『武器としての「資本論」』
(白井聡/著)

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  • 著者プロフィール
  • 目次
 ドイツの経済学者カール・マルクスによる古典的著作『資本論』。経済危機や格差増大といった資本主義のひずみが指摘される昨今、「今こそ『資本論』を読み直すべき」といった声もよく聞かれる。では『資本論』には何が書かれているのか。本書は大著『資本論』の解説にとどまらず、今を生きる「武器」として使いこなすための画期的入門書だ。

 20世紀を通じて、社会主義や共産主義勢力は資本主義に敗北した。だが著者によれば、それでもなお、マルクスが『資本論』で説いた、資本主義を見通す概念は、現代社会を生き抜くために役立つという。本書ではその観点から、「商品」「包摂」「剰余価値」「本源的蓄積」「階級闘争」という重要テーマから現代社会の諸問題を読み解いてゆく。

 著者は『永続敗戦論 戦後日本の核心』で石橋湛山賞、角川財団学芸賞などを受賞した気鋭の政治学者、京都精華大学人文学部専任講師。日々を生き、働くことを考えるうえでの、新たな視座、教養として、資本主義社会の最前線で働くビジネスパーソンにこそぜひご一読いただきたい。

著者:白井 聡(Shirai Satoshi)
 思想史家、政治学者、京都精華大学教員。1977年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。一橋大学大学院社会学研究科総合社会科学専攻博士後期課程単位修得退学。博士(社会学)。3.11を基点に日本現代史を論じた『永続敗戦論 戦後日本の核心』(太田出版、2013年)により、第35回石橋湛山賞、第12回角川財団学芸賞などを受賞。その他の著書に『未完のレーニン』(講談社、2007年)、『「物質」の蜂起をめざして レーニン、〈力〉の思想(増補新版)』(作品社、2015年)、『属国民主主義論』(内田樹氏との共著、東洋経済新報社、2016年)、『国体論 菊と星条旗』(集英社新書、2018年)などがある。
はじめに 生き延びるための「武器」としての『資本論』
第1講 本書はどのような「資本論」入門なのか
第2講 資本主義社会とは? ――万物の「商品化」
第3講 後腐れのない共同体外の原理「無縁」 ――商品の起源
第4講 新自由主義が変えた人間の「魂・感性・センス」 ――「包摂」とは何か 
第5講 失われた「後ろめたさ」「誇り」「階級意識」――魂の「包摂」 
第6講「人生がつまらない」のはなぜか ――商品化の果ての「消費者」化 
第7講 すべては資本の増殖のために ――「剰余価値」
第8講 イノベーションはなぜ人を幸せにしないのか ―― 二種類の「剰余価値」 
第9講 現代資本主義はどう変化してきたのか ――ポスト・フォーディズムという悪夢
第10講 資本主義はどのようにして始まったのか ――「本源的蓄積」 
第11講 引きはがされる私たち ――歴史上の「本源的蓄積」 
第12講 「みんなで豊かに」はなれない時代 ――階級闘争の理論と現実
第13講 はじまったものは必ず終わる ――マルクスの階級闘争の理論 
第14講 「こんなものが食えるか!」と言えますか? ――階級闘争のアリーナ

要約ダイジェスト

『資本論』入門

『資本論』のすごいところは、一方ではグローバルな資本主義の発展傾向というような最大限にスケールの大きい話に関わっていながら、他方で、自分の上司がなぜイヤな態度をとるのか、というようなミクロなことにも関わっているところだ。そして、実はそれらがすべてつながっているのだということも見せてくれる。

 『資本論』は「商品」の分析の話から始まる。試しに『資本論』(向坂逸郎訳、岩波文庫版)の本文冒頭を抜き出してみよう。「資本主義的生産様式の支配的である社会の富は、『巨大なる商品集積』として現われ、個々の商品はこの富の成素形態として現われる。したがって、われわれの研究は商品の分析をもって始まる。」

 前提となる知識が何もない状態からこの一文を読むと、「ここで書かれているのは実に当たり前のことで、何が面白いのかさっぱりわからない」ということになるが、実はこの冒頭からしてすでにマルクスは、きわめて含蓄のあることを言っている。

 マルクスは資本制社会を、「商品による商品の生産が行なわれる社会(=価値の生産が目的となる社会)」という社会だと見ている。私たちは日々、商品を買い、そして消費している。そこでつい忘れがちなのは、私たちは消費者であると同時に労働者でもあり、そこにおいて「商品による商品の生産」を行なっている点だ。

 資本主義社会における労働とはすなわち、商品を生産することだ。したがって私たちは労働の局面においては、商品を生産しているが、この場合の労働力とは、「労働力という商品」なのだ。

 物が生まれて使われ、

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