『仕事の未来 「ジョブ・オートメーション」の罠と「ギグ・エコノミー」の現実』
(小林雅一/著)

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  • 著者プロフィール
  • 目次
 2010年代に入り、第三次AIブームが叫ばれ、特にここ数年自動運転やロボット技術に応用されるAIへの期待が急激に高まった。またAIが人類の知能を凌駕するシンギュラリティ(技術的特異点)や、AIによる雇用破壊などといった衝撃的な意見も多い。では、2020年現在、AIや自動運転、ロボット技術はどのようなフェーズにあるのか。

 本書では、AIやオートメーション技術による単純労働の破壊、各社が開発競争を繰り広げる自動運転や医療分野、またグーグル、アマゾンなど先陣を切るIT企業の働き方など多数の事例を通じ、AI開発の現在地を冷静に総括する。一読すれば、AIの可能性、期待と実態との乖離が理解できるはずだ。

 著者はKDDI総研リサーチフェロー、情報セキュリティ大学院大学客員准教授を務め、IT、ライフサイエンスなどの先端技術動向を専門とする人物。専門知識がなくとも読み進められ、広い視野からAIの全体像を把握できる一冊となっている。テクノロジー観点から未来の社会や働き方、人間の在り方を考えたい方はぜひご一読いただきたい。

著者:小林 雅一(Kobayashi Masakazu)
 1963年、群馬県生まれ。KDDI総合研究所リサーチフェロー、情報セキュリティ大学院大学客員准教授。専門はITやライフ・サイエンスなど先端技術の動向調査。東京大学理学部物理学科卒業、同大学院理学系研究科を修了後、雑誌記者などを経てボストン大学に留学、マスコミ論を専攻。ニューヨークで新聞社勤務、慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所などで教鞭をとった後、現職。著書に『AIの衝撃 人工知能は人類の敵か』『ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃』(講談社現代新書)など多数。
第1章 誰のための技術革新なのか?
第2章 自動運転車はなぜ人に憎まれるのか?
第3章 AIロボットの夢と現実
第4章 医療に応用されるAI
第5章 私たちの生産性や創造性はどう引き出されるのか

要約ダイジェスト

「AIの教師」という新しい職業

 ゆうに13億人を超える人口を抱え、その4割以上が20歳未満といわれる未来の超大国インドでは、若者の就職難が深刻な社会問題となっている。そんな彼らの助け舟となる新しい職業が最近、1つ生まれた。それは「AI(人工知能)の教師」だ。

 例えば、ある女性は、外国の病院から送られてきたビデオ映像を相手に働いている。ビデオには、大腸の内壁が写っており、いずれがんになりそうなポリープを見つけると、マウスで丸く囲み、キーボードから「ポリープ」と入力。これによって彼女はAIにポリープを教えたことになる。

 この女性は朝から晩まで、これと同様の作業を続ける。彼女のおかげでAIはさまざまな形状や色合いのポリープを学び、やがては自力で大腸がん等の画像診断を行う「自動診断用AI」へと成長を遂げる。

 なぜ、こんな骨の折れる単調作業が必要とされるのか?その理由は、現代AIの基本的原理と開発方法にある。今、最も普及しているAI技術は「ディープラーニング」あるいは「ディープ・ニューラルネット」と呼ばれる人工知能で、「機械学習」と呼ばれる手続きによって訓練される必要がある。

 機械学習には「教師有り学習」と「教師無し学習」など何種類かあるが、現在までに開発されてきたディープラーニングの9割以上は「教師有り学習」に従っている。この方式では、人間が大量の画像データ等を教材にして「これは何々」とAIに教え込んでいく。

「教育」といえば聞こえは良いが、実際には多数の労働者が大量の写真やビデオ映像に、延々と丸印を付けていく単調作業だ。現在のディープラーニングは多数の単純労働者や技術者らが手間暇かけて面倒見ることで何とか使い物になる、

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