『観光再生―サステナブルな地域をつくる 28のキーワード』
(村山慶輔/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 新型コロナウィルスはあらゆる業界に影響を及ぼしたが、なかでも大きな打撃を受けたのが観光業である。国内旅行は少しずつ回復基調にあるものの、依然として海外からのインバウンド市場は先が見通せない状況が続いている。本書では、こうしたコロナ禍で変化する観光のかたちとその対応を、28のキーワードから解説する。

 本書で解説されるキーワードは「サステナブル・ツーリズム」「観光型MaaS」「バーチャル」「食の多様化」「高付加価値化」など多岐にわたるが、それらに通底するのが「サステナブル」(持続可能性)という概念である。つまり「環境」「社会」「経済」において持続可能な観光を目指す方向性が加速するのだ。

 持続可能性は近年 SDGs(持続可能な開発目標)としても国際的な潮流となっている。地方創生とも密接にかかわり、一読すれば、業界を問わず今後の事業・商品戦略やマーケティングのヒントが多数見つかるはずだ。著者はやまとごころ代表取締役で国内最大級の観光総合情報サイト「やまとどころ.jp」を運営、国や地域の観光政策にも携わる人物。

著者:村山 慶輔(Murayama Keisuke)
 株式会社やまとごころ代表取締役。兵庫県神戸市出身。米国ウィスコンシン大学マディソン校卒。2000年にアクセンチュア株式会社戦略グループ入社。2006年に同社を退社。2007年より国内最大級の観光総合情報サイト「やまとごころ.jp」を運営。
「インバウンドツーリズムを通じて日本を元気にする」をミッションに、内閣府観光戦略実行推進有識者会議メンバー、観光庁最先端観光コンテンツインキュベーター事業委員をはじめ、国や地域の観光政策に携わる。「ワールドビジネスサテライト」「NHKワールド」など国内外のメディアへ出演。著書に『超・インバウンド論』(JTBパブリッシング)、『インバウンドビジネス集客講座』(翔泳社)などがある。
第1章 観光再生に欠かせない「サステナブル」という視点
第2章 「新技術」でネクスト・ステップへ進む
第3章 観光の新たな「トレンド」を捉え、対応する
第4章 「新戦略」で未来のニーズを先取りする
第5章 地域を支える「人」を育てる/呼び込む

要約ダイジェスト

サステナブル・ツーリズム

 今回のコロナウイルスの発生前と後で観光のかたちが変わることは間違いない。正しくいえば、ここ数年、徐々に変化してきた観光のトレンドが劇的な動きをみせ、元の状態に戻るのではなく、違うかたちで「再生」されるということだ。

 その際、キーワードとなるのは「サステナブル」だ。サステナブル・ツーリズムとは、日本語でいえば「持続可能な観光」という意味であるが、もう少し説明を加えるなら、「環境」「社会」「経済」の3つの観点において持続可能な観光ということになる。

 例えば、2018年からサステナブル・ツーリズムに取り組む北欧の人口約 500万人の国・フィンランドは、同国のブランドカ向上と旅行者の誘致のためのマーケティング活動を行うフィンランド政府観光局を中心に、「サステナブル・フィンランド」を推進している。

 これは受け入れ(地域・事業者)側のエコロジカルな配慮を促進するだけでなく、旅行者側にその地域に住む人々の文化や環境を尊重する配慮を求める取り組みだ。フィンランド政府観光局がインターネット上に掲げた旅行者向けの「フィンランドでサステナブルな旅をするための 10のヒント」は次の通りである。

「身軽に旅する」「ハイシーズンを避けて、より長期間滞在する」「公共交通機関を利用する」「地元の人たちを尊重する」「地元の食、デザイン、工芸品に親しむ」「自然享受権」「リサイクル」「水道水を飲む」「ベジタリアン食を食べてみる」「フィンランド人のように生活を楽しみましょう!」

 これまで、日本のインバウンド政策では、数や消費額が重視されてきた。そのなかで観光客が集中するエリアで、地域住民の生活や自然環境へ悪影響を与える事例が出てきた。したがって、地域にとっても、事業者にとっても、その地域の観光資源で継続して稼いでいくためには、サステナブル・ツーリズムヘの取り組みが不可欠となるだろう。

地域教育とシビックプライド

 近年、シビックプライド(civic pride)という言葉が注目されている。地域住民が、自分たちの住むまちに対して抱く誇りや愛着”という意味を持ち、住民に「地域をより良くするための積極的関与」を促すものだ。

 シビックプライドについては、自然発生的に芽生えることを期待しつつも、意図的に育むための取り組みも必要になる。その1つの手法が「地域教育」である。地域教育とは、老若男女を問わず広く地域住民に対して、「地域が持つ魅力とはなにか」「地域が現在抱える課題と、その解決策はなにか」といったことを考える場をつくることだ。

 そうした地域教育の場では、いくつかは実際のアクションへとつなげていくことも求められる。ポイントは、

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