- 本書の概要
- 著者プロフィール
本書では、今後「マスカスタマイゼーション(変種変量生産)」と「モノ売りからコト売り」への転換が多くの業界で進むことを指摘し、従来のチェーン(鎖)から、あらゆる相手と自由に取引できるウェブ(クモの巣)、すなわち「サプライウェブ」への進化を提唱。様々な事例をあげつつ、具体的にその方向性を指南する。
著者は欧州系戦略コンサルティングファーム、ローランド・ベルガーのパートナーで、ロジスティクス/サプライチェーン分野を中心に多様なコンサルティングサービスを展開。内閣府「SIP スマート物流サービス 評価委員会」委員長なども歴任する人物。業界を問わず、事業の進化・改善を目指す経営層はぜひご一読いただきたい。
ローランド・ベルガー パートナー。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、富士総合研究所、みずほ情報総研を経て、2007年に欧州系戦略コンサルティングファームのローランド・ベルガーに参画。2019年より現職。ロジスティクス/サプライチェーン分野を中心に、長期ビジョン、経営計画、成長戦略、新規事業開発、M&A戦略、事業再構築、構造改革、リスクマネジメントなどをはじめとする多様なコンサルティングサービスを展開。
内閣府「SIP スマート物流サービス 評価委員会」委員長、国土交通省「2020年代の総合物流施策大綱に関する検討会」構成員、経済産業省「Logitech分科会」常任委員、経済同友会「先進技術による経営革新委員会 物流・生産分科会」ワーキング・グループ委員などを歴任。主な著書に『ロジスティクス4.0』(日経文庫)がある。
1章 サプライチェーンを取り巻く環境変化
2章 チェーンからウェブへの進化
3章 あらゆるプロセスがつながること
4章 本来必要のないプロセスがなくなること
5章 サプライウェブプラットフォーマーの出現
6章 サプライウェブの描く未来
要約ダイジェスト
サプライチェーンを取り巻く環境変化
我々が普段目にするモノの多くは、調達、加工、製造、保管、輸送、販売などのプロセスを経て消費者の手に渡る。この川上から川下に至るまでの供給の連鎖を「サプライチェーン」と呼ぶ。
今、この川上から川下へのモノの流れを取り巻く環境が大きく変わろうとしている。「マスカスタマイゼーションへの転換」と、「モノ売りからコト売り」への進化は、各業界に共通の要素といえるだろう。
マスカスタマイゼーションへの変革
過去、様々な企業・工場で変種変量生産(ニーズに即して品種と数量の双方を柔軟かつ機動的に変更できる生産形態)に向けた取り組みがなされてきたが、その多くは効率性を犠牲にするものだった。
だが受注から設計・製造に至るまでのプロセスのデジタル化と設備の汎用化は、この状況を大きく変えようとしている。段取り替えを必要としない生産ライン、多様な製品・部品を取り扱うことのできる産業機械、人とともに働く協調型ロボットなどを組み合わせることで、マスプロダクションと同等の生産効率でのマスカスタマイゼーションが可能となりつつある。
家電に関していえば、PCはかねてからマスカスタマイゼーションを実現していた。BTO(Build To Order/受注生産)での購入であれば、CPU、OS、メモリ、HDD/SSD、ディスプレイなどを自由に組み合わせられる。マスカスタマイゼーションが進展すれば、PC以外の家電製品も BTOで購入できるようになるだろう。
無論、実物を見た上で購入したいという人がゼロになるわけではなく、店舗のショールームとしての価値は今後もなくならないと見るべきだ。とはいえ、