- 本書の概要
- 著者プロフィール
では表示の仕方さえ変わればよいのか。そうではなく、ネット広告をめぐる問題の背景にはウェブメディアのPV至上主義と、それを生み出した広告配信システムがある。本書では、綿密な取材を基にこれらの問題の核心に迫り、今後のウェブ広告、コンテンツ、メディアビジネスの未来を展望する。
著者は広告会社でコピーライターとしてマス広告の制作に従事。その後フリーランス、映像制作会社、広告代理店を経て、現在はマス・ネット広告両方の知見を活かし、メディアコンサルタントとして活躍する人物。個人や企業がSNSなどで簡単に情報の発信者になれる時代の教養として、メディアや広告に携わる方以外もぜひご一読いただきたい。
1962年、福岡県生まれ。東京大学卒業後、広告会社I&Sに入社し、コピーライターになる。93年からフリーランスとして活動後、映像制作会社ロボットのビデオプロモーションに勤務したのち、2013年から再びフリーランスとなり、メディアコンサルタントとして活動中。株式会社エム・データ顧問研究員。有料マガジン「テレビとネットの横断業界誌 MediaBorder」発行。著書に、『赤ちゃんにきびしい国で、赤ちゃんが増えるはずがない。』(三輪社)、『拡張するテレビ』(宣伝会議)、『爆発的ヒットは”想い”から生まれる』(大和書房)など多数。
CHAPTER1 ネットメディアと広告の結びつき
CHAPTER2 ネット広告というブラックボックス
CHAPTER3 ハードルを越えるための解決策
CHAPTER4 PV商売からの脱却を図るメディア
CHAPTER5 テレビCMにも起きている変化の波
LAST CHAPTER これからの広告の在り方はどうなるか?
要約ダイジェスト
広告は嫌われてさえいない?
広告は嫌われる存在だという人は多いが、広告制作を主な仕事としてきた私の感覚からすると、「広告は嫌われてさえいない」と言うほうが正確だ。
息を殺してあまり主張せずに、ひっそり存在しながらも、伝えたいことを伝えるのが広告というもの。「嫌われている」なんて、逆におこがましいと思うのだ。これは単なるレトリックではなく、広告というものの本質である。
生活の中に溶け込んで、存在そのものまでは否定されないようにしないと、果たすべき機能を果たせないのが広告のフレームだ。一たび嫌われたりしたら、その先ずっとまずいことになる。決して邪魔めざわになってはいけないし、目障りな存在になってはならない。
一方、これは“広告枠”の話であって、その枠の中での“広告表現”は、目に留めてもらい、好かれたり印象に残したりせねばならない。ただし、表現として強烈な印象を残したにしても、すぐに消えなければならないのも広告の重要な性質だ。テレビCMはほんの一瞬だし、新聞広告は翌日にはもう見られない。
広告とは、生活に溶け込んだ広告枠の中で、表現技術を駆使して一瞬の主張を行い、すぐさま消えていくものだ。この構造を守っていれば、嫌われることはない。嫌われさえしないからこそ、