『トリガー 人を動かす行動経済学 26の切り口』
(楠本 和矢/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 現在、ほとんどの産業は成熟化し、類似商品やサービスが溢れている。こうした時代におけるマーケティング戦略の一つの突破口として近年注目を浴びているのが、「行動経済学」だ。行動経済学とは「人間の非論理的な心理作用やそれに基づく判断を活用したアプローチ」とも言うべきもので、現在、その知見が様々な分野で応用されている。

 ただし、行動経済学の各種理論はマーケティングのためにつくられたわけではないため、実務への落とし込みが難しい部分がある。そこで本書では、行動経済学の基礎に加え、各理論を目的別の5カテゴリーに分類し、26の切り口として紹介。さらにアナロジカル・シンキングを使い、マーケティング施策アイデアを創出するステップを解説する。

 著者は、マーケティング戦略アドバイザー、プロフェッショナルファシリテーターとして活躍する人物。新規ビジネスやマーケティング施策のアイデアを得たい方はもちろん、意思決定や人材マネジメントにまで応用できる行動経済学の実務的入門書を求めていた方はぜひご一読いただきたい。

著者:楠本 和矢(Kusumoto Kazuya)
 マーケティング戦略アドバイザー。プロフェッショナルファシリテーター/作家。大阪府立茨木高校、神戸大学経営学部卒。新卒で総合商社の丸紅に入社。新人の年に、自身が提案した新規事業開発担当となり、国内初の某領域ビジネス立ち上げに成功するも、事業推進における「マーケティング」の重要性を痛感し、その世界へ転身。その後、某コンサルティング企業のトップコンサルタントとして最前線にて活躍。顧客との「垣根を越えたパートナーシップ」をポリシーに掲げ、数々のプロジェクトを成功に導く。
 クライアントPM、プロジェクトメンバーとの対話を通じて実効性のある戦略を引き出し、メンバーを効率良く動かしていく「ファシリテーション型」の進行を得意とする。現在は、当該領域におけるクライアント内製化を目的に、人材開発や組織開発に関連する取組みにも注力。
 企業内研修講師としては、直近3年で、300回以上の企業内研修やセミナー、講演等を実施し、平均満足度は98%を超えるなど、数多くの企業から熱い支持を受けている。その先にある、作りあげたいものとは、「一人一人の知恵や経験が存分に引き出され、存分に活用されている社会」。それを自身のミッションとして捉え、日々邁進している。

著書に『パワーファシリテーション』(単著:すばる舎 2019年2月)、『人と組織を効果的に動かす KPIマネジメント』(単著:すばる舎 2017年)、『龍馬プロジェクト―日本を元気にする18人の志士たち』(共著 2011年)、『サービス・ブランディング』(共著:ダイヤモンド社 2008年)

CHAPTER1 マーケティング戦略と、行動経済学との距離感
CHAPTER2 行動経済学をマーケティングにつなげる26の切り口
・効率良く「好感認知」をつくるための5つの切り口
・新たなニーズを創るための7つの切り口
・魅力的なものに見せるための5つの切り口
・購入ストレスを低減するための4つの切り口
・自然に継続させるための5つの切り口
CHAPTER 3 「26の切り口」を使って、マーケティングアイデアを創出する方法

要約ダイジェスト

行動経済学をマーケティングにつなげる切り口

 本書の狙いは、行動経済学を「マーケティング」につなげることだ。以下、行動経済学の各理論から、マーケティング施策アイデアを創発するための切り口を5つのカテゴリーから紹介したい。

効率良く「好感認知」をつくるための切り口

ユーザーを広告塔に

 あるフリーメールのユーザーが、未利用者にメールを送信すると、「あなたもこの「フリーメール」を使いませんか?」という文章が、相手が受信したメール下部に自動的に表示される仕組みを導入。これにより、ユーザーがメールを送れば送るほど新サービスの認知(+新規利用)が進み、コスパ良くユーザーを拡大することに成功した。

 この方法は、サービスの利用過程の中で、ユーザーに負担をかけることなく、自然に「自分はそれを使っている」という事実を相手に知らしめる、いわばユーザー自身を「広告塔」として機能させるアプローチだ。

 ベースとなる理論はバンドワゴン効果(人気を多く集めていることがわかると、元々関心がなかったにもかかわらず、興味を示してしまう傾向)だ。相手がいるやりとりの場面で使われるものであることが必須条件となるため、Webを利用したコミュニケーションサービスでは使いやすいだろう。

 ただサービスの名称を相手に露出するだけではなく、印象に残すための何らかの一工夫(例:音やアイコンなど)があればなお良い。このアプローチを検討する際は、まず顧客がその商品/サービスを利用するプロセスを細分化し、まだ「情報の露出」に使われていない場所や、それに使えそうな場所を検討してみよう。

社会的トピックに紐付け

 あるグローバルに展開するアパレルブランドは、選挙の日に「私たちの地球のために投票しよう」という取組みを行った。PR活動を通じてそのメッセージを事前に発信し、全ての直営店を休業。これにより、単に全店休業するという告知にもかかわらず、同社の企業理念と一致した倫理的な取組みとして様々なメディアがニュースとして取り上げた。

 このベースにある理論は「ハロー効果」(目立つ特徴」に引きずられ、それだけで評価がポジティブ< ネガティブ>に振れてしまう傾向)で、本アプローチでは皆が気にする「社会的トピック」との紐付けによって、「着目すべき価値のあるもの」と判断させることを狙っている。

 とはいえ、ありがちな社会貢献の方法(例:1台売れたら○○にいくら募金など)ではメディアとして取り上げたいニュースにはならない。サービスの特徴に紐付けた、意外性のある社会的トピックとのつなげ方や、解決方法の新しさがないと埋没してしまう。

新たなニーズを創るための切り口

リスクを強制想起

 あるセキュリティ保護ツールは、自分の個人情報(ログイン IDやパスワード、クレジットカード情報など)が、知らない場所で、どの程度流通してしまっているかを数値化できるツールを Webサイト上に設置。その場ですぐ、どれだけ個人情報悪用の可能性にさらされているかを実感させ、サービスの購入導線に引き込むことにつなげた。

 もし現状に何の不満もない状態で、「これには+αのメリットがあります」と伝えられても、あればいいけど必要もないかな、としか思えない。しかし、「実は、あなたは損していますよ」と言われると、ドキッとする。

 このベースにある理論は、損失回避性(得をすることよりも、損をすること、リスクにさらされることについて、過大に反応してしまう傾向)で、同じ商品/サービスでも、訴求するアングルを変え、問題意識を表出化させるべく、あえて「ネガティブな方向」から攻める方法は、行動経済学的アプローチの典型とも言える。

 例えば、SEO対策に関するニーズを意識させるには、まず「あなたの会社の Webサイトを診断します」という無料の解析ツールをつくり、そのページにコンタクトさせる。自社サイトの URLを分析ツール入力して分析ボタンを押すと、SEO対策の不備で、どれだけ客を取り逃がしているのかがスコア化されるという仕組みだ。

 そこで SEO対策の必要性に気付き、問い合わせボタンを押す…、という流れだ。これは、あるMA(マーケティングのオートメーション)ツールのベンダーが実際に行った手法で、かなりの成果を上げたという。

魅力的なものに見せるための切り口

とにかく No.1

 ある後発の携帯電話キャリアは、当初、電波のつながりやすさなどの評価で、芳しくない状況が続いていた。そのイメージを払拭するべく、様々なジャンルを切り取って「○○において No.1」と訴求。その結果、

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