- 本書の概要
- 著者プロフィール
著者によれば、こうした右脳的な感覚によるアウトプットは「センスの有無」ではなく、方法論として落とし込める。それが人間行動に寄り添った「感性思考」だ。本書ではアメリカのデザインスクールで学ぶ一年間のプログラムを一冊にまとめ、革新的なアイデアを生み出すためのマインドセットやフレームワークを解説する。
著者はデザインコンサルティングファーム Takram ディレクター&ビジネスデザイナー。著者がイリノイ工科大学デザイン大学院で学んだ手法はもちろん、事例や実際のビジネスでの活用例なども豊富なため、左脳的思考の限界を感じている方、実践的な発想法やワークを身につけたい方はぜひご一読いただきたい。
Takramディレクター&ビジネスデザイナー。早稲田大学政治経済学部卒業。イリノイ工科大学デザイン大学院(Institute of Design)修士課程(Master of Design Method)修了。グロービス経営大学院客員講師(デザイン経営)。
総合商社でベンチャー企業との新規事業立ち上げ等を担当後、経済産業省でBig DataやIoT等に関するイノベーション政策の立案を担当。2014年、デザインコンサルティングファームTakram に参画。クリエイティブとビジネスを越境するビジネスデザイナーとして、家電、自動車、運輸、通信、食品、医療、素材など幅広い業界で企業のイノベーション支援を手がける。デザインリサーチから、プロダクト・事業コンセプト立案、エクスペリエンス設計、ビジネスモデル設計、ローンチ・グロース戦略立案等を得意とする。複数の事業立ち上げ経験を持ち、ファイナンスにも精通。
講演やワークショップ、Webメディアへの執筆なども多数。ダイヤモンド社と共同で、ビジネスリサーチとデザインリサーチを統合した”Creative Knowing”を研修プログラムとして実施。大手家電メーカーやシンクタンクの戦略アドバイザー、ベンチャーキャピタルMiraiseの投資家メンターも務める。著書に『D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略』(NewsPicksパブリッシング)がある。
第1講義 「ビジネス×デザイン」マインドセット——Mindset
第2講義 強烈なアウトプットを生む思考法——Output
第3講義 創造性を高めるインプットの技法——Input
第4講義 相手の右脳と左脳を動かす伝え方——Presentation
第5講義 “売れる”の確度を上げる——Marketing
最終講義 「ビジネス×デザイン」人材こそ最強の生存戦略
巻末付録1~3
要約ダイジェスト
強烈なアウトプットを生む「感性思考」
近年、日本でもビジネスにおけるデザインの重要性が言われるようになったが、この文脈でいうデザインとは、一般的に認識されている「見た目」や「スタイリング」を意味するものではない。
斬新かつ人の心を惹く発想をするデザイナーたちは、まったくの0から新しいアイデアを創出しているわけではなく、既存のものを組み替え、新しい組み合わせをつくることによって、強烈なアウトプットを生み出している。
そのような創造的なアウトプットが生まれる背景には一定の法則があり、方法論化できる。それがデザインスクールで講義される「組み替えという意味でのデザイン」であり、感性を大切にする「感性思考」だ。
ではなぜ、デザインスクールで学ぶ「感性思考」を身に付ければ突き抜けたアウトプットが生み出せるのか。例えば、アメリカにおける子供向けの歯ブラシは、長らく小さくて細いのが一般的だったが、あるデザインコンサルティングファームが別のアプローチを取った。子供が歯磨きをしている様子を実際に観察したのだ。
この観察により、論理やデータからでは気づくことのできない発見があった。子供はそもそも大人に比べて手が器用ではなく、子供向けに小さく作られた歯ブラシをうまく扱うことができなかったのである。
そこでそのデザインコンサルティングファームは「太い」歯ブラシを子供用として考案し、発売後わずか 18カ月でシェアナンバー1を取った。このような「一般的にこう思われていたけど、実はこうだった」というインサイト(発見・気づき)はロジックからは出てこず、人間の感性にアプローチするからこそ出てくるのだ。
デザインスクールで学んだ4つのマインドセット
デザインスクール時代に求められた必須スキルは、以下の4つのマインドセットの原則に集約できる。
①人間中心的
ビジネスロジックや業界の慣習などに沿って考えるのではなく、