- 本書の概要
- 著者プロフィール
本書は、主に教育現場における先入観を払拭するような科学的エビデンスを徹底的に示し、脳のはかり知れない成長可能性を論じる。「天賦の才はないと知る」「間違いこそ成長のチャンス」「スピードや暗記を重視しない」といった6つのステップを通して、既存の常識に汚染された人々のマインドセットを解放するような内容だ。
著者はスタンフォード大学教育学部教授で、オンライン大学講座(MOOC)の数学教育カリキュラム制作の第一人者でもある人物。英国 BBC局が選ぶ、「教育を変える8人」にも名を連ねている。教育や人勢育成・マネジメントに携わる方はもちろん、学習する側の立場にある方にも、ぜひご一読いただきたい一冊だ。
スタンフォード大学教育学部教授。世界で2億3千万人の生徒が参加する非営利の学習リソースサイト、ユーキューブド(youcubed)のディレクターでもある。オンライン大学講座(MOOC)の数学教育カリキュラム制作の第一人者であるほか、これまでに9冊の本を上梓し、研究論文や記事も多数執筆。ニューヨーク・タイムズ紙、タイム誌、テレグラフ紙、アトランティック誌、ウォール・ストリート・ジャーナル紙など多くの媒体に掲載されている。英国BBC局が選ぶ、「教育を変える8人」に名を連ねる。カリフォルニア州スタンフォード在住。
訳者:鹿田昌美(Shikata Masami)
翻訳家。国際基督教大学卒。主な訳書に、『フランスの子どもは夜泣きをしない』(集英社)、『いまの科学で「絶対にいい!」と断言できる 最高の子育てベスト55』(ダイヤモンド社)、『すごいぞ!進化 はじめて学ぶ生命の旅』(NHK出版)ほか多数。
第1章 脳の可塑性が、すべてを変える
第2章 なぜ私たちは、ミス、つまずき、失敗を愛するべきなのか?
第3章 心を変えれば、現実は変わる
第4章 つながる脳内ネットワーク
第5章 「スピード」から「柔軟性」の時代へ
第6章 共同作業で限界を超える
終章 「無敵」のマインドセットで生きるということ
マインドセットとアプローチを変えるための参考ウェブサイト
謝辞
参考資料
原注
要約ダイジェスト
「無敵」のマインドセットを作るための6つのステップ
「脳は一生変わらない」「適性がない分野がある」という通念は、科学的に間違っている。典型的なのは、算数および数学、芸術、英語など、つまずきだしたとたんに、「自分の脳はその分野に適していない」と判断して断念してしまうことだ。
しかし、最新の科学データと私が提案する〈6つのステップ〉を知れば、脳の機能が変わり、自分が変わる。〈6つのステップ〉は、現実に対する認識だけではなく、現実そのものを変える。自分みずからかけていたロックが解除され、伸び伸びと生きられるようになるのだ。
STEP1 「天賦の才」はないと知る
潜在能力を開花させるための1番目の鍵は、「脳の可塑性」に関わる。学校、大学、そしてビジネスの世界でも、真逆の固定観念に基づいたアプローチが実践されることが多く、成長に制限をかけてしまった人が大勢いる。しかし実際は、特定の教科に適した脳を生まれつき持っている人などいない。
学習すると、3つの方法で脳が成長する。新しい神経回路の形成、すでに存在する神経回路の強化、そして以前はつながっていなかった回路間の接続だ。神経回路は生まれつき存在するのではなく、学習によって発達し、苦労するほど習熟度と脳の成長が高まるのだ。
子どもが持つ学習能力の可能性は計り知れない。それをはっきりと物語るのが、オーストラリアのニコラス・レッチフォードの例だ。1年生のはじめに、両親はニコラスが学習障害であり、IQが非常に低いと告げられた。
しかしニコラスの母は、その後数年にわたってニコラスに寄り添い、集中と関連づけと読み書きを教えた。そして 2018年、ニコラスはオックスフォード大学を卒業して応用数学の博士号を取得した。
子どもたちにレッテルを貼り、あまり期待しないという考えが誤りだと気づくことは、あらゆる学習障害を克服するために大切なことだ。脳が持つ最も注目すべき特徴は、変化と成長に適応する能力なのだ。
「脳は変わらない」という思いこみは、「天賦の才がある」とされる生徒たちにも負の結果をもたらす。そうした生徒たちは、周囲から、苦労したりつまずいたりしない人だと思われてしまう。だからそうなったときに、壊滅的なダメージを受けるのだ。すべての生徒に、