- 本書の概要
- 著者プロフィール
ではなぜ決断に「哲学」が求められるのか。分析的な判断は重要だが、データや事例は、過去のものであるために、どこまで検討しても不確実性は残る。それでも決断を実行に移すには、各人それぞれの哲学・思想的背景が必要なのだ。本書では、本田宗一郎、安藤百福、小倉昌男ら名経営者の決断を例に発想・検証・跳躍のステップを解き明かす。
著者は経営学者として多数の著書を持つ国際大学学長、一橋大学名誉教授、伊丹敬之氏。決断における規模の大小は違えど、その構造は共通しているという。重大な経営判断・決断を行うことが仕事である経営層はもちろん、現場マネジャーなど日々様々な決断を迫られているビジネスパーソンはぜひご一読いただきたい。
国際大学学長。1945年愛知県豊橋市生まれ。一橋大学商学部卒業。カーネギーメロン大学経営大学院博士課程修了(Ph.D.)。一橋大学大学院商学研究科教授、東京理科大学大学院イノベーション研究科教授を歴任。一橋大学名誉教授。2005年11月紫綬褒章を受章。主な著書に『経営戦略の論理〈第4版〉』『日本企業の多角化戦略』(共著、日経・経済図書文化賞受賞)、『日本型コーポレートガバナンス』『孫子に経営を読む』『現場が動き出す会計』(共著)(以上日本経済新聞出版社)、『場の論理とマネジメント』『経営を見る眼』『経済を見る眼』(以上東洋経済新報社)、『本田宗一郎』(ミネルヴァ書房)、『高度成長を引きずり出した男』(PHP研究所)がある。
第1章 決断に至る三つのステップ
第2章 直感、論理、哲学、すべてを使う
第3章 直感が、発想を豊かにする
第4章 直感を刺激し、直感を回転させる
第5章 検証のベースは、論理
第6章 仮説を育て、論理の肝を押さえる
第7章 跳躍できるための、哲学
第8章 哲学がもたらす、安定と奥行き
第9章 定型思考から、「バカな」と「なるほど」へ
終 章 直感を磨く、論理を鍛える、哲学を育む
要約ダイジェスト
決断に至る3つのステップ
経営の決断は、たんにデータを集め、論理で検証して判断するというようなことだけではなく、不確実な未来に向かって跳躍するということに本質がある。まさに2020年から2021年にかけて日本企業がしなければならないのは、コロナショックの巨大な不確実性の中での跳躍だ。
すべての決断は、大きな決断も小さな決断も、基本構造は似ている。それは、発想し、論理的に検証し、最後に跳躍をする、という3ステップの構造である。発想、検証、跳躍の3つが揃ってはじめて決断ができ、その結果として現実の行動が始まる。
まず、どんな行動をとるべきかについての発想が生まれなければ、行動のとりようがない。そして、その発想が適切かどうかの検証作業がそれに続く。検証の結果を見て、なんらかの行動をとろうと選択の判断をする。しかしそれは判断であって、まだ実行を開始すると決めるわけではない。
実行を開始すると心を決め、実際に動き出すのが、決断という第3のステップだ。決断という言葉のニュアンスには、判断の上にさらに思い切ること、あえていえば跳躍すること、が加わっているのである。
発想の原点は直感にある。そして、検証のステップでは、論理が中心的役割を果たす。そして、最後の跳躍には、哲学が必要となる。なぜ、哲学が跳躍に必要かといえば、