『捨てられる宗教―葬式・墓・戒名を捨てた日本人の末路』
(島田裕巳/著)

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「捨てられる」宗教とはどういうことか。日本では、平成の約 30年間で仏教系の信者がほぼ半減したのだという。伝統宗教だけでなく新興宗教も同様に衰退の傾向があり、さらに葬儀の簡素化やお墓を造らないスタイルも増えてきた。近年一層日本人の宗教離れが進んでいるのだ。しかもこの現象は世界的なものだという。

 ではその原因は何だろうか。著者はその原因を長寿化による死生観の転換にあると指摘する。つまり、平均寿命が短かった時代の死生観を根底として生まれた宗教が、長生きが当たり前になった時代に求められるものと乖離し始めているのだ。本書では世界と日本の宗教界が直面する危機と、終活や現代人の生と死を展望する。

 著者は宗教学者として日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員等を歴任し、作家としてベストセラーも多数ある人物。「死」や「宗教」は人生100年時代における生きがいや幸福、また多様性ある社会を考えるうえで欠かせないテーマだ。こうした分野にあまり触れてこなかった方こそぜひご一読いただきたい。

著者:島田 裕巳(Shimada Hiromi)
 作家。宗教学者。東京女子大学非常勤講師。1953年東京生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員を歴任。学生時代に宗教学者の柳川啓一に師事し、とくに通過儀礼(イニシエーション)の観点から宗教現象を分析することに関心をもつ。大学在学中にヤマギシ会の運動に参加し、大学院に進学した後も、緑のふるさと運動にかかわる。大学院では、コミューン運動の研究を行い、医療と宗教との関係についても関心をもつ。日本女子大学では宗教学を教える。
 主な著書に、『創価学会』(新潮新書)、『日本の10大新宗教』、『葬式は、要らない』、『浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか』(幻冬舎新書)などがある。とくに『葬式は、要らない』は30万部のベストセラーになる。生まれ順による相性について解説した『相性が悪い!』(新潮新書)や『プア充』(早川書房)、『0葬』(集英社)などは、大きな話題になるとともに、タイトルがそのまま流行語になった。本書は、世界と日本の宗教界が直面する危機を明らかにした『宗教消滅 資本主義は宗教と心中する』(SB新書)の続編に当たる。
1章 終活さえもめんどくさい
2章 なぜ宗教は捨てられたのか
3章 スケジュール化された終わりなき人生
4章 いまだ“死のある世界”で生きる人たち
5章 “死のない時代”の生き方・死に方

要約ダイジェスト

カトリックの牙城崩壊

 2019年 11月、ローマ教皇フランシスコが来日した。ローマ教皇の来日は、ヨハネ・パウロ2世以来 38年ぶりのことだった。ローマ教皇が日本を訪れるのは、日本国内のカトリック信者の結束と信仰の強化をはかるためである。

 それも、カトリック教会が最大規模の世界組織で、世界各地に膨大な信者を抱えているからだ。ただ、38年前の教皇来日と、今回の来日とでは、カトリック教会のおかれている状況は大きく変化している。今やカトリックの信仰は重大な危機に直面しているのだ。

 まず、カトリックの総本山、バチカンのあるヨーロッパでは、教会離れが深刻化している。西ヨーロッパでは、日曜日のミサに参列する信者の数が激減し、教会を抜ける人間も相当数に及んでいる。

 信者が減り、存続できなかった教会のなかには、売却されるところも少なからず現れている。もっとも多いのは、イスラム教のモスクになる場合である。西ヨーロッパではイスラム教圏からの移民が増加し、イスラム教徒の人口が増えているからだ。

 中南米では、別の形でカトリックにとって深刻な事態が起こっている。従来、ブラジルを中心とした南米諸国は、「カトリックの牙城」と言われてきた。ところが、近年になって、南米や中米の諸国では、カトリックから、同じキリスト教のプロテスタントへ改宗する人間が急増しているのである。

 1970年の時点で、ブラジルの宗教人口の割合は、カトリックが 92%、プロテスタントが5%だった。それが、2010年になると、カトリックは65%と大幅に減少し、

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