- 本書の概要
- 著者プロフィール
例えば、「コロナ禍で地方への移住が加速」「大企業が拠点を地方に移している」というニュースには、多分に幻想が含まれている。実際に人口移動のデータを見ると、東京一極集中の傾向に変わりはないのだ。本書ではこうした幻想や、地域活性策がうまくいかない構造を1つひとつ紐解き、地方が本当にやるべき行動の方向性を示す。
著者は高校在学時からまちづくり事業に取り組み、全国各地のまちづくり組織の役員を兼務、地域活性化の政府アドバイザーも務める人物。どんな事業でも、実施するときには幻想に囚われず、現実を直視することが必要だ。まちづくりや地域活性事業に携わる方はもちろん、新規事業や組織変革のヒントを得たい方もぜひご一読いただきたい。
1982年生まれ。高校在学時からまちづくり事業に取り組み、00年に全国商店街による共同出資会社を設立、同年「IT革命」で新語流行語大賞を受賞。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。08年に設立した熊本城東マネジメント株式会社をはじめ全国各地のまちづくり会社役員を兼務し、09年には全国各地の事業型まちづくり組織の連携と政策提言を行うために一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立。15年から都市経営プロフェッショナルスクールを東北芸術工科大学、公民連携事業機構等と設立し、既に350名を超える卒業生を輩出。20年には北海道の新時代に向けた「えぞ財団」を仲間と共に発足している。また内閣府地域活性化伝道師等の政府アドバイザーも務める。著書『稼ぐまちが地方を変える』『凡人のための地域再生入門』『地方創生大全』等多数。
第2章 えらい人が気づけない、大いなる勘違い
第3章 「地域の人間関係」という泥沼
第4章 幻想が招く「よそ者」頼みの失敗
第5章 まちづくり幻想を振り払え!
要約ダイジェスト
大企業の地方拠点は手放しに良いことではない
地方再生は今、ますます混迷の度を深めている。戦後、地方交付税交付金という制度ができ、今は毎年約 16兆円、その他各種インフラ整備、農林水産業、地域商業、社会福祉関連でも多額の予算が地方へと分配されている。
だが、今でも東京圏の優位が崩れるような流れにはなっていない。なぜ、戦後一貫して国の莫大な財源が投入されたにもかかわらず、地方はますます衰退してしまうのか。それは地域の多くの人たちが「まちづくり幻想」に囚われているからである。
地域での事業が、いつも幻想頼みになるのは、事実関係を調べないスタンスに原因がある。地方の分野ではとくに、声の大きな人の「噂」を信じたり、メディアが報じる不確かな情報を鵜呑みにしてしまうことで、判断を間違うことが多くある。
例えば、最近よく耳にする「大企業の地方進出」の記事には注意が必要だ。大企業が地方拠点を設けることで地元が活性化したのは、特に戦後の電機産業などが国際競争力のある時代に、地方工場を続々と開発していた半世紀前のことだ。
しかしそこには、本社同様の「正社員雇用」が約束され、しっかりとした人件費が支払われるという条件があった。賃金=所得によって地方の内需が拡大するからだ。さらに、鉱工業関係の産業が地元にあれば、垂直統合で関連会社にも恩恵が及び、新たな経済が生まれることになる。
それが今では、工場が作られても、本社とは給与体系の異なる子会社、