『勤勉な国の悲しい生産性―なぜ経営の正義としてまかり通るのか』
(ルディー和子/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 近年日本企業の生産性の悪さと従業員のエンゲージメント率(会社への愛着や思い入れ)の低落が問題視されている。だが、それは日本企業の多くが、バブル崩壊を IT化ではなく、安価な非正規雇用と正社員の長時間労働で乗り切ろうとしてきた結果であり、会社への愛着や思い入れが湧かないのもある意味当然といえる。

 また生産性向上の前提にある GDPの成長を目指す考え方にも疑問符がつき始めている。経済成長が国民の幸福に直結していない事例が、特に先進国で目立ち始めたからだ。では日本企業は経営や働き方をどう変えていけばいいのか。本書では、経営学や組織論、イノベーション、心理学など様々な知見から、AIのもたらすインパクトも含めた経営の未来を論じている。

 著者は米国出版社のダイレクト・マーケティング本部長を経て、早稲田大学商学学術院客員教授、立命館大学大学院教授等を歴任。現在はウィトン・アクトン代表取締役、セブン&アイ・ホールデイングス、トッパン・フォームズの社外取締役などを務める人物。“生産性向上”を強く推進している経営層こそぜひご一読いただきたい。

著者:ルディー和子(Rudy Kazuko)
 米国化粧品会社のマーケティング・マネジャー、米国出版社のダイレクト・マーケティング本部長を経て、早稲田大学商学学術院客員教授、立命館大学大学院教授等歴任。現在、ウィトン・アクトン㈱代表、㈱セブン&アイ・ホールデイングス社外取締役、トッパン・フオームズ㈱社外取締役を務める。
 著書に『合理的なのに愚かな戦略』(日本実業出版社)『経済の不都合な話』『「売り方は類人猿が知っている』『ソクラテスはネットの「無料」に抗議する』(以上日経プレミア新書)ほか多数。
第1章 「生産性向上!」は時代錯誤
第2章 「時短」ではなく、「時間」からの解放感
第3章 「調和」と「不公平感」がつくる会社組織
第4章 日本人は「勤勉DNA」をもっているのか?
第5章 AIが人間から奪う仕事は(49%ではなくて)わずか7%
終章 経営者の仕事は社員に夢を見させること!

要約ダイジェスト

企業はこれからも人間に頼らざるを得ない

 2019年は、いまのアルゴリズム中心の AIへの過信が挫折を味わった年だ。早ければ 2020年には、自動車の完全自動運転が実現するとしていた企業家や研究者の予測が修正された。修正といっても、2020年が30年に延びるといった問題ではなく、完全自動運転がどのくらい先に実現するか予測すらできないと、研究者たちは素直に認めたのだ。

 同じような理由で、つまり AIの限界が明らかになったことで、かつて 20年以内に労働人口の 49%が AIやロボットに代替されると予測されてセンセーションを巻き起こしたが、いまではその数字が正しいと思っている研究者はほとんどいない。2016年に OECDが発表した7%のほうが正しいとみなされている。

 つまり、企業はこれからも、機械ではなく人間である従業員に頼らざるを得ないことが明らかになったのだ。だがそうした状況で、いまの日本企業は従業員という最も重要な企業資産の価値を上げる努力をまったくといっていいほどしていない。

 その結果、日本の従業員の会社へのエンゲージメント率は世界平均の半分しかない。異常に低いレベルであるのに、「日本人は自己肯定感が低いからそうなるんだ」などと都合よく解釈し、対策を考えない経営者が多い。

 組織には「2:6:2の法則」がみられ、優秀な社員が 20%、普通の社員が 60%、無気力な社員は 20%といわれる。欧米では 20%の優秀な社員を世界中から集め、ここに集中的に投資する傾向が強い。だが、日本の特徴は、60%の「普通の社員」の教養や勤勉さ、そしてたぶん倫理観のレベルも、

続きを読むには会員登録が必要です。

© 2020 ZENBOOKS,Inc. All Rights Reserved.
要約記事は出版社または著作者から適法に許諾を取得し、作成・掲載しています。本記事の知的所有権は株式会社ゼンブックスに帰属し、本記事を無断で複製、配布、譲渡することは固く禁じます

特集