『職場の「感情」論』
(相原孝夫/著)

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  • 著者プロフィール
  • 目次
 コロナ禍を機に、リモートワークが急速に浸透した。通勤がなくなったことや、時間の融通を利かせやすいことなど、多くの人がメリットを享受する一方で、デメリットも徐々に明らかになりつつある。その1つが、コミュニケーションの問題だ。やはりオンラインのみでは良好な信頼関係を新たに構築したり維持したりすることが難しいのだ。
 
 しかし、リモートワークによる課題のほとんどは、実は元々あった問題が顕在化したものだ。著者によれば、特に働く人の「感情」をケアすることが職場の問題解決の大前提となる。そこで本書では、感情のメカニズムを解き明かし、職場のネガティブな感情に対処し、ポジティブな感情を生み出す行動のポイントを、様々な研究成果をもとに示す。

 人々の「感情」がないがしろにされる職場では、組織や会社へのエンゲージメントが損なわれ、帰属意識も低下するという。リモートであるか否かに関係なく、組織マネジメントに課題を感じている方はぜひご一読いただきたい。著者は人材の評価・選抜・育成および組織開発に関わる企業支援を専門とする人事・組織コンサルタント。

著者:相原 孝夫(Aihara Takao)
 人事・組織コンサルタント。株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長。早稲田大学大学院社会科学研究科博士前期課程修了。マーサージャパン株式会社代表取締役副社長を経て現職。人材の評価・選抜・育成および組織開発に関わる企業支援を専門とする。主な著書に、『会社人生は「評判」で決まる』『ハイパフォーマー 彼らの法則』『仕事ができる人はなぜモチベーションにこだわらないのか』などがある。
序章 なぜ、「職場の感情」がますます重要になるのか
1章 リモートワークで浮き彫りになる職場の問題
2章 ないがしろにされる職場の感情
3章 ネガティブな感情が支配する職場
4章 ポジティブな感情に満たされている職場
5章 働く人の感情を左右する5つの要素
6章 個の感情をめぐる3つのパラドックス
終章 理想的な職場の「感情」論

要約ダイジェスト

リモートワークで浮き彫りになる職場の問題

 リモートワークはコロナ禍という強力な外圧によって、強制的にしかも一気に進んだ。開始当初から2、3カ月の間は、どちらかといえば、多くの人がメリットを感じたようだが、時間が経つにつれ徐々に、問題点が顕在化してきた感がある。

 リモートワークにおけるコミュニケーション上の問題として多く聞くことの1つが、「雑談」の減少である。ウェブ会議やミーティングだと、すべてに「時間」が設定されており、アジェンダも事前に知らされている。そのため、「ちょっといいですか?」という、“ミーティングするほどでもない”相談ごとがなくなる傾向にあるのだ。

 だが「ちょっとした相談事」の中に重要事や、トラブルの芽などがかなり含まれていることは、多くの人が経験的に知っている。新しいアイデアや問題解決の糸口が出てくることも多い。

 雑談が自然にできるかどうかは、その職場が健全な状態にあるかどうかのバロメーターといっても過言ではない。雑談や声掛けの多い職場ほど、上司・部下間や同僚間の垣根は低く、現場からの情報は上がってきやすく、また流通しやすくなる。

 リモートワークで顕在化した諸問題のほとんどは、もともとあった職場の問題であり、具体的に手が打たれないまま曖昧にされてきた問題である。

 その1つが、コミュニケーションの前提となる「信頼関係」だ。直に顔を合わせる関係の中では、十分な信頼関係がなくてもなんとかなってきた面はあった。それがリモートワークとなり、コミュニケーション上の齟齬が大きく生じてきたのだ。

 また、「レジリエンス」や「エンゲージメント」なども、リモートワーク下でチームを機能させるため、その重要性が急速に増した課題である。だがレジリエンスにしても、

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