- 本書の概要
- 著者プロフィール
そこで本書では、元外務省主任分析官として、最前線で各国の要人らとの交渉をこなしてきた著者が、現代を生きる日本人に必要な「見抜く力」を解説。外交官時代のリアルな実体験を交えて「他人・常識・情報に振り回されない7つの極意」を述べつつ、経営者や大学教授、研究者など各分野の専門家の知見も盛り込まれている。
個人としての「見抜く力」だけでなく、リーダーに必要な見抜く力、すなわち人材評価やビジネス・社会情勢の見極め方、さらに子どもの教育についても解説されている。社会全体が大きな変化に直面している今、ビジネスパーソンはもちろん、これから就職を迎える学生にも、ぜひご一読いただきたい。
作家・元外務省主任分析官。1960年、東京都生まれ。85年同志社大学大学院神学研究科修了。2005年に発表した『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。『自壊する帝国』(新潮社)で新潮ドキュメント賞、大矢壮一ノンフィクション賞受賞。『獄中記』(岩波書店)、『交渉術』(文藝春秋)など著書多数。
第2章 リーダーになる人に知っておいてほしいこと
第3章 「考える力」が身につく育て方
要約ダイジェスト
他人・常識・情報に振り回されない7つの極意
日常的に新聞やニュースを見れば、断片的に情報を得ることはできる。しかしデータを集積するだけでは、ノイズが増える一方だ。ノイズとインフォメーションを仕分けし、インテリジェンスに磨き上げていくのが、見抜く力である。事実を拾い上げて選り分け、点と線をつなげ、物語を構成する力でもある。
生存がかかると、人の感覚や神経は研ぎ澄まされる。戦争のときには必死に技術開発をするから斬新な発想が出てくるし、思いつきを形にする努力も限界を超える。厳しい状況を生き抜かなければならない今こそ、見抜く力を研ぎ澄ますチャンスなのだ。
1.攻撃的な人の本音を見抜く
嫌いな相手や苦手な相手とも、付き合わざるを得ないのがビジネスだ。中でも面倒なのは、攻撃的な態度を取ってくる人である。攻撃的な人には、瞬間湯沸かし器型の人と、戦略的な観点に立っている人がいる。
前者は脳内分泌に問題を抱えている人だから、気にすることはない。問題は、戦略的に怒鳴る人。あるいは優位を保とうとして攻撃的な議論を進めてくる、後者のタイプへの対処だ。
怒鳴るという行為は、普通に議論したら負けるとき、言い分を押し付けられるだけの力が自分の側にあると自覚する人が、議論を省くために用いる手段だ。感情的であれ冷静であれ、相手の非論理に対して論理的に応じるのは、カテゴリー違いである。
事あるたびにマウンティングを取ろうとしてくる人も、優位に立つことで自分の利益拡大を狙っている。力を背景に攻撃的な態度に出る人と接するときは、まず相手の利害関心や、目指す利益は何なのかを見抜くように努める。その際こちらは絶対に感情的にならず、