- 本書の概要
- 著者プロフィール
本書では、軍事理論に端を発し、想定外の不確実性や非常時の対応にこそ強みを発揮する OODA理論を組織やビジネスの現場に実装するための解説書だ。各プロセスの要点に加え、国内外の事例を導入失敗事例も含めて紹介し、OODAマネジメントを仕組み化するための方法が具体的に解説されている。
著者は神戸大学大学院経営学研究科教授で、研究・教育に加え、企業の研修プログラム企画なども精力的に行う人物。『孫氏』や宮本武蔵『五輪書』など、OODA理論構築の原典となった古典的名著もひも解説されており、不確実性への対応が必要な経営層はもちろん、即断即決が求められる現場マネジメント層にもぜひご一読いただきたい。
神戸大学大学院経営学研究科教授。1967年京都府生まれ。スタンフォード大学Ph.D.(経済学博士号)、神戸大学博士(経営学)。神戸大学経営学部助教授、科学技術庁科学技術政策研究所客員研究官、INSEAD客員研究員、ハーバード大学フルブライト研究員を経て、2005年より現職。専攻は、経営戦略、イノベーション経済学、イノベーション・マネジメントなど。大学での研究・教育に加え、企業の研修プログラムの企画なども精力的に行っている。主な著書に、『知識転換の経営学』『MBA戦略立案トレーニング』『実践力を鍛える戦略ノート』(以上、東洋経済新報社)、『イノベーション戦略の論理』(中央公論新社)、『イノベーションを巻き起こす「ダイナミック組織」戦略』(日本実業出版社)、『汎用・専用技術の経済分析』(白桃書房)、Economics of an Innovation System(Routledge)、訳書に『OODA LOOP(ウーダ・ループ)』(東洋経済新報社)などがある。
第2章 OODAマネジメント
第3章 「観察から始める」を仕組み化する
第4章 「直観で判断する」を仕組み化する
第5章 「適応問題を解決する」を仕組み化する
第6章 OODAマネジメントの事例研究
要約ダイジェスト
組織で高速OODAループを回す
『孫子』の兵法の本質は、「正」と「奇」の組み合わせにあり、相手の意表をつくことが「戦わずして勝つ」ためのポイントになる。この『孫子』の考え方は、その後、英国の軍事史研究家であるバシル・リデルハートに引き継がれ、より具体的な戦術・組織論として元米国空軍大佐ジョン・ボイドによって完成された。それがOODAループという考え方だ。
OODAループは、湾岸戦争でその効果を発揮し、いまや世界の主要な軍事組織で採用される至る。昨今の新型コロナウイルスの問題に代表されるように、想定外の不確実性に翻弄されるのが現在の企業経営の特徴だが、そこで重要なのは、想定外の不確実性を可能なかぎり「想定内化」し、OODAループを仕組み化していくことだ。
確実な状況のなかでのマネジメントは決められたことを粛々と実行していけばよい。一方、不確実な状況のなかでは、詳細な計画立案はほとんど意味をなさなくなる。
かつて米国のアップル社を訪ねたとき、「当社では、3カ月計画を事業計画といい、1カ年計画を中期計画と呼びます」と言われた。それでは日本企業で一般的な3カ年計画、5カ年計画といった中期計画は何と呼ぶのかと尋ねたところ、「それはドリームといいます」と回答された。つまり、3~5年先など考えても意味がないということだ。
OODAループは、「観察(Observe)」「情勢判断(Orient)」「意思決定(Decide)」「行動(Act)」という一連の活動から構成される。観察とは情報収集のことで、情勢判断は、収集された情報の解釈。その解釈にもとづき現場で意思決定し、実行に移される。
なかでも重要なのが、観察→情勢判断→行動の3つだ。可能であれば、意思決定の段階を省略し、観察、情勢判断、行動がほぼ同時並行的に遂行されることが理想となる。
このOODAループがPDCAサイクルと異なるのは、計画を出発点としていない点だ。もちろん、大枠でのミッションは与えられているが、