『スポーツ立国論―日本人だけが知らない「経済、人材、健康」すべてを強くする戦略』
(安田秀一/著)

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 2020年に入り、東京オリンピック・パラリンピックの延期や、各競技大会の中止が相次ぎ、スポーツの新しいあり方が模索されている。だが、2019年ラグビーW杯の盛り上がりからもわかるように、スポーツには大きな可能性がある。今後日本がスポーツの力を最大化するためには、スポーツ産業先進国である欧米の事例から学ぶ必要がある。

 アメリカのスポーツ産業は日本の約 15倍の市場規模を持ち、スポーツは確実に“カネのなる木”と認識されている。欧米ではスポーツが産業としてどのように富を生み出しているのか。本書ではその主要因となる5つの領域と解説。日本の現状と比較して改革案を指摘し、改めて日本のスポーツ産業の伸びしろ、無限の可能性を提示する。

 著者はアンダーアーマーの総代理店である株式会社ドームの代表取締役で、大学スポーツの産業化を目指す「日本版 NCAA」創設に向けた学産官連携協議会の委員も務めた人物。著者いわく、「日本スポーツ界は日本社会の縮図」である。スポーツビジネスに関わる方だけでなく、日本の社会課題に興味関心を持つ方はぜひご一読いただきたい。

著者:安田 秀一(Yasuda Shuichi)
 株式会社ドーム代表取締役CEO、筑波大学客員教授。1969年東京都生まれ。法政大学文学部卒業。法政大学第二高等学校でアメリカンフットボールを始め、キャプテンとしてチームを全国ベスト8に導く。大学全日本選抜チームの主将も務める。
 1992年に三菱商事入社。1996年に株式会社ドームを創業。米国アンダーアーマーの日本総代理店として日本市場の開拓を続ける傍ら、アメリカ、ヨーロッパのスポーツビジネスの調査を開始。日本のスポーツ業界の後進性にショックを受け、以来業界の改革に向けた提言を続ける。その一環として大学スポーツの産業化と選手の環境改善にも着手し、2016年に法政大学アメフット部監督、2017年に総監督就任。スポーツ庁「日本版NCAA創設に向けた学産官連携協議会」元委員。
第1章 世界ではすでに「スポーツ立国」が始まっている
第2章 「スタジアム改革」で負を正に変える
第3章 「スポーツ団体」に民主主義を導入する
第4章 学校スポーツで稼ぎ、「教育」を充実させる
第5章 「女性スポーツ改革」がダイバーシティ社会を切り拓く
第6章 「メディア改革」でスポーツの稼ぐ力を最大化する
第7章 スポーツ立国は「地方」から始動する

要約ダイジェスト

世界ではすでに「スポーツ立国」が始まっている

 欧米では、スポーツこそイケてるビジネス、“金の卵”がゴロゴロ転がっている業界と認識されている。一方で、日本ではスポーツを“カネのなる木”に育てようとする努力の前に、そもそもスポーツが“金の卵”だという事実にすら気づいていない。

 スポーツの本質的な価値は、①地域経済・内需・雇用拡大、②未来を支える人材の育成・開発、③健康増進・社会保障費削減の3つに定義される。日本の課題の1つは、①の「富を生む」という、欧米では当たり前の事実が十分に認識されていないことだ。

 スポーツビジネスは基本的に「ローカルへのロイヤリティを喚起し、経済をつくり、回していく」ビジネスモデルだ。内需をつくり出すので、為替や海外情勢など外的要因に左右されるリスクもない。

 欧米のスポーツ産業は、1984年のロサンゼルスオリンピックを契機としてダイナミックに進化をとげた。その成功にならい、欧米では各競技団体だけでなく、学校の運動部や地域のスポーツクラブまでもが経済的な自立をめざすようになった。

 その結果、「コストセンター」だったスポーツは、現在では巨大な成長産業としての地位を確固たるものにしている。改革の担い手たちが一様に持っていたのは「スポーツを産業化していく」という明確なビジョンだった。

スポーツ立国の原動力は「スタジアム」

 アメリカのスポーツ改革を因数分解してみると次の5つの領域に分類できる。
①スタジアム・アリーナ改革
②リーグ・団体改革
③大学改革
④女性スポーツ改革
⑤メディア改革

 例えば、野球のメジャーリーグ(MLB)の急成長を牽引したのが、ボールパークへと生まれ変わったスタジアムだ。ロサンゼルスにあるドジャー・スタジアムの 2019年シーズンの観客動員数は約 397万人。MLBがつくり出した熱気は、

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