『戦略の創造学―ドラッカーで気づき、デザイン思考で創造し、ポーターで戦略を実行する』(山脇秀樹/著)

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 経営に携わる方であれば、経営学者ピーター・ドラッカーのマネジメント論、マイケル・ポーターの競争戦略論、近年注目を浴びるデザイン思考について、それぞれ別個に触れたことがあるかもしれない。本書は、これらを別々に論じるのではなく、3つの思考を組み合わせ、具体的な企業戦略に結びつけるまでを一貫して説いた経営書だ。

 具体的には、ドラッカーの問いから企業のビジョンや未来への洞察を導き、デザイン思考でイノベーションの創造につなげ、目的・ビジョンを達成するための競争戦略を構築する。一読すれば、国際競争力が低下し、さらにコロナ後の新しい時代にふさわしい経営戦略を模索する日本企業にとって多くの示唆があるはずだ。

 著者は1982年にハーバード大学経済学博士号取得(Ph.D.)後、ベルギーのルヴァーン大学経済学部教授、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)アンダーソン・マネジメントスクール客員教授等を経て、2009~12年度にピーター・F・ドラッカー経営大学院で欧米のビジネススクールにおける初の日本人学長を務めた。

著者:山脇 秀樹(Yamawaki Hideki)
 慶應義塾大学経済学部卒業、同大学大学院経済学修士課程修了。1982年にハーバード大学経済学博士号取得(Ph.D.)。ハーバード在籍時の指導教授は、マイケル・ポーターの指導教授と同じリチャード・ケイブス。1982年より旧西ドイツ国立ベルリン社会科学研究所上級研究員、1990年よりベルギーのルヴァーン大学経済学部教授。1995年よりカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)アンダーソン・マネジメントスクール客員教授を併任し、2000年よりカリフォルニア州クレアモントにあるピーター・F・ドラッカー経営大学院教授。2006年度より同校副学長、2009~12年度に学長を務める。欧米のビジネススクールにおける初の日本人学長。
Chapter 1 なぜ、新しいモデルが必要なのか 
Chapter 2 ビジネスの目的・使命・ビジョン 
Chapter 3 観察から洞察へ
Chapter 4 顧客にとって新しい「意味」を創る
Chapter 5 新しい意味を創る「予備的分析」
Chapter 6 共感を生むためのツール「デザイン思考」
Chapter 7 世界観と意味
Chapter 8 新しい戦略モデルを構築する 
Chapter 9 戦略構築の土台 
Chapter 10 どのように目的を達成するのか 
Chapter 11 どこで目的を達成するのか 
Chapter 12 共感と未来のマネジメント

要約ダイジェスト

ビジネスの目的・使命・ビジョン

 デザイン思考、ピーター・ドラッカーのマネジメント、そして競争戦略。この3つは、時と分野を隔てて構築されたものだが、そのそれぞれの本質を紡つむぐと糸になり、その糸を織ると普遍的な戦略モデルのキャンバスとなる。

 ドラッカーの「私たちのビジネスは何か(What is out business?)」というフレーズをどこかで聞いたことがあるだろう。ドラッカーは、ビジネスとは、顧客がある製品を購入して充足する、顧客にとってそれまで欠乏していたもので定義すべきだといっている。

 だから、What is our business? という質問はビジネスをその「外側」から、言い換えると、顧客の目線で見た場合にのみ定義できることになる。その一方で、この問いへの答えは、長くて10年もてばよいほうだともドラッカーは言っている。

 なぜなら、現代における産業モデルが、10年の間に起こるイノベーションにより陳腐化してしまうからだ。ドラッカーがこの点に言及したのは1973年だから、技術革新のスピードが速い現在では、10年など到底もたないかもしれない。

 だから、What is our business?と問うのと同時に、What will be our business?(私たちのビジネスは何になるだろう)とも問うべきだとドラッカーは示唆する。そして、この問いの後に答えなければいけないのが、What should be our business?(私たちのビジネスは何になるべきか)の問いだ。

 これらの問いへの答えを見つける糸口は、ドラッカーが、著書『断絶の時代』に記した、「エグゼクティブにとって最も重要な仕事は『すでに起こった未来』を見つけることだ。そして、

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