『THE HUNGRY SPIRIT これからの生き方と働き方』
(チャールズ・ハンディ/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 近年、格差の拡大や金融市場の不安定さなど、資本主義経済の限界やゆがみを批判する声が高まってきている。こうした問題に対し、1997年時点で警鐘を鳴らしていたのが本書だ。20年前の発行とは思えないほど現在の資本主義のゆがみの本質をついているだけでなく、むしろその問いかけの普遍性が際立つものとなっている。

 著者は本書で「資本主義はあくまで手段であり、何を目的にするのかは私たち自身が決めるべきである」と述べ、そのためには個々人が自分の「人生の意味」を探求することこそが重要であると説く。それは偏狭な利己主義的なものではなく、それゆえ「生き方」や「働き方」、さらには企業や社会のあり方までをも規定するのだ。

 著者のチャールズ・ハンディはイギリスのドラッカーと称される欧州を代表する経営哲学者で、世界の経営思想家ランキング「Thinkers 50」生涯功労賞も受賞している。生き方や働き方を見つめなおしたい方はもちろん、これからの企業や政治経済のあり方に興味関心がある方もぜひご一読いただきたい。

著者:チャールズ・ハンディ(Charles Handy)
 イギリスのピーター・ドラッカーと称される、欧州を代表する経営哲学者。世界の経営思想家ランキング「Thinkers 50」のLifetime Achievement Award(生涯功労賞)をヘンリー・ミンツバーグ、マイケル・ポーターに先駆けて受賞した。
 オックスフォード大学を卒業後、シェル石油のマーケティング部門や人事部門でエグゼクティブとして従事した後に、アングロアメリカンにおいてエコノミストに就任。その後、マサチューセッツ工科大学(MIT)のスローンスクール・オブ・マネジメントの客員研究員となり、1967年にはロンドン・ビジネス・スクールにMITのスローンプログラムを自らの指揮のもとで導入し、同スクールで教鞭を執った。1972年にはロンドン・ビジネス・スクールの教授に、1974年には学部長に就任した後、1977年にはウィンザー城の聖ジョージ館で館長に就任し、同館の監督者として企業倫理の研究を続けた。
 その後は研究者として、行動科学の企業経営への適用、経営の変革や組織構造、生涯学習の理論と実践を主要テーマとした。ロイヤル・ソサイエティ・オブ・アーツの元会長であり、1994年には最優秀ビジネスコラムニストに選ばれた。2015年のドラッカーフォーラムではゲストスピーカーとして登壇。現在も影響力を誇っている。著書は多数。ロンドン在住。

監訳者:大嶋祥誉(Oshima Sachiyo)
 センジュヒューマンデザインワークス代表取締役。エグゼクティブコーチ、人材戦略コンサルタント。米国デューク大学MBA取得。シカゴ大学大学院修了。マッキンゼー・アンド・カンパニー、ワトソンワイアットなどの外資系コンサルティング会社や日系シンクタンクなどを経て独立。現在、経営者をはじめとするビジネスリーダーを対象に、エグゼクティブコーチング、ビジネススキル、リーダーシップ研修ほか、チームビルディング、組織変革コンサルティング、人材育成コンサルティングなどを行う。著書は『マッキンゼー流 入社1年目問題解決の教科書』(SBクリエイティブ)、『マッキンゼーで学んだ速い仕事術』(学研プラス)など多数。

訳者:花塚 恵(Hanatsuka Megumi)
 翻訳家。福井県福井市生まれ。英国サリー大学卒業。英語講師、企業内翻訳者を経て現職。主な訳書に『Appleのデジタル教育』(かんき出版)、『苦手な人を思い通りに動かす』(日経BP)、『脳が認める勉強法』(ダイヤモンド社)、『Unlocking Creativity: チームの創造力を解き放つ最強の戦略』(東洋経済新報社)などがある。

PART1 資本主義のゆがみを見つめる
 第1章 資本主義における市場の限界
 第2章 効率の追求が結果的に非効率を招く
 第3章 資本主義のあり方を見直す
PART2 自分の人生を見つめる
 第4章 個人が主体となった時代の人と企業のあり方
 第5章 誰もが持つべき正当な利己性
 第6章 生きる意味を見いだす
 第7章 他者の必要性を自覚する
PART3 これからのまっとうな社会に向けて
 第8章 よりよい資本主義を探求する
 第9章 市民で構成されるこれからの企業
 第10章 これからの正当な教育

要約ダイジェスト

資本主義のゆがみを見つめる

 資本主義が豊かさをもたらしたことは疑いようがない。だがそれと同時に貧富の差を拡大させ、働く人々のエネルギーを大量に消費している。必ずしも世界を豊かにする方向へ導いているとは、いえないのではないか?

 私は自由市場より優れた経済システムを知らないが、われわれの人生までをもビジネスにする昨今の風潮が唯一の正解とは思えない。病院や私の人生には、単にビジネスにする以上の価値がある。

 効率を追求し、その結果、資本主義、競争、市場の産物生まれる。だが、危険なのは効率を追求する熱意にある。熱意そのものがゆがみを生む恐れがあるのだ。効率を客観的にとらえなかったら、効率を高めることに夢中になりすぎて、本来の目的を忘れてしまう。

「効率的」は必ずしも「効果的」と同義ではない。例えば、日本の製造業者が考案したジャスト・イン・タイムというシステムにより、在庫にかかるコストが減少した。このシステムを使うと、工場へ部品を運ぶ配送トラックが実質的な倉庫になる。

 だが、そのトラックが原因で都市部周辺の高速道路が渋滞するようになり、公金を投じて道路の拡幅や整備が必要になった。製造業者は彼らの改善にかかったコストを国民に押しつけたのだ。

 こうしたコストに対し、経済成長の恩恵を受けるために必要な代償だと考える人もいる。だが、効率の向上にかかるありとあらゆるコストと、効率向上によるメリットを対比させることはできない。

 また、効率を追求すると社会は一部が有利になるように傾き、その他大勢は不利になる。国が効率化を進めた代償が、貧困層の相対的な増加を意味するのであれば、その代償を払うことになる人は効率化など望まないだろう。効率化は社会が存続し続けるために欠かせないが、「生きる理由」の答えを導き出させることはできないのだ。

自分の人生を見つめる

 資本主義とは本来、生きる手段の提示を目的としたひとつの考え方であり、

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