- 本書の概要
- 著者プロフィール
本書の書き出しは、「ビジネスはその歴史的使命をすでに終えつつある」という衝撃的なものだ。ただし、それはただの悲観論ではなく、「物質的貧困を社会からなくす」という旧来からのビジネスの役割の終焉、そして本当の意味での「生きがい」や「幸福度」の追求といった新たな課題への挑戦を意味している。
著者は電通、ボストン・コンサルティング・グループ等を経て、独立研究者、著作家、パブリックスピーカーとして活躍。『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』などの著書がある人物。コロナ後の社会の長期的展望やビジネス・社会活動の方向性を手に入れたい方は、是非ご一読いただきたい。具体的なヒントが多数見つかるはずだ。
1970年東京都生まれ。独立研究者、著作家、パブリックスピーカー。ライプニッツ代表。慶應義塾大学文学部哲学科、同大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程修了。電通、ボストン コンサルティング グループ等で戦略策定、文化政策、組織開発などに従事。『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社新書)でビジネス書大賞 2018準大賞、HRアワード 2018最優秀賞(書籍部門)を受賞。その他の著書に、『劣化するオッサン社会の処方箋』『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』『外資系コンサルの知的生産術』『グーグルに勝つ広告モデル』(岡本一郎名義)(以上、光文社新書)、『外資系コンサルのスライド作成術』(東洋経済新報社)、『知的戦闘力を高める 独学の技法』『ニュータイプの時代』(ともにダイヤモンド社)、『武器になる哲学』(KADOKAWA)など。神奈川県葉山町に在住。
第一章 私たちはどこにいるのか?
第二章 私たちはどこに向かうのか?
第三章 私たちは何をするのか?
補論
終わりに
要約ダイジェスト
ビジネスの使命の終了
ビジネスはその歴史的使命を終えつつある。さまざまなデータは、私たちが過去 200年にわたって連綿と続けてきた「経済とテクノロジーの力によって物質的貧困を社会からなくす」というミッションがすでに終了していることを示している。
21世紀を生きる私たちに課せられた仕事は、終了しつつある「経済成長」というゲームに不毛な延命措置を施すことではなく、私たちが到達したこの「高原」を祝祭しつつ、「新しい活動」を通じて、この世界を「安全で便利で快適な(だけの)世界」から「真に豊かで生きるに値する社会」へと変成させていくことにある。
この転換を前向きに乗り越えていくには、大きく3つのポイントがある。1つ目は「終焉の受容」だ。アメリカの臨床心理学者で組織開発コンサルタントでもあったウィリアム・ブリッジズは、「転機をうまく乗り切れずに苦しんでいるケース」には共通して「過去を終わらせていない」という問題が潜んでいることを指摘している。
私たちの社会が今まさに転機にあるとすれば、「何が始まるのか?」という問いの前に、まず「何が終わるのか?」という問いに向き合わなければならない。「何が終わる」のかといえば、それは「経済成長とテクノロジーの力によって物質的貧困を社会からなくす」というビジネスのミッションである。
2つ目のポイントは、この状況を「ポジティブに受け入れる」ということだ。さまざまな経済・社会指標は、私たちがここ 100年で素晴らしい進歩と改善を成し遂げたことを示している。よく言われる「低成長」は、その達成の末に私たちが「成熟の明るい高原」に向かっている結果必然的にもたらされた状況であり、何ら悲しむべきことではないのだ。
最後に、この転換を乗り越えていくための3つ目のポイントとして「新しいゲームの始まり」という点を指摘しておきたい。現在の社会は「物質的不満の解消」についてはゲームを終了した状態にあるが、「生きがい」や「やりがい」、貧困や格差や環境といった、これまでのビジネスでは解決の難しい社会的課題がたくさん残っている。
端的に言えば、世界は大多数の人々にとって「便利で安全で快適に暮らせる場所」にはなったが、