『エフォートレスな行動で、能力を最大化する「無為」の技法 Not Doing』
(ダイアナ・レナ―ほか/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 現代では、多くのビジネスパーソンがタスクに追われる毎日を過ごしている。著者らによれば「忙しい」という感覚には依存性があり、時間が空くと不安を感じたり、何をすべきかわからなくなるのは危険な兆候だ。そこで必要なのが「しない(Not Doing)」という選択肢、そして「ない」を受容する力(ネガティブ・ケイパビリティ)である。

 本書では、衝動やプレッシャーの中でやみくもに行動するのではなく、「一歩下がる」「待つ」といった「しない」技術にフォーカスする。本当の意味で仕事や人生の生産性、創造性を高めるには、行動して何かを得るポジティブ・ケイパビリティとともに、あえて「しない」ネガティブ・ケイパビリティの両方が必要なのだ。

 著者はともに経営コンサルタントで、本書では作家、学者、ビジネスパーソン、音楽家などあらゆる事例から「無為」の可能性に迫っている。随所にグラフィックや名言が挿し込まれ、感性的なアプローチも楽しめる一冊だ。創造性を高めたい方、仕事や人生を一度見つめなおしたい方、自分の新たな可能性を切り開きたい方はぜひご一読いただきたい。

著者:ダイアナ・レナー(Diana Renner)
 企業コンサルタント、教師、作家。Uncharted Leadership Institute 共同創設者、Not Knowingラボ設立者。個人や組織が不確定な時代を進み、複雑な課題に立ち向かっていくためのサポートをしている。ハーバード大学、テキサス大学、オーストラリア各地の大学で教壇に立つ。夫と、子ども2人とともに、オーストラリアのメルボルン在住。

スティーブン・デスーザ(Steven D’Souza)
 企業コンサルタント、教育者、エグゼクティブコーチ。ディーパーラーニング社取締役、IEビジネススクール非常勤講師、サイード・ビジネススクールとオックスフォード大学のアソシエイト・フェロー、INSEADリーダーシップコンサルタントおよびコーチ。世界的経営思想家を選ぶ Thinkers 50 Radarや、『HR』誌が全世界を対象に選ぶ「最も影響力のある人物」トップ 30にも選ばれている。

翻訳:上原 裕美子(Uehara Yumiko)
 1976年東京生まれ、翻訳者。主な訳書に『「無知」の技法 Not Knowing』(日本実業出版社)、『僕らはそれに抵抗できない』(ダイヤモンド社)、『みんなにお金を配ったら』(みすず書房)、『EXTREME TEAMS(エクストリーム・チームズ)』(すばる舎)などがある。

PART 1「しない(Not Doing)」という選択
PART 2 やみくもな行動の機能障害
PART 3 「ない」を受容する力―ネガティブ・ケイパビリティ

要約ダイジェスト

「しなければ」という執着

 ビジネスシーンの多忙さは、往々にして代替行為の表れだ。向き合うべき厳しい物事に取り組む代わりに、とりあえず目の前のタスクに逃げている。ある社会科学実験では、被験者たちは腰を据えて思索にふける、すなわち「何もしない」状態に置かれることを好まず、それよりも微弱な電気ショックを受けるほうを自発的に選んでいた。

 その根底には不安がある。市場の不安定さ、企業の脆弱さ、不安に駆られたリーダーの無理難題を目の当たりにしながら、とりあえず及第点を取り続けることに腐心している。遠い昔に海に出た冒険家のように、私たちは不安定な潮に揺られているのだ。

 波が私たちを翻弄し疲弊させる時、誰でも岸壁にしがみつきたくなる。けれど、私たちがその流れを手なづけたり避けたりすることはできない。必要なのはその自然のエネルギーに乗ってみることだ。学び、そして成長していくために、そのエネルギーを受け入れ、リードに従ってみる。本書ではこれを「しない(Not Doing)」と呼ぶ。

「しない」とは、不安や無気力、決断力のなさから生じる行動の欠如ではない。人任せとも違う。物事をやりこなす方法を狭い視野で見ないための防御手段だ。押すことでもなければ引くことでもない。逆らわず、ゆだねて、ともに歩いてみる。そうすることで力みが取れ、自分が関わっている状況に対して意識が開く。

 何かをしていたいという衝動は、脳の報酬回路を刺激して興奮状態を味わわせ、とにかく何かをし続けずにはいられなくなり、内省する力を失っていく。しかし、私たちは自分の限界に向き合わなくてはならないのだ。

 しないでいるためには、自分は他者の力が作用する世界にいることを理解する必要がある。人は取り巻く環境と関わり、乗っかり、後押しを受けて暮らしている。必要なのは身構えず、無理に押し通すそうとせず、エフォートレスに受け入れていくことだ。

「ない」を受容する力

「『ある』を追求する力(ポジティブ・ケイパビリティ)」は、活動や努力や達成を通じて知を表明する知識や技術の競争の力を指す。「『ない』を受容する力(ネガティブ・ケイパビリティ)」のほうは、

続きを読むには会員登録が必要です。

© 2020 ZENBOOKS,Inc. All Rights Reserved.
要約記事は出版社または著作者から適法に許諾を取得し、作成・掲載しています。本記事の知的所有権は株式会社ゼンブックスに帰属し、本記事を無断で複製、配布、譲渡することは固く禁じます

特集