『人間主義的経営』
(ブルネロ・クチネリ/著)

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  • 著者プロフィール
  • 目次
 イタリアの高級アパレルブランドとして世界的に評価が高いブルネロ・クチネリ。同社は目先の利益ではなく、人間の尊厳や自然との調和に重きを置く「人間主義的経営」を実践する企業としても世界の経営者から注目を集めている。本書は同社創業者ブルネロ・クチネリ氏が、その経営哲学と思想的背景を包み隠さず明らかにした一冊だ。

 同氏は「人間を大切にする」を人として、また企業としての指針として、創業間もなく人口500人の小さな村に本社を移し、廃墟となっていた古城の修復、工芸学校の設立など、地域再生と企業の経済的成長の両立を実現した。一読すれば、今叫ばれている「持続可能な経営」を数十年も前から確固とした哲学に基づいて実践していたことに驚くだろう。

 著者は 1978年カシミヤを染める小さな会社ブルネロ・クチネリを設立し、2012年ミラノ証券取引所に上場。「人間主義的資本主義」を掲げた経営とソロメオ村修復の取り組みはイタリア国内外から高く評価され、数々の勲章や権威ある賞を受けている。未来の経営のあり方を考えたい経営層はぜひご一読いただきたい。

著者:ブルネロ・クチネリ(Brunello Cucinelli)
 1953年カステル・リゴーネ(ペルージャ市)の農家に生まれる。1978年カシミヤを染める小さな会社を設立し、当初から「経済的倫理的な側面における人間の尊厳」を守る労働という理想を掲げる。1982年以来、ソロメオ村は彼の夢を実現する場所となり、人文主義者として、また企業家として、数多くの成功を生みだす工房となる。3年後、クチネリは村の崩れかけた城を買取り、そこに彼の会社を置く。
 2000年会社の成長に伴う生産施設増設のためにソロメオ村近郊の工場を買取り、改修。情熱を持ってソロメオ村の修復に取り組み、文化と美と出会いに捧げる「学芸の広場」を建設する。2012年ミラノ証券取引所に上場。同年ソロメオ村に「職人工芸学校」創設。その「人間主義的資本主義」によりイタリア国内外から数々の勲章や権威ある賞を受けている。イタリア共和国労働騎士勲章、ペルージャ大学哲学・人間関係倫理学名誉学位、キール世界経済研究所経済賞、イタリア共和国大十字騎士勲章など。

訳者:岩崎 春夫(Iwasaki Haruo)
 HOP株式会社 代表取締役COO。1979年三井物産に入社。35年にわたり、繊維製品の輸入・国内営業、事業投資、大型投資案件の審査、内部監査等の業務に従事。この間、香港子会社社長、イタリア三井物産社長、在イタリア日本商工会議所会頭、内部監査部検査役等を歴任。
 2014年、老舗の中堅企業寺田倉庫に移り、常務取締役COOとして同社の変革に当たった後、2018年に元同僚の畑と HOP株式会社を設立。「強く美しい会社を創る」を目標にベンチャー企業や世代交代期を迎えた企業を対象とする人と組織の基盤作りを行う他、人事と経営の本質を学ぶ学校「人事の寺子屋」を運営するなど、これからの社会に相応しい価値を提供する企業と人材作りに取り組んでいる。2020年より植物工場事業を展開する株式会社ファームシップの取締役COOとしてベンチャー企業の経営基盤強化に当たっている。

序文
ソロメオ、精神の宿る村
幼年時代
私の心の大学
カシミヤの彩り
世界へ
親愛なる匠たち
輝く未来
創造物との対話
心の中の揺るぎないもの
日々の印象

要約ダイジェスト

人間の尊厳のために働く

 人間を大切にすること。人として、企業家としての私の指針はここにある。人間の尊厳は私にとって絶対的な価値基盤であり、来るべき社会の希望はここから生まれると確信している。

 人間の尊厳のために働くなど雲をつかむような話だと感じるかもしれないが、人間の尊厳を守るために働くことは誰でもできる。それは何か目に見える結果を出すのではなく、いかに行動するかという問題だからだ。

 私は 25歳の時に、現代的な色彩を特徴とする女性用のカシミヤセーターを作ろうと決めた。高度な手仕事と職人技に支えられたイタリアらしい服、最高級の市場セグメントに的を絞り、高価ではあるが価格以上の価値を持つ製品を作る。そんな考えが明確になっていった。

 天の創造物である自然を痛めず、可能な限り自然への負荷を小さくする。そのように生産されたものにこそ貴重な価値があると考えていた。思い描いたのは消費者と生産者の双方にとって価値のある手作りの製品、美しい労働環境、リラックスできる快適な休息時間、手仕事の価値が隅々まで行き渡った会社の文化だった。

 誇りを感じて穏やかに生きていくためには、互いを敬い、真実を重んじる人間関係と、経済的に十分な所得が必要だ。そのためには創造性を育む静謐な職場環境が必要だった。

 事業を始めた時のエネルギーは無知と本能だけだった。創業当初の成功はささやかなものだったが、私にとっては特別なものだった。そしてペルージャ郊外にあった小さな工場の移転を計画し、候補先として妻の故郷であるソロメオ村が頭に浮かんだ。

 この小さな古い村が衰退していく様子に私はずっと心を痛めていて、ある日、本能的にこの村の中世の古城を購入することを思いついた。町の中心の、歴史を身にまとったこの建物は、様々なインスピレーションを生み出す永遠の存在であり、自分の小さな会社の本社を置くのに最適の場所だと考えたのだ。

 城を購入したことで3つの構想に実体を与えることができた。それは、いにしえの魅力をたたえた美しい場所で働くこと、無機的な工業建築物の代わりに歴史遺産という大切な資産を銀行に担保として預け、

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