『ドイツ人はなぜ、毎日出社しなくても世界一成果を出せるのか』
(熊谷 徹/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 ドイツは日本と同様に、モノづくりで経済を支えてきた国だ。しかし、日本では「テレワークは不可能」という意見が強い「製造業」においても、デジタル化が進んでいるという。2020年のコロナ禍を経て、多くの企業でテレワークが導入され、さらにそれが通常業務の一形態として定着しつつあるのだ。それでも、日本と比べ生産性は高い。

 本書では、ドイツが出社至上主義から抜け出せた理由を、労働者・経営者・社会的慣習などの観点から論じる。経済的な豊かさ以上にオフタイムを大切にするという価値観は、働きすぎる傾向にある日本人には示唆に富むはずだ。コロナ禍が収まっても、次なる危機に備えてワークスタイルを転換することが必要とされているからだ。

 著者は、30年以上ドイツ・ミュンヘンに在住し、東西統一後のドイツの変化や、日本とドイツの働き方の違いについての書籍などを執筆してきたジャーナリスト。テレワーク導入やビジネスのデジタル化に課題を感じている経営層、日本以外の働き方や生き方の価値観に触れたい方はぜひご一読いただきたい。

著者:熊谷 徹(Kumagai Toru)
 1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、NHKに入局。ワシントン 支局勤務中に、ベルリンの壁崩壊、米ソ首脳会談などを取材。90年からはフリージャーナリストとしてドイツ・ミュンヘン市に在住。過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題、エネルギー・環境問題を中心に取材、執筆を続けている。
 著書に『5時に帰るドイツ人、5時から頑張る日本人』(小社刊)、『ドイツ人はなぜ、年290万円でも生活が「豊か」なのか』『ドイツ人はなぜ、1年に150日休んでも仕事が回るのか』(青春出版社)、『住まなきゃわからないドイツ』(新潮社)など多数。『ドイツは過去とどう向き合ってきたか』(高文研)で2007年度平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞受賞。
序章 日本を大きく上回るテレワーク比率でもドイツ人の生産性が高い秘密
第1章 ドイツではなぜ、出社しない働き方が普及したのか
第2章 「むやみに出社させない国」に進化したドイツ
第3章 「ひとりひとりがマイペースで働く権利」を保障する国
第4章 経済的な豊かさよりもオフタイムを大切にするドイツ人
第5章 人とつながり、幸せを分かち合う国・ドイツ

要約ダイジェスト

ドイツもかつては「テレワーク小国」だった

 日本企業の大部分は、「テレワークはあくまでも例外」と考えている。ドイツでは、テレワークが例外ではなく、通常の業務形態の一部になりつつある。日本と同様に、毎日出社して働くのが常識だった同国は、2020年春のコロナ禍勃発以降、テレワーク大国への道を歩みつつあるのだ。

 日本では、「製造業にはテレワークの導入は不可能」という意見が強い。しかしドイツでは、製造業も含めてデジタル化を目指すことにより、より多くの人がテレワークをできる方向に経済全体を変えようとする動きが始まっている。

 ドイツでも、コロナ禍が起きる前まで、テレワークは他の EU加盟国ほど普及していなかった。2014年の時点で、ドイツ企業に雇用されていた人の内、「毎日、もしくは時々自宅で働いている」と答えた人の比率はわずか7%前後だった。これはスウェーデン(約 26%)、デンマーク(約 24%)、フランス(約 15%)などに比べて大幅に低い。

 ドイツでは多くの企業のIT担当者たちが 2020年3~4月に突貫作業を行って、大半の社員がテレワークをできる態勢を短期間で作り上げることに成功した。大企業を中心に、デジタル署名や電子スタンプも浸透した。

 製造業や店頭での小売業などを除く多くの企業では、大多数の社員が出社しなくても売上高や生産性を維持することに成功し、業務に大きな支障は出なかった。それどころか、「テレワークの方がオフィスで働くよりも生産性が高い」と考える人も少なくない。

 ドイツ企業では、年配の社員や、家庭に基礎疾患を持つ人がいる社員に出社を強制せず、日本よりも寛容にテレワークを許可する。企業が法律の縛りにより、個人の都合を尊重することを義務付けられているからだ。社員の都合と企業の要請の間のバランスをうまく取るのが、管理職の役目の1つだ。

 個人主義社会ではない日本では、この無言の圧力を跳ね返して自分の都合を優先するのは、並大抵のことではない。社員の都合を尊重しなくてはならないというドイツ社会の性格も、この国でテレワークが日本よりも幅広く普及した理由の1つである。

ドイツではなぜ、出社しない働き方が普及したのか

 ドイツでは、将来コロナ禍が過ぎ去った後もテレワークが通常の勤務形態の一部として定着する。その理由は、

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