資、新規事業に従事。経済産業省対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザーなどを歴任。
 著書に、『IT ビジネスの原理』『ザ・プラットフォーム』(共にNHK 出版)、『モチベーション革命』(幻冬舎)、『どこでも誰とでも働ける』(ダイヤモンド社)、『アルゴリズム フェアネス』(KADOKAWA)、共著に『アフターデジタル』『ディープテック』(共に日経BP)などがある。
第1章 なぜプロセスに価値が出るのか
第2章 人か゛プロセスに共感するメカニズム
第3章 プロセスエコノミーをいかに実装するか
第4章 プロセスエコノミーの実践方法
第5章 プロセスエコノミー実例集
第6章 プロセスエコノミーの弊害
第7章 プロセスエコノミーは私たちをどう変えるか

要約ダイジェスト

プロセスエコノミーとアウトプットエコノミー

 今や「良いもの」を作るだけではモノが売れない時代になった。インターネットによって一瞬で情報が行き渡って、一瞬でコピーできるようになったので、どれもこれも似たり寄ったりの機能、性能になりやすい。

 どこかが新技術を開発しても新興国の後発メーカーがすぐに台頭してきて、安売り競争になる。これは個人のクリエイターでも同じで、YouTubeや Instagramのスタイルはひとたびはやると、どれも似たようなものであふれてしまう。

 このような人もモノも埋もれる時代の新しい稼ぎ方が、プロセス自体を売る「プロセスエコノミー」だ。なぜならプロセスはコピーできないからだ。自分のこだわりを追求する姿、様々な障壁を乗り越えながらモノを生み出すドラマはその瞬間にしか立ち会えない。

 本当に自分がやりたいことをやって、作りたいものを作って生きていくために、プロセスエコノミーは強力な武器になるのだ。「プロセスエコノミー」をわかりやすく理解するために、まず逆の概念「アウトプットエコノミー」を考えてみよう。

 アウトプットエコノミーは、「プロセスでは課金せずに、アウトプットで課金する」ものである。例えば、できた音楽を売る、できた映画を売る、できた料理を売るなど、普通の人が考える、極めて一般的な商売の仕方だ。

 アウトプットエコノミーでは、製品の品質や流通価格、マーケティングなどがポイントになる。品質にそこまで差がないなら、マーケティングや流通、ブランディングにお金をかけられるほうが強くなるからだ。結果として、勝ち組のプロダクトはより勝ち、格差が広がっている。

 このようなアウトプットエコノミーが一定の規模まで到達したことで、もう差別化するポイントがプロセスにしかない状況になってきた。それゆえ、洋服を作るプロセスだったり、プロセスにおける物語だったりが、相対的に重要になっているのだ。

 プロセスに価値が出てきたことで、プロセス自体に課金するという動きも出始めている。例えばマンガ家なら、

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