『モビリティ・エコノミクス―ブロックチェーンが拓く新たな経済圏』
(深尾三四郎、クリス・バリンジャー著)

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 2020年のコロナショックは、あらゆる業界においてグローバル化によって複雑化したサプライチェーンの脆弱性を露呈させた。今後はパンデミックや未曽有の災害に耐えうる、レジリエンスの高いサプライチェーン構築が求められる。そのための方法として、ブロックチェーンが注目されているという。

 そして現在、自動車業界は、増産するほど収益性が悪化する「規模の不経済」に陥っている。そこで本書では CASEや MaaSという自動車業界周辺の取り組みの課題を示し、ブロックチェーンによって見いだせる活路を明らかにする。多くの事例と産業の未来図が示され、一読すればブロックチェーンが一時のバズワードではないことがわかるはずだ。

 著者は伊藤忠総研産業調査センター上席主席研究員兼「モビリティ・オープン・ブロックチェーン・イニシアティブ(MOBI)」理事の深尾三四郎氏と 同イニシアティブ CEO クリス・バリンジャー氏。自動車業界に限らず、ブロックチェーンなどのテクノロジーや地域経済に興味関心がある方はぜひご一読いただきたい。

著者:深尾三四郎(Fukao Sanshiro)
 伊藤忠総研 上席主任研究員。
モビリティ・オープン・ブロックチェーン・イニシアティブ(MOBI) 理事。1981年東京生まれ。98年経団連奨学生として麻布高校から英UWCへ留学。03 年英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)を卒業。同年野村證券に入社、金融研究所に配属。05年から英HSBCでの自動車部品セクターの証券アナリストを経て、14年まで米国と香港のヘッジファンドでシニアアナリスト。浜銀総合研究所を経て、19年8月より現職。専門はマクロマーケティングとファンダメンタルズ分析。国内外での講演、企業マネジメント向けセミナー多数実施。

クリス・バリンジャー(Chris Ballinger)
 モビリティ・オープン・ブロックチェーン・イニシアティブ(MOBI) 共同創設者兼CEO1957年米フィラデルフィア生まれ。レーガン大統領経済諮問委員会で国際貿易のエコノミストを務めた後、85年カリフォルニア大バークレー校(UC Berkeley)で経済学修士号を取得。金融工学の専門家としてバンク・オブ・アメリカでシニア・ヴァイス・プレジデント。08年から17年までトヨタモータークレジット(TMCC)でCFO。14年から17年まではトヨタファイナンシャルサービス(TFS)でグローバルイノベーション部門トップを兼任。17年からトヨタリサーチインスティテュート(TRI)でCFO及びモビリティサービス部門長。TRIを退職し、18年5月にMOBI創設。国際カンファレンスで自動車及びブロックチェーンに関する基調講演を多数実施。

プロローグ スマートシティの構築と持続可能な発展を促すブロックチェーンモビリティ
第1章 規模の不経済性に陥る自動車メーカー
第2章 自動車産業にもウェブ3.0時代の到来
第3章 ブロックチェーン、500年に一度の革命
第4章 サプライチェーンのレジリエンスを高める
第5章 EVはコネクテッドカーからコネクテッドバッテリーへ
第6章 レモンをピーチに 自動車流通の進化が加速
第7章 「コモンズの悲劇」を解決するデータマーケットプレイス
第8章 スマートシティの構築と地域経済の活性化
対 談 クリス・バリンジャー/深尾三四郎 ブロックチェーン×DXで新たな「日本モデル」を

要約ダイジェスト

規模の不経済性に陥る自動車メーカー

 新型コロナウィルスのパンデミックが始まる前から、世界の自動車産業は、増産しても利益が減るという苦しい状況に置かれていた。世界自動車生産台数は、リーマンショックで落ち込んだ 2009年以降、2017年まで右肩上がりで増産が続いたが、2018年に横ばいで推移し、2019年は 10年ぶりに減少に転じた。

 2019年以降、大手自動車メーカーによる抜本的な能力削減計画が相次いでいる。今後は、パンデミックの影響も加わり、自動車メーカーによるグローバルな減産や能力削減の動きは、さらに加速する可能性がある。

 自動車メーカーの減産の背景にある構造的な要因とは、自動車産業が遂に「規模の不経済性」に直面してしまったことである。規模の不経済性とは、ある一定の生産数量を超えると、生産規模を増やすことにより収益性が悪化し、ゆくゆくは減益に陥ってしまう状況を指す。自動車メーカーは今までのように増産を続けても、儲けることができないのだ。

「規模の不経済性」に陥っているのは、品質関連費用、販売奨励金、電動化や自動運転など次世代技術に向けた研究開発費といった、取引コストの増大が背景にある。また、シェアリングサービスの普及で、人々は車を保有しなくても、低コストかつ容易にモビリティを利用する機会が増えていることから、新車需要には逆風が吹いている。

 では、このような業界の大変革やパンデミックといった難局にて、自動車メーカーはどのようにして収益を増やして、生き残ることができるのか。ずばりそれは、ブロックチェーンを活用することである。

 ブロックチェーンを活用することで、①取引コストの回避または大幅な削減を実現し、②車両走行時に集積したデータをマネタイズ(収益化)することによって、車に新たな付加価値をもたらすことができるからだ。結果、既存ビジネスのコスト削減と新しい売上の創造で、

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