『マイクロソフトCTOが語る新 AI時代』
(ケヴィン・スコット/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 AIについては、多くの仕事を効率化し、生産性向上に寄与するといった楽観論と、AIの代替により失業者が増えるといった悲観論が繰り返されている。だが、これらの議論は、物事を両極端にしかとらえていない。AIの影響を論じるためには、現実に起こっていることを見つめることから始めなければならないはずだ。

 本書では、アメリカ農村部での AI活用の現在地を、実際に訪れて明らかにしている。そこには、マイクロソフト現 CTOである著者も驚くようなテクノロジー活用の現実があった。AIは、シリコンバレーやニューヨークといった都市部だけでなく、地方部や農村でこそ活かせるケースが多々あり、それらは日本でも応用できる可能性が高い。

 著者は、ヴァージニア州の田舎町出身で、Googleやリンクトインを経て現職。本書は、生まれ育った地方と、都市との分断を解消するために AIの立ち位置を探ろうと試みたものだ。AI社会への不安を抱いている方はもちろん、ポジティブな未来社会や地方再生のヒントを得たい経営者・起業家にはぜひご一読いただきたい。

著者:ケヴィン・スコット(Kevin Scott)
 マイクロソフトのチーフテクノロジオフィサー(CTO)兼エグゼクティブバイスプレジデント。モバイル広告の AdMobでテクノロジー・チームの立ち上げを指揮し、業界で頭角を現す。AdMobが 2010年に買収されたのを機に Googleに移籍。Googleや LinkedInで役員や技術職を歴任し、現職に至る。Google Founder’s Awardや Intel PhD Fellowship、ACM Recognition of Service Awardなど輝かしい受賞歴を誇る。また現在は、スタートアップ企業顧問、エンジェル投資家、非営利団体 Behind the Techの創設者、Anita Borg Instituteの名誉理事などの顔も持つ。ヴァージニア州の田舎町出身で、妻と2人の子供とともにカリフォルニア州ロスガトス在住。
第1部 AI前夜と現在地
 第1章 仕事を失った町
 第2章 CTOへの道のり
 第3章 分断と地方の現状
 第4章 ゼロサムゲームからの脱却
第2部 来るべき時代への準備
 第5章 AIの存在目的を知る
 第6章 AIの正体と人々の誤解
 第7章 機械はどのように学ぶか
 第8章 脅威の先にある仕事
 第9章 AI開発の未来と人の役割

要約ダイジェスト

自動化技術の向上と低価格化により農村部にも新しい仕事が生まれる

 AIに関しては、広まっているストーリーが2つある。専門技術を持たない労働者の市場がどんどん破壊されていくという暗い予想と、知識人や専門家は仕事の生産性と効率を高めていくという牧歌的な予想だ。

 しかしそのどちらも、AIをめぐる物語の全体像を捉えてはいない。私の考える未来は、もっと繊細で、複雑で、希望に満ちている。

 ヴァージニア州南部にある、アメリカン・プラスチック・ファブリケーターズ社のヒュー・E・ウィリアムズはチームマネージャーを務めている。

 ヒュー・Eが案内する作業場は、かつては南部の名高い綿織物産業の一端を担っていた。しかし南部経済の中心だった綿業は、安価な労働力を抱える国外企業と、自動化技術の発展に押されて衰退し、閉鎖した工場が再開する見込みはほとんどなかった。

 それでも地元のある人物が、小さなプラスチック部品を正確に成形するアメリカン・プラスチック・ファブリケーターズを立ち上げた。2008年のリーマンショックでは大打撃を受けたが、高密度ポリエチレンの加工を手頃な料金で受け持つことで、危機後は再び成長軌道に乗った。

 私が訪れた日は、作業員たちがコンピュータ制御の複雑なフライス盤を使い、ディズニーランドのアトラクションで使う精巧な部品を成形していた。仕様書をもとに、機械へプログラムを打ち込み、若い作業員がプラスチックから芸術作品と言えるレベルの製品をひとつひとつ削り出していく。

 ヴァージニアの片田舎の単科大学、

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